【2023年刊】人文・社会科学の博論書籍化リスト──デサイロが注目する17冊
間もなく終わりを迎える2023年。今年もたくさんの人文・社会科学の書籍が刊行されました。
中でも博士論文をベースとした書籍は、並々ならぬ情熱のもとで、研究“知“の継承と更新を行う大作ばかり。広く売り出される一般書と同じくらい、あるいはそれ以上に、「いま私たちはどんな時代を生きているのか」にヒントを与えてくれる重要な書物たちです。
このニュースレターでは、毎月、その月に刊行された人文・社会科学領域の新刊書の中から、デサイロとして注目したいものをピックアップしてご紹介してきました。
■2023年2月、人文・社会科学の新刊。デサイロ注目の10冊──自由論からネガティヴ・ケイパビリティ、〈猫〉の社会学まで
■【2023年6月刊】「選択的シングル」、死と後世、『科学革命の構造』新版……デサイロが注目したい人文・社会科学の新刊10冊
■【2023年11月刊】イリイチ『シャドウ・ワーク』文庫版、生きづらさの民俗学、言語学×ラップ……デサイロが注目したい人文・社会科学の新刊10冊
本記事では2023年の締めくくりとして、今年刊行された人文・社会科学領域の新刊書の中から、とりわけ博士論文をベースに書籍化したものに絞り、「いま私たちはどんな時代を生きているのか?」を考えるヒントをくれる17冊をピックアップしました。
「消費者主権」から、グローバル化する寿司、バンドマンの社会学まで、さまざまな視点から現代社会を読み解く強力な補助線を与えてくれる書籍ばかりです。
気になるタイトルがあれば、読書リストにぜひ加えてみてください。
1.藤井修平『科学で宗教が解明できるか: 進化生物学・認知科学に基づく宗教理論の誕生』
概要(版元ウェブサイトより引用)
進化論や認知科学を用いて、宗教についてどこまで明らかにできるのだろうか。科学的宗教理論の歴史と方法、思想的側面を解明する。
21世紀に登場した、進化論や認知科学を用いた宗教理論。本書は、この科学的宗教理論が宗教研究にどのような新展開をもたらし、宗教についてどこまで明らかにすることができたかを、その方法論、成立経緯、批判および思想的役割の分析を通して解明を試みている。本書により、宗教の科学的研究の基礎を知ることができる。
著者
藤井修平(ふじい・しゅうへい)
1986年生。慶應義塾大学文学部卒業。東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻宗教学宗教史学修士課程および博士課程修了。博士(文学)。現在、東京家政大学ほか非常勤講師。専門は宗教学理論研究、宗教心理学・宗教認知科学および「科学と宗教」。訳書にミルチャ・エリアーデ『アルカイック宗教論集』(共訳、国書刊行会、2013年)、アラ・ノレンザヤン『ビッグ・ゴッド:変容する宗教と協力・対立の心理学』(共訳、誠信書房、2022年)など。共著に、『海外における日本宗教の展開:21世紀の状況を中心に』(公益財団法人国際宗教研究所宗教情報リサーチセンター、2019年)など。
発売日
2023年1月
版元
勁草書房
2.池田直樹『ピーター・L・バーガー――分極化するアメリカ社会と対峙した社会学者』
概要(版元ウェブサイトより引用)
彼はなぜネオコンに接近し、そして決別したのか――有名社会学者の知られざる肖像を描く
近代とは何か、近代化と発展のための実現可能な戦略はどのようなものであるのかを問い続けた社会学者による、深まりゆくアメリカの分裂の進展を押しとどめるための果てしなく困難な挑戦を描きだす。
バーガーはこの半世紀ほどの間にアメリカ社会の現実に対峙した最も重要な社会学者の一人なのである。実際にこのことを象徴するように、その後半生において、彼はアメリカの現在と未来をめぐる激しい論争の渦中に身を置き続けた。これは、特にわが国においてはあまり知られていない事実であろう。[…]最初に次のような二つの大きな問いを立てておきたい。すなわち第一に、なぜ『(現実の社会的)構成』出版以降のバーガーにおいて、抽象的な理論研究という営為からのある種の方向転換が生じることになったのか、そして第二に、1970年代以降のバーガーの知的な活動はいかなるものであったのかという問いである。これらが本書全体の議論を嚮導する問いである。(「序章」より)
著者
池田直樹(いけだ・なおき)
1989年京都府生まれ。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート協力研究員。大阪工業大学工学部総合人間学系教室非常勤講師。佛教大学非常勤講師。博士(学術)(2021年3月 神戸大学)。
発売日
2023年1月
版元
ナカニシヤ出版
3.王昊凡『グローバル化する寿司の社会学:何が多様な食文化を生み出すのか』
概要(版元ウェブサイトより引用)
本書は中国・上海に展開する寿司店へのインタビュー調査を基に、現地に適応するかたちで独自の発展を遂げる寿司文化を描き出す。従来、グローバル化は「マクドナルド化」すなわち画一化現象として記述されてきたが、上海の事例から見えてくるのは多様性を内包したグローバル化という現実であり、本書ではこれを生み出す社会的条件を探っていく。グローバル化への見方に転換を迫る意欲的研究の成果。
著者
王昊凡(おう・こうはん)
2023年2月現在中部大学人文学部コミュニケーション学科助教
発売日
2023年2月
版元
ミネルヴァ書房
4.安中進『貧困の計量政治経済史』
概要(版元ウェブサイトより引用)
多様な形態をとって現前化する貧困問題の一つ一つを、これまで用いられてこなかった歴史的資料を掘り起こして体系的にデータ分析することで精緻に描き出し、それぞれの問題が生じるメカニズムに新しい光を当てる。近代化や民主化の過程における貧困の諸相を明らかにして新規の知見をもたらす、斬新かつ包括的な実証研究。
著者
安中進(あんなか・すすむ)
2020年,早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了.博士(政治学).早稲田大学高等研究所講師を経て,現在,弘前大学人文社会科学部助教.
発売日
2023年2月
版元
岩波書店
5.塩田潤『危機の時代の市民と政党――アイスランドのラディカル・デモクラシー』
概要(版元ウェブサイトより引用)
政党政治を動かす市民たち
近代的な議会政治が最初に誕生したといわれる北欧の島国、アイスランド。2008年の金融危機は、代表制民主主義の正統性をも揺るがせた。政党はもう時代遅れなのか。いかにして市民は政治を変えることができるのか。憲法改正運動と新たな市民政党の結成を取り上げ、今日の民主主義の動態を解き明かす。
著者
塩田潤(しおた・じゅん)
1991年大阪府生まれ、神戸大学大学院国際協力研究科部局研究員、龍谷大学法学部非常勤講師、法政大学キャリアデザイン学部兼任講師。専門は政治学、政党論および社会運動論。神戸大学大学院国際協力研究科博士課程修了。ピサ高等師範学校社会運動研究所研究留学などを経て現職。主な論文に「市民熟議と政党の組織化――アイスランドにおける憲法改正の失敗とその後」(『年報政治学2022-Ⅱ』)、主な訳書にシャンタル・ムフ『左派ポピュリズムのために』(共訳、明石書店)。
発売日
2023年2月
版元
明石書店
6.柳淳也『揺さぶる経営学: LGBTQから問い直す企業の生産性』
概要(参考ウェブサイト)
生産性至上主義に傾斜している経営学の本質を批判的に問い直す。とりわけ、今日話題となっているLGBTQをとりあげ、社会的課題と経営学との緊張関係を示す。
著者
柳淳也(やなぎ・じゅんや)
京都大学経営管理大学院 特定助教。1989年大阪府生まれ。大阪市立大学経営学研究科後期博士課程修了(経営学博士)。関西を中心にLGBTQに関する子ども向け授業や教員研修を実施。近年は、大学や企業でのダイバーシティ研修、自治体向けの職員研修などにも携わっている。
発売日
2023年3月
版元
中央経済社
7.印牧岳彦『SSA:緊急事態下の建築ユートピア』
概要(版元ウェブサイトより引用)
一九三〇年代、大恐慌下のアメリカ。フラー率いる建築家集団SSAから発生した建築と社会の変革をめぐる活発な議論を、現代から参照する。
第一次・第二次世界大戦間期の建築家たちによるユートピアへの希求とその帰結について、本書では運動の中心地であったヨーロッパにおける事例ではなく、アメリカ合衆国におけるひとつの展開に着目する。すなわち、一九三〇年代初頭のニューヨークにあらわれた「構造研究会(Structural Study Associates, SSA)」を名乗るバックミンスター・フラー率いる建築家集団と、彼らを取り巻く人々とのあいだでの議論の諸相である。大恐慌という資本主義社会の危機のさなかに活動を開始したこの団体は、産業化に立脚点をおいた建築観を背景として、大恐慌という「緊急事態(emergency)」をユートピアの「発生(emergence)」の契機へと転じるような、建築、都市、そして社会全体にわたる変革構想を提示していた。
著者
印牧岳彦(かねまき・たかひこ)
1990年福井県生まれ。2014年東京大学工学部建築学科卒業。2021年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。博士(工学)。東京大学大学院工学系研究科学術専門職員を経て、現在、神奈川大学建築学部特別助教。専門は第一次・第二次世界大戦間期を中心とした近代建築史。共訳書に『ロンドン大図鑑 』(加藤耕一監訳、西村書店、2017年)がある。
発売日
2023年3月
版元
鹿島出版会
8.松葉類『飢えた者たちのデモクラシー レヴィナス政治哲学のために』
概要(版元ウェブサイトより引用)
国家において、国家の彼方へ向かうことはできるのか?
レヴィナスは、「他者たち」とともに政治の意味を問う政治哲学の思想家である――
第三者、相互性、制度、物質主義、動物性、ユートピア、国家、不協和、無始原といった光源によって、「倫理」と「政治」を結びつけるレヴィナス政治哲学の輪郭を浮かび上がらせる。
著者
松葉類(まつば・るい)
一九八八年生まれ。京都大学文学部研究科博士課程研究指導認定退学。博士(文学)。現在、同志社大学ほか非常勤講師。専門はフランス現代思想、ユダヤ思想。論文に「レヴィナスにおけるデモクラシー論――国家における国家の彼方」(『宗教哲学研究』第三八号、二〇二一年)など。共訳書にミゲル・アバンスール『国家に抗するデモクラシー』(法政大学出版局、二〇一九年)、エマヌエーレ・コッチャ『メタモルフォーゼの哲学』(勁草書房、二〇二二年)など。
発売日
2023年3月
版元
ナカニシヤ出版
9.彭永成『『ゼクシィ』のメディア史: 花嫁たちのプラットフォーム』
概要(版元ウェブサイトより引用)
「結婚のバイブル」誕生と発展を解き明かす
圧倒的な情報量と存在感から抜群の知名度と影響力を誇る結婚情報誌『ゼクシィ』。
デジタル社会、雑誌不況といわれる現在においても紙の雑誌が売れ続け、「ゼクシィ=結婚」という記号を成立させるほどの社会的認知度を獲得し、コロナ禍による不況を経た後もブライダル業界から絶対的信頼を寄せられている。『ゼクシィ』は、いかにして「結婚式のバイブル」となったのか。そして、誌上で描かれる「花嫁」のイメージはどのように変化してきたのか。
業界では常に「ひとり勝ち」といわれる『ゼクシィ』の絶対的地位を支える「ゼクシィ神話」成立の秘密と、恋愛情報雑誌としてスタートした『ゼクシィ』がブライダル情報に特化し、幾多の可能性のなかから花嫁たちをそれぞれの結婚式へと送り出す「プラットフォーム型雑誌」になるまでのメディア史を、同類他誌や地方版、海外版、ウェブサイトなどと比較しながら多角的に分析する。
著者
彭永成(ほう・えいせい、Peng Yongcheng)
1993年、中国湖南省生まれ、『ゼクシィ』と同い年。2015年武漢大学新聞と伝播学部卒業。湖南衛視テレビ局の実習ディレクターや地元の外国語高校の日本語教師を経て、2017年4月京都大学教育学研究科に入学し、2022年3月博士号(教育学)を取得。2023年4月から桃山学院大学社会学部講師。
論文:「『ゼクシィ』における理想的な結婚イメージの創出-結婚情報誌からブライダル情報誌へ」(『マス・コミュニケーション研究』第97号)「ブライダル情報誌から見る30代花嫁の理想像の構築――「大人ゼクシィ」の分析を中心に」(『出版研究』第51号)など。
発売日
2023年4月
版元
創元社
10.園田薫『外国人雇用の産業社会学: 雇用関係のなかの「同床異夢」』
概要(版元ウェブサイトより引用)
「日本で働く」ということは,外国人にとってどんな意味をもつのか。そして日本企業はなぜ,どのように外国人を雇用しているのか。大企業と外国人社員との雇用関係に注目,その独特の関係がいかにして成り立ち,なぜミスマッチが起こるかを調査をもとに明らかにする。
著者
園田薫(そのだ・かおる)
日本学術振興会 特別研究員PD(法政大学)。1991年東京都生まれ。2021年に東京大学大学院人文社会系研究科より博士号(社会学)を取得。専門は、産業社会学/外国人労働問題/人的資源管理論/組織論など。主に日本企業と外国人の雇用関係について研究。代表的な著作に『外国人雇用の産業社会学』(単著)、『21世紀の産業・労働社会学』(編著)などがある。
発売日
2023年4月
版元
有斐閣
11.林凌『〈消費者〉の誕生── 近代日本における消費者主権の系譜と新自由主義』
概要(版元ウェブサイトより引用)
日本の消費者主権論の展開、あるいは反–マルクス主義思想の実践史
かつて、〈消費者〉による社会の変革を夢見た人びとがいた。急進的労働運動のオルタナティブの形成を目的として、日本における婦人運動の限界を打ち破ることを目的として、あるいは利己と利他の二項対立を超克した協同社会の樹立を目的として。
さまざまな思惑が渦巻くなかで、〈消費者〉をめぐる言説空間は急激に拡大していき、戦間期日本におけるひとつの思想潮流を形づくる。だがそれは、戦中期の「総力戦体制」に、すべての人びとの生を投棄することを許容する論理までも提供するものであった。
翻って、私たちは現在〈消費者〉として生きることを当たり前のように思っている。多くの研究者は、私たちがもつアイデンティティが、〈労働者〉としてのそれから〈消費者〉のそれへと移り変わってきたことを指摘してきた。では、この私たちの生の有り様を肯定する論理はいかなる背景のもと形成されてきたのか。そしてそれは、どのような可能性を排除するものであったのか。
戦間期日本において、マルクス主義への反発のなかから「消費者主権」という思想が形成されたことを示し、その影響の根深さを示す。〈消費者〉あるいは「消費社会」の歴史と「いま」を考えるための、必読の書。
著者
林凌(はやし・りょう)
1991年生まれ。 東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学、博士(社会情報学)。現在、日本学術振興会特別研究員(PD)。専門は消費社会論、歴史社会学。
論文に「出来事としての都市を考えるために」(『惑星都市理論』所収、以文社、2021年)、「労働問題の源泉としての「新自由主義」?」(『労働と消費の文化社会学』所収、ナカニシヤ出版、2023年)など。
発売日
2023年5月
版元
以文社
12.武藤浩子『企業が求める〈主体性〉とは何か:教育と労働をつなぐ〈主体性〉言説の分析』
概要(版元ウェブサイトより引用)
教育界・産業界に飛び交うマジック・ワード――〈主体性〉
近年、〈主体性〉を持った人材が社会で広く求められており、教育界もまた、〈主体性〉を持った人材の育成に取り組んでいる――しかし、その〈主体性〉とは一体何なのか?
本書は、これまで曖昧なままにされてきた〈主体性〉に鋭く切り込み、〈主体性〉が強く求められることで生じるパラドキシカルな今日的課題についても示唆する。〈主体性〉に関わる教育界・産業界の方々、また教育から労働へと移行する学生、必読の書。
著者
武藤浩子(むとう・ひろこ)
早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。大学教育学会・学会奨励賞受賞(2021年度)。東京大学高大接続研究開発センター特任助教を経て早稲田大学非常勤講師。
主な論文:「学生の質問行動に影響を与える要因の検討」(2020,『大学教育学会誌』41-2),「私立大学附属・系属高校生徒の学習に関する研究―大学進学ルートの違いに着目して」(共著,2022,『早稲田教育評論』36-1),「職場における仕事の自律性の規定要因―仕事に関わる能力・上司の支援・役職との関連に着目して」(2021,『早稲田大学教育学研究科紀要別冊』28-2),“Exploring the Effect of Study Abroad on Student Proactive Learning”(2020,『早稲田大学教育学研究科紀要別冊』27-2)
発売日
2023年5月
版元
東信堂
13.平野智紀『鑑賞のファシリテーション』
概要(版元ウェブサイトより引用)
本書では、どうしたら深い対話を引き出すことができるのか、作品にまつわる情報はどのように取り扱ったらいいのかなど、対話型鑑賞を知識構築のプロセスとして捉えることで、鑑賞のファシリテーションに関する知見を見出すことを試みる。対話型鑑賞において、知識構築を促すファシリテーションの原則を明らかにし、鑑賞のファシリテーションのモデルを示す。
著者
平野智紀(ひらの・ともき)
1983年静岡県磐田市生まれ。博士(学際情報学)。企業に勤務する傍ら、各地の美術館やアートプロジェクトで、対話型鑑賞ワークショップの実践やそれを通じた人材育成を担当。主な取組に、大地の芸術祭 対話型鑑賞プログラム講師(2021年)、あいちトリエンナーレ2019ボランティア育成特別講師(2019年)、六本木アートナイトをもっと楽しむガイドツアー講師(2015年〜2018年)など。分担翻訳に『学力をのばす美術鑑賞:ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ』(2015年)、分担執筆に『図画工作・美術科 理論と実践』(2016年)。内田洋行教育総合研究所主任研究員、京都芸術大学アート・コミュニケーション研究センター共同研究者。
発売日
2023年7月
版元
あいり出版
14.田村美由紀『口述筆記する文学―書くことの代行とジェンダー』
概要(版元ウェブサイトより引用)
谷崎潤一郎をはじめ、口述筆記を行った作家は実は多い。だが、ディスアビリティやケアが絡み合う空間で、筆記者、特に女性の役割は不可視化されてきた。大江健三郎、多和田葉子、桐野夏生らの作品をも取り上げ、書くことの代行に伴う葛藤とジェンダー・ポリティクスを鋭く分析した力作。
著者
田村美由紀(たむら・みゆき)
奈良県に生まれる(1990年)。奈良女子大学大学院人間文化研究科博士前期課程修了(2015年)、総合研究大学院大学文化科学研究科博士後期課程修了(2021年)。現在は国際日本文化研究センター機関研究員、博士(学術)。
主な論文に「完結する物語、完結しない声――崎山多美「ピンギヒラ坂夜行」から考える」(坪井秀人編『戦後日本の傷跡』臨川書店、2022年)などがある。
発売日
2023年8月
版元
名古屋大学出版会
15.柳田さやか『「書」の近代──その在りかをめぐる理論と制度』
概要(版元ウェブサイトより引用)
明治初期に翻訳語としての「美術」が誕生し、西洋的な美術観が導入されると、東洋において一体的な概念であった「書画」は「書」と「絵画」に分離し、書は美術の境界に位置付けられていく──。
その後、近代日本において書はどのように評価されてきたのか。書道界の動向と理論、博物館、展覧会、出版、教育の諸制度より、書がいかに在ったのかを丹念に検証し、旧態の「美術史」を再編する。
著者
柳田さやか(やなぎだ・さやか)
東京芸術大学美術学部芸術学科助教。博士(芸術学)。専門は日本書道史。
東京学芸大学教育学部中等教育教員養成課程書道専攻卒業。同大学院教育学研究科総合教育開発専攻芸術教育サブコース修士課程修了。
全国大学書道学会理事、全国大学書写書道教育学会理事、書学書道史学会監事。
共著に『日本の書 古代から江戸時代まで』(平凡社、2012年)等。
発売日
2023年10月
版元
森話社
16.西川開『知識コモンズとは何か: パブリックドメインからコミュニティ・ガバナンスへ』
概要(版元ウェブサイトより引用)
近年、ガバナンスの制度設計の指針として活用される知識コモンズについて解説し、最新の知識コモンズ研究の展開を通時的に論じる。
本書は、コモンズやデータガバナンス、知識共有、オープン化、知的財産権、パブリックドメイン、デジタルアーカイブ、オープンアクセス等をキーワードに、事例を挙げつつ知識コモンズ研究の展開を捉え、その知見がいかに応用されてきたのかを論じる。情報法や情報政策、図書館情報学に関心のある研究者や実務者、学生に最適の一冊。
著者
西川開(にしかわ・かい)
1991年北海道生まれ。2021年筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士後期課程修了。博士(図書館情報学)。現在,筑波大学図書館情報メディア系助教。主な著書に,『知識インフラの再設計(デジタルアーカイブ・ベーシックス)』(共著,勉誠出版,2022年),『欧米圏デジタル・ヒューマニティーズの基礎知識』(共著,文学通信,2021年)などがある。
発売日
2023年10月
版元
勁草書房
17.野村駿『夢と生きる バンドマンの社会学』
概要(版元ウェブサイトより引用)
人生を賭ける夢に出会えたことの幸福と困難――。いつの時代にも少数派ながら「卒業したら就職する」という、普通とされる生き方を選ばない者がいる。夢は諦めに終わるのか、形を変えて続くのか? 数年にわたる十代後半~二十代のバンドマンへの貴重なインタビュー調査をもとに現代の「夢追い」のリアルな実態を描き出す。
著者
野村駿(のむら・はやお)
1992年岐阜県飛騨市生まれ.名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士課程満期退学.博士(教育学).秋田大学大学院理工学研究科附属クロスオーバー教育創成センター助教を経て,現在同大学教職課程・キャリア支援センター助教.専門は教育社会学,労働社会学.
主要論文に,「なぜ若者は夢を追い続けるのか――バンドマンの「将来の夢」をめぐる解釈実践とその論理」(『教育社会学研究』第103集),「不完全な職業達成過程と労働問題――バンドマンの音楽活動にみるネットワーク形成のパラドクス」(『労働社会学研究』20巻),「夢を諦める契機――標準的ライフコースから離反するバンドマンの経験に着目して」(『教育社会学研究』第110集).
著書に,『調査報告 学校の部活動と働き方改革――教師の意識と実態から考える』(共著,岩波ブックレット),『部活動の社会学――学校の文化・教師の働き方』(共著,岩波書店)など.本書が初の単著.
発売日
2023年11月
版元
岩波書店
デサイロでは、人文・社会科学系の研究者がより持続的に活動できるエコシステムを生み出すために、「リサーチレポート」の制作を進めています。それに伴ってクラウドファンディングを実施しておりますので、ご興味のある方はぜひご支援ください。
またデサイロでは、ニュースレターやTwitter、Instagramなどを利用して、プロジェクトに関わる情報を継続的に発信中。Discordを用いて研究者の方々が集うコミュニティも運営しています。ご興味のある方はニュースレターの登録や各SNSのフォロー、あるいはDiscordにぜひご参加ください。
■Discord:https://discord.gg/ebvYmtcm5P
■Twitter:https://twitter.com/desilo_jp
■Instagram:https://www.instagram.com/desilo_jp/
■バックナンバー
【2023年12月刊】マネジメントの思想史、「現代人」の奇妙な心理、カリブ海思想入門……デサイロが注目したい人文・社会科学の新刊10冊
【採択者発表】人文・社会科学分野の研究者向け伴走支援プログラム「デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム」第1期