「アート」や「ビジネス」との交差により、人文・社会科学の知を"社会化"する【一般社団法人デサイロ:2024年活動報告】
2024年も残すところ数日。デサイロは今年、新たに掲げた「研究“知”とともに、次なる社会を構想する」というミッションの実現に向け、活動を続けてきました。
「研究」と「アート」が交差する2daysイベント開催、リサーチレポートの公開、レクチャーシリーズの始動、コンテンツレーベルの立ち上げ、さまざまな企業とのコラボレーション……多面的な試みを通して、年初に見据えた展望についての兆しと課題を探る一年間となりました。
関連記事:研究“知”とともに、次なる社会を探索する──2024年、デサイロの展望
今回は年内最後のニュースレターとして、デサイロの2024年を、トピックごとに振り返っていきます。
■「DE-SILO EXPERIMENT 2024」の開催
4月13日・14日に、「研究」と「アート」が交差する2daysイベント「DE-SILO EXPERIMENT 2024」を開催しました。
人文・社会科学分野の4人の研究者が「いま私たちはどんな時代を生きているのか」を考えるための研究テーマを設定し、そのテーマに基づきコラボレーターとなる計11組のアーティストが作品を制作。展示、パフォーマンス、トークセッション、ワークショップの4つのコンテンツを通じて研究とアートの融合が展開され、2日間で計400名の方にご来場いただきました。
イベントの様子は、下記のイベントレポートに詳細に記録されていますので、ぜひご確認ください。
関連記事:
小説と歌、遊びと儀式。「表現」から探求する、人文・社会科学の知の可能性——「DE-SILO EXPERIMENT 2024」Day1レポート
ことばと身体、音楽を往還しながら。「研究知」と「表現」が出会ったとき——「DE-SILO EXPERIMENT 2024」DAY2レポート
■「DE-SILO RESEARCH REPORT」の公開
7月には、人文・社会科学領域を取り巻く課題とその構造的背景を明らかにした「DE-SILO RESEARCH REPORT」をPDFにて全編公開しました。12月現在で、550件を超えるダウンロードをいただいています。
本レポートは、人文・社会科学領域の(以下、人社系)学問のそもそもの成り立ちや意義を問い直し、現在の人社系研究者を取り巻く課題とその構造的背景を明らかにした上で、人社系学問がポテンシャルを発揮できる未来に向けた30の論点を提示したものです。
制作にあたり、デサイロ初のクラウドファンディングも実施。2023年末から2024年初頭にかけて105名の方から、210万円を超えるご支援をいただきました。また「30の論点」をさらに掘り下げていくイベントを9月に東京、11月に京都で開催し、それぞれ盛況となりました。他にも当レポートをもとにした、科学技術社会論学会・第23回年次研究大会での発表など、さまざまな場でのディスカッションを重ねました。
ダウンロードはこちら:
▶▶▶「DE-SILO RESEARCH REPORT」全文PDF
▶▶▶「DE-SILO RESEARCH REPORT」Short Ver.
■レクチャーシリーズ「Academic Insights」の始動
8月からは、新たにレクチャーシリーズ「Academic Insights」をスタートしました。このシリーズは、人文・社会科学の気鋭の研究者を招き、いまの時代や社会の課題を「概念」「アイデア」から探究する試みです。
これまで8回にわたる開催で延べ607名の方からお申し込みをいただきました。参加者の皆様にとってより深く連続的な学びを届けるべく、来年にはシリーズ全体のリニューアルも予定しています。
過去の回:
「企業者的想像力」からアントレプレナーシップを再考する──経営学者 山縣正幸【Academic Insights #3】
暗黙のルールはなぜ変わらない?「多元的無知」から考える──社会心理学研究者 岩谷舟真【Academic Insights #5】
ニューロテックは自由意志を脅かすか?「認知過程の自由」から考える──神経法学研究者 小久保智淳【Academic Insights #6】
技術開発に潜むバイアスを排除するために。「ジェンダード・イノベーション」から考える──科学技術論研究者 渡部麻衣子【Academic Insights #7】
「治療的思想」から自己啓発の “セラピー”性を読み解く──応用哲学研究者 藤井翔太【Academic Insights #8】
■コンテンツレーベル「De-Silo Label」の新設
9月には、コンテンツレーベル「De-Silo Label」を立ち上げました。その第一弾書籍として、論集『生の実感とリアリティをめぐる四つの探求──「人文・社会科学」と「アート」の交差から立ち現れる景色』を刊行。磯野真穂、柳澤田実、山田陽子、和田夏実による論考、山内マリコ、李琴峰、松田青子による書き下ろし短編小説が収録されています。
本書は「DE-SILO EXPERIMENT 2024」での探究や1年半にわたる研究プロジェクトの成果を結晶化した一冊です。書店などを通じた一般販売は行わず、デサイロへの寄付に対するお礼という形で、全国の方へお届けしています(限定1,000部)
詳しくはこちら:https://de-silo.xyz/label-books-001
■「Goldwin Field Research Lab.」での研究者 × アーティストによるプロジェクト展開
2024年より、企業と連携したさまざまなプロジェクトも始まってます。
8月には、スポーツ・アウトドアブランドを展開する株式会社ゴールドウインが運営する『Goldwin Field Research Lab.』とのコラボレーションプロジェクトが始動。「故郷とアイデンティティ」をテーマとして、哲学・宗教思想研究者の柳澤田実さん、アーティストの谷口暁彦さんをナビゲーターに、人々にとって「故郷」の概念やアイデンティティの変容を探っています。その様子を『Goldwin Field Research Lab.』にて連載し、来年前半には最終的に谷口さんによる作品と、柳澤さんによる論考という形式にまとめていきます。
連載記事:
■レクチャーシリーズ「FoodScopes」募集開始
12月には株式会社UnlocXと共同で、飲食業界を中心としたビジネスパーソン・事業家向けレクチャーシリーズ「FoodScopes: 人文・社会科学の視点から、新たな『食の価値循環』を探求するプログラム」の申込受付をスタート。
食分野のビジネスパーソン・事業家を対象に、人文・社会科学から「食の価値循環」を問い直すプログラム。気鋭の研究者13名と多角的な視点で「食」の本質を掘り下げます。「フードテック」という表層的トレンドを超えて、人類社会における食の深層的な意味を再考する試みです。
すでに食産業における事業創造や研究開発にかかわる方々を中心に、多数応募をいただいております。1月の開講に向けて参加者を募集中ですので、ご関心のある方は下記リンクより詳細をチェックいただければ幸いです。
詳細はこちら:
■「デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム」第1期
2023年12月に採択者を発表した、人文・社会科学分野の研究者を伴走支援する「デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム」第1期。2024年は研究テーマの背景を伝えるインタビュー記事の公開や、「FILTR」と連携したオンライン講座の開講などを行いました。
関連記事:
「喧嘩まみれなのに平和」なトゥワの暮らしから見えるもの。情動と身体のあり方を問い直す「平等主義的暴力」──マルチモーダル人類学研究者・ふくだぺろ
7/11〜/全3回。「人はなぜ音楽するのか」音楽人類学入門 by 文化人類学者・西浦まどか【FILTR x De-Silo】
“元狩猟採集民”の音楽人類学──生活と不可分な音楽をめぐって【マルチモーダル人類学者・ふくだぺろ×文化人類学者・西浦まどか】
■「Forbes JAPAN」との共同連載がスタート
ビジネス誌「Forbes JAPAN」とデサイロの共同連載がスタートし、今年は3本の記事が掲載されました。
記事は「Forbes JAPAN」のWebでも公開されております。下記よりぜひご覧ください。
■イベント登壇
「人文・社会科学」「アカデミア」等をテーマとした、さまざまなイベントへの登壇の機会をいただきました。
また、一部イベントでは一般社団法人デサイロとして、後援やコミュニティーパートナーも務めました。来年以降も、デサイロが目指す「人文・社会科学分野の研究における知の創造と流通」と重なりを持つ団体やイベントと積極的に連携できるよう、引き続き活動に注力してまいります。
登壇イベント一覧
レポート記事:
2025年の展望
2024年は、デサイロ立ち上げ時から取り組んできたプロジェクトが一通りかたちになった一年でした。2025年の展望については、また年始のニュースレターでお知らせたします。
それでは来年も、一層のご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。良いお年をお迎えください
【De-Siloではサポーター(寄付者)を募集中です】
非営利型一般社団法人として運営しているデサイロでは、サポーター(寄付者)を募集しております。私たちの活動に共鳴し、デサイロおよび研究から生まれる知の可能性をともに切り拓き、豊かにしていく営みを共にしていただける方は、ぜひ申し込みをご検討ください。
現在、1万円を寄付いただくごとに、出版レーベル「De-Silo Label BOOKS」の第一弾書籍である 論集『生の実感とリアリティをめぐる四つの探求──「人文・社会科学」と「アート」の交差から立ち現れる景色』(限定1000部) を1冊プレゼント中です。デサイロ第1期の研究プロジェクトに参加した人文・社会科学分野の4名の研究者(磯野真穂、柳澤田実、山田陽子、和田夏実)による論考に加え、3名の小説家(山内マリコ、李琴峰、松田青子)による書き下ろし短篇が収録されています。サポーターの詳細や申し込み方法は、以下のリンクよりご確認ください。