人文・社会科学の未来のために。法人設立初年を終えて【一般社団法人デサイロ:2023年活動報告】
2023年も残すところ数日となりました。国立大学法人法の改正案をめぐる議論など、人文・社会科学をめぐる現状にはますます不穏な兆しもありますが、そんな中でもデサイロはこの状況に一石を投じようと活動を重ねてきました。
関連記事:「自前の思想」が立ち現れていく学際的な場を目指して──2023年、デサイロの展望
今回は年内最後のニュースレターとして、デサイロの2023年を、トピックごとに振り返っていきます。
※お知らせ※
人文・社会科学系の研究者がより持続的に活動できるエコシステムを生み出すために、その課題と機会領域を探る「リサーチレポート」の制作を進めています。それに伴ってクラウドファンディングを実施しておりますので、ぜひご支援をよろしくお願いいたします。
▼クラウドファンディングのページはこちら
https://camp-fire.jp/projects/view/724915
■一般社団法人として登記完了。「財団」「出版」「コミュニティ」の3機能の循環による活動を本格化
2023年2月、「デサイロ」プロジェクト(立ち上げは2022年10月)は、一般社団法人として登記を完了。財団機能を通じて人文・社会科学領域の研究者の方々に資金を提供し、研究を通じて立ち現れた「自前の思想」を出版機能を通じて社会に届け、その過程でデサイロの周辺に集まってくれた人たちとのコミュニティを育て、そのコミュニティに属する研究者を財団機能を用いて支援する……財団、出版、コミュニティの3つを機能を循環させる活動を一層本格化させました。
■『Forbes JAPAN』2023年5月号に共同企画「人文・社会科学と次なる社会像」が掲載
2023年3月には、3月25日発売の『Forbes JAPAN』2023年5月号にて、デサイロがForbes Japanと共同で企画・編集し、ナビゲーターを担当した特集「人文社会科学と次なる社会像」が掲載。「いま私たちはどんな時代を生きているのか」というテーマをもとに、人文・社会科学を中心としたアカデミアの現在地とこれから、社会と接続するアプローチを探りました。
詳細:雑誌『Forbes JAPAN』2023年5月号に、デサイロが協力した特集「人文・社会科学と次なる社会像」が掲載
■慶應義塾大学との共催イベントを開催(3月)
同じく2023年3月には、慶應義塾大学大学院社会学研究科との共催により、研究者のキャリアの可能性を考えるイベントを開催。研究と社会のオルタナティブな接点をつくろうとしている登壇者の皆さんと一緒に、人文系研究者のキャリアのこれからについて考えました。
レポート記事:人文・社会科学の研究者に「大学の常勤職員」以外の選択肢を。アカデミア外にも広がるキャリアの可能性を考える:磯野真穂 × 藤嶋陽子 × 岡原正幸
■人文・社会科学分野の研究者向け助成プログラム「デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム」の募集を開始
2023年7月には、人文・社会科学分野の研究者の活動をサポートする「デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム」の応募受付を開始。単年での研究資金の提供にとどまらず、人文・社会科学分野の研究と社会の新しい接点を模索し、研究活動を総合的に支援するこのプログラムは大きな反響をいただき、約120名の研究者のみなさまから応募が集まりました。
審査員による座談会記事:いまこそ「時代」と「社会」に応答する人文・社会科学の研究を──デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム審査員の目線
■「人文・社会科学系研究者のキャリアデザインを考えるバー」を学問バーKisi(新宿)にて開催
2023年8月には、人文・社会科学領域の研究者の「キャリアデザイン」「資金調達」「業績評価・指標化」などについて考えるイベントを開催。2023年1月に新宿・歌舞伎町にオープンした、お酒を片手にアカデミックな会話を楽しめるバー「学問バーKisi」にて、若手研究者や大学院生などの来場者の方々と、約4時間にわたるディスカッションを行いました。
詳細:【8/14開催】「人文・社会科学系研究者のキャリアデザインを考えるバー」を学問バーKisi(新宿)にて開催
■第一期研究プログラムの中間報告とミートアップを兼ねた「De-Silo Meetup」を開催
同じく2023年8月には、の中間報告と、デサイロの今後の活動についてご紹介するMeetupイベントを開催。4人の研究者による第一期プログラムを振り返りながら、来場いただいた研究者、あるいは人文・社会科学への関心を寄せるビジネスパーソンやクリエイターの方々との対話を行いました。
レポート記事:人文・社会科学の知を頼りに「いま私たちはどんな時代を生きているのか」を考える。デサイロの軌跡と展望【De-Silo Meetupレポート】
■“文系学問”を取り巻く課題解決に向けた支援者を募集するクラウドファンディングを開始
2023年12月には、「研究“知”とともに、次なる社会を探索する」というミッションの達成に向けて、文系学問を取り巻く課題解決に向けた支援者を募集。人文・社会科学分野における課題と機会領域を探る「リサーチレポート」の制作に向けて、クラウドファンディングを開始しました。
詳細はこちらから。現在も実施期間中なので、もしよろしければご支援いただけますと幸いです。
“文系学問"とともに「次なる社会」をつくる──人文・社会科学を取り巻く課題解決に向けた支援者を募集!(CAMPFIREページへ移動)
■人文・社会科学分野の研究者向け伴走支援プログラム「デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム」第1期スタート
2023年12月には、デサイロが公募した、人文・社会科学分野の研究者を伴走支援する「デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム」第1期の採択者も決定。計6名の採択者の研究活動を総合的に支援し、人文・社会科学分野の研究と社会の多様な接点を構築していきます。
詳細:一般社団法人デサイロ、人文・社会科学分野の研究者向け伴走支援プログラム「デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム」第1期の採択者を発表(PR TIMES)
■研究者とアーティストとの協働による知のアウトリーチ
デサイロの立ち上げ時より進めている、研究者とアーティストとの協働による知のアウトリーチに関しても、着々と準備を重ねています。人文・社会科学領域の4名の研究者の方(磯野真穂さん、柳澤田実さん、山田陽子さん、和田夏実さん)とともに、それぞれの研究テーマに基づいて「いま私たちはどんな時代を生きているのか」を探求し、そのなかで出てきた知をアーティストの方とのコラボレーションによって、社会に届けていくこのプロジェクト。2023年8月のMeetupイベントでも途中経過をご報告しましたが、2024年4月にはその成果をお披露目するカンファレンスも開催予定で、2024年頭には開催概要を告知いたしますので、ご期待ください。
■ニュースレターでの知の発信
年間を通して、ニュースレタープラットフォームSubstackを活用した情報発信にも継続的に取り組んできました。以下はその一例です。
###気鋭の研究者による、「いま私たちはどんな時代を生きているのか」を読み解く寄稿/インタビュー
・道徳判断のその先へ。「ケアの倫理」がひらく“問い直しの倫理学”|倫理学研究者・冨岡薫
・「心」はひとつの「発明」である。科学と哲学、文学から「心」と「意識」の現在をひもとく|下西風澄
・「仲人」からマッチングアプリへ。マッチメーカーの近現代史から、パートナーシップのこれからを考える|阪井裕一郎
・「寄付募集の科学」への招待。“健全な”市場の実現にむけて──寄付研究者・渡邉文隆
###人文・社会科学、あるいはそれらを取り巻くエコシステムの現在地や未来を探索する寄稿/インタビュー
・人文・社会科学系研究の「産官学連携」はいかにして可能か?──研究者のキャリアデザインを"統合型モデル"から考える
・文系学問と「社会」の新しい接点──生産的相互作用やELSIから考える、研究評価の現在地|標葉隆馬
・テクストと現場を往還し、呼びかけに「応答」する人文学へ。社会と向き合う「自前の思想」の可能性──人類学者・飯嶋秀治、清水展
・アカデミアにおける資金状況の改善に向け、「DeSci(分散型サイエンス)」が乗り越えるべき課題──経済的持続性、コミュニティづくり、システム基盤の整備|濱田太陽
###研究テーマに注目し、その内容を紹介していくシリーズ「Research Curation」
・“普遍人類学”に向けて──数理シミュレーションで「親族構造」と「家族形態」を解明する|板尾健司
・ヒトはなぜ「手に入らないものを追い続ける」のか?──不合理な行動を計算モデルから解き明かす|菅原通代
・日本企業の「外国人雇用」はなぜうまくいかない? 雇用関係のミスマッチをもたらす“同床異夢”の研究|園田薫
・社会学理論×情報技術で、「ゲーム実況」の熱狂メカニズムを解き明かす。ライブ配信研究の新展開|小田中悠
・クリエイティブ労働による職業生活を社会学的にみる──バンドマンの生活史から|新山大河
###毎月、その月に刊行される人文・社会科学領域の新刊書の中から、デサイロとして注目したい10冊をピックアップするシリーズ
・【2023年3月刊】『人間の条件』新訳、アナーキズム、権威主義、アイデンティティ……デサイロが注目したい人文・社会科学の新刊10冊
・【2023年6月刊】「選択的シングル」、死と後世、『科学革命の構造』新版……デサイロが注目したい人文・社会科学の新刊10冊
・【2023年9月刊】デヴィッド・グレーバー遺作、〈悪の凡庸さ〉問い直し、「差別する人の研究」……デサイロが注目したい人文・社会科学の新刊10冊
■イベント・メディア出演
デサイロの活動に注目いただき、アカデミアやビジネス関連のイベント登壇やメディア出演などもお声がけいただきました。
ユーザー登録型WEBメディア『esse-sense(エッセンス)』を運営するエッセンスが主催する「エッセンスフォーラム2023 -encounter of the impact-」にて、デサイロ代表理事を務める岡田弘太郎が、「研究者のポテンシャルを解き放つ新たな道」と題したセッションに登壇しました。
世界を変える30歳未満の日本人を表彰する「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」の2023年版に、代表理事の岡田弘太郎が選出されました。協働いたただいている研究者やアーティストのみなさん、運営メンバーとつくってきたデサイロの活動が評価され、選出となりました。
2024年のさらなる躍進に向けて
その他にも、人文・社会科学の知の活用を模索する企業の支援、大学機関との意見交換など、人文・社会科学を取り巻くエコシステムを豊かにするためのさまざまな試行錯誤を展開してきました。
大きなインパクトをもたらすまでには至っていませんが、ミッション実現に向けた土台づくりや仲間集めが、少しずつ、でも着実に進んでいる手応えのある一年でした。
2024年も、現在クラウドファンディングを実施中のリサーチレポートの制作や、研究者とアーティストとの協働の成果を発表するイベントの開催や書籍刊行、さらにはアカデミックインキュベーター・プログラムで採択させていただいた研究者のみなさんとの取り組み強化など、より一層活動を展開していきます。
それにあたって、資金面はもちろん、さらなる協働者を巻き込むべく採用も行っています。
【採用情報】「研究“知”とともに次なる社会を探索する」一般社団法人デサイロにて、ファンドレイジング/研究者伴走支援のプロジェクトマネージャーを募集!
こちらの募集に限らず、デサイロの理念や活動に共感いただき、協働の可能性を感じてくださった方は、【contact@de-silo.xyz 】まで、ぜひお気軽にご連絡ください。
それでは来年も、一層のご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。良いお年をお迎えください。
※お知らせ※
人文・社会科学系の研究者がより持続的に活動できるエコシステムを生み出すために、その課題と機会領域を探る「リサーチレポート」の制作を進めています。それに伴ってクラウドファンディングを実施しておりますので、ぜひご支援をよろしくお願いいたします。
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