【10/20開催】暗黙のルールはなぜ変わらない?「多元的無知」から考える──社会心理学研究者 岩谷舟真【Academic Insights #5】
人文・社会科学領域における「概念」や「アイデア」をよすがに、気鋭の研究者とともに、いま私たちが生きている時代あるいは社会がこれから直面する課題を読み解いていくレクチャーシリーズ「Academic Insights」。気鋭の人文・社会科学領域の研究者に、いまの時代を読み解くカギとなる「概念」や「アイデア」を提示していただき、来たるべき社会の探索と構想のヒントを探究します。
第5回に登壇するのは、暗黙のルールや慣習が維持されるメカニズムについて研究する、社会心理学研究者の岩谷舟真さんです。
「付き合い残業」「有給消化を使いづらい」「同僚への気遣いで出社」……。社会を生きる多くの人々にとって何かしら身に覚えがあるこうした状況はなぜ起きるのでしょうか?
それを読み解く補助線となるのが、岩谷さんが研究する「多元的無知」という概念です。本ニュースレターで配信予定の寄稿記事において、岩谷さんはこの概念を以下のように説明してくれました。
多元的無知とは、集団や社会の1人1人が互いに互いの心を読み間違えることによって、よく分からない暗黙のルールが維持されている状態を意味する概念です。
ここ最近の例では、コロナ禍のマスク着用が挙げられるでしょうか。日本の夏は気温が非常に高く、また、屋外では感染リスクが比較的低いとされています。ですので、屋外ではマスクを着用しなくても良いのではと思っている方も少なからずいることと思います。
しかし、そのような方の中にも、屋外でも常にマスクを着用することが日本社会の暗黙のルールだからと、やむを得ず暑い中マスクを着用した経験のある方がいるかもしれません。
また、男性の育児休業取得のしにくさも多元的無知の観点から説明されています。Miyajima & Yamaguchi(2017)の研究では、日本の会社の1人1人の男性は「男性は育児休業を取得せずに働くものだ」という風土に対して否定的に思っているけれども、「男性は育休を取得せず働くという職場の風土に対して他の人は賛成しているだろう」と間違って予想して、渋々育休を取得せず労働するという状況が調査によって示されています。
これらの例では、集団や社会の1人1人が互いに互いの心を読み間違えた結果、よく分からないルール(例:炎天下でのマスク着用を促す暗黙のルール、男性の育休取得を抑制する会社の風土)が維持されている状態を示しています。
どうすれば誰も望まない暗黙のルールや慣習をやめられるのか? 「多元的無知」というレンズから見えてくる現代の社会像とは? ──Academic Insights初の試みとして、東京・渋谷でオフライン開催する今回のイベントでは、岩谷さんから直接「多元的無知」についてレクチャーいただきます。
また、イベント内では「みんなの周りにある『多元的無知』」ワークショップも実施予定です。何かと“モヤモヤ”しがちな現代社会の諸相を読み解き、これから議論を深めていくためのレンズを共有していくような時間にできればと思っておりますので、ぜひふるってご参加ください。
■イベント日時
2024年10月20日(日) 16:00〜18:00@東京・渋谷
※今回は対面のオフラインイベントとして開催します。オンライン配信等は予定しておりませんので、ぜひ現地までお越しくださいませ。
■開催場所
SHIBUYA QWS(渋谷スクランブルスクエア 東棟15階)
https://maps.app.goo.gl/hSRbGXTAJRQKN9eG8
■イベント参加申し込み(無料)
以下のGoogleフォームより、必要事項を記入のうえ、参加申込をお願いいたします。
▶▶▶10/20 Academic Insightsの参加申込はこちら
※イベント参加にはニュースレターへの登録が必須となります※
■イベント内容
・15:45-16:00:開場・受付開始
・16:00-16:05:イントロダクション
・16:05-16:50:岩谷さんによる「多元的無知」概念のレクチャー
・16:50-17:00:参加者の皆様からの質疑応答
・17:00-17:40:ワークショップ(みんなの周りにある「多元的無知」の洗い出し、岩谷さんからのフィードバック)
・17:40-17:50:クロージング
■登壇者プロフィール
岩谷 舟真(いわたに・しゅうま)
岩谷 舟真(いわたに・しゅうま)
関西学院大学社会学部専任講師。博士(社会心理学)。興味関心は集団規範の維持メカニズム、社会環境と行動意思決定の関連など。日本社会心理学会奨励論文賞(2016年、2018年),日本グループ・ダイナミックス学会優秀論文賞(2018 年)を受賞。日本心理学会、日本社会心理学会、日本グループ・ダイナミックス学会各会員。共著書に『多元的無知: 不人気な規範の維持メカニズム』(東京大学出版会、2023年)がある。
■モデレータープロフィール
小池真幸(こいけ・まさき)
De-Silo 編集統括。編集者。人文・デザイン・暮らしといった領域を中心に、研究者やクリエイターと協働しながら、ウェブメディアから紙媒体まで幅広くメディアづくりやコンテンツ制作に携わっています。最近の活動場所:PLANETS、designing、DIG THE TEA、MIMIGURIなど。
■主催:一般社団法人デサイロ
一般社団法人デサイロ(De-Silo)は、人文・社会科学分野の研究者を伴走支援し、社会との多様な接点をつくるアカデミックインキュベーターです。「いま私たちはどんな時代を生きているのか」を研究者とともに探り、そのなかで立ち現れるアイデアや概念を頼りに、来るべき社会の探索と構想を目指します。
団体の概要や活動の詳細は以下ページをご参照ください。