DeSci(分散型サイエンス)が「公共性」を志向する理由──パブリックブロックチェーン、Web3の源流からひもとく|濱田太陽
短期的な実益に結びつきづらい人文/社会科学の研究にとって、重要な課題の一つが「資金調達」です。その現状を打開するヒントを探るべく探究する連載シリーズ「研究資金調達のオルタナティブをめぐって」。
連載第3回では、DeSci(Decentralized Science:分散型サイエンス)が直面している「3つの課題」について、神経科学研究者・濱田太陽さんに論じていただき、今後の発展に向けた道筋を考えました。第4回では今後のDeSciの発展においてカギになる、公共的なシステムをめぐる思想や開発について、Web3の思想の源流にも遡りながら論じていただきます。
なぜパブリックブロックチェーンは公共的なシステムを支援するのか?
連載の前回で、ブロックチェーン界隈における公共的なシステムの思想や開発がDeSciの発展の鍵となるという筆者の考えを述べました。「公共」という言葉には様々な意味がありますが、ここでは、「パブリックブロックチェーンやプロトコルを利用する人、誰もがエコシステムの恩恵を享受できる仕組み」を指します。そして、この記事で明らかにするように、ブロックチェーン界隈で活動している人たちの一部には、ブロックチェーン界隈に参加する人たちにとっての公共だけでなく、全世界にいる人たちがブロックチェーンの恩恵を享受できる仕組みを構築する運動を作ろうとしています。
特に、イーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリン氏は、イーサリアムの開発初期から、数多くのエッセイや学術論文を通じて公共的システムへの関心を明らかにしてきました。さらに、新たなWebインフラの構築を目指すという目標を掲げる現代の「Web3」という概念も、イーサリアムのもう一人の共同創設者であるギャビン・ウッド氏が提唱したものです(ティム・バーナーズ=リーが2006年頃に提唱したWeb3.0とは異なります)。筆者は、この用語にも公共システムに関連する重要な思想が含まれていると考えています。
今回は、下の3つの観点から、イーサリアムが構築している公共的エコシステムやWeb3と公共的システムの関係、さらに公共的システムとしてのサイエンスについて論じたいと思います。
1)パブリックブロックチェーンによる公共的システムの構築
2)Web3と公共的システム
3)公共的システムとしてのサイエンス
これら3つの観点を通じて、分散型科学(DeSci)の発展において、公共的システムがどのように重要な役割を果たすのか明らかにしていきます。
パブリックブロックチェーンが構築する、公共的なシステム
イーサリアムファウンデーションと連携したGitcoinなどを中心に、いくつかのパブリックブロックチェーンが、DeSciのプロジェクトを支援すると表明したり、支援を開始しています。例えば、Gitcoinでは、DeSciのセクションを設けて寄付金を募ったり、イーサリアムファウンデーションなどと連携しプール金の分配を行ったりしています(参考)。また、2022年にはPolygonもDeSciを支援することを表明し、Harmonyはオープンサイエンスのためのインフラ構築を行っているOpSciDAOを支援しています。
では、これらの組織がなぜDeSciのプロジェクトを支援するのでしょうか? 筆者は、DeSciの観点ではなく、より広い視野で多くの人々に影響を与えうる公共的な観点から考察する必要があると考えています。
これらの組織が支援するのはDeSciプロジェクトだけではなく、公共的な影響があるプロジェクトです。大きな理由として、パブリックブロックチェーンへの参加を促進し、参入障壁を低減することで、取引量が増加し、結果的にパブリックブロックチェーンの知名度が向上することが挙げられます。
パブリックブロックチェーンを利用する際には、ガス代と呼ばれる取引手数料が発生します。このガス代は、ブロックチェーンのメンテナンス費用として使用されます。したがって、新しいプロジェクトをサポートし、取引量を増やすことで、ガス代で獲得できる総額が増え、エコシステムのメンテナンスのために利用できる費用が増えます。さらに、その一部を研究開発などに利用することで、エコシステムが備えるべきインフラを先行投資として整えることができ、パブリックブロックチェーンが持続可能なエコシステムを構築できるというわけです。ヴィタリックは、このような誰もが必要としているが、個人が積極的に資金を使おうとしないような仕組み(経済学ではこのような誰もが利益を享受することができ、ある個人の消費によって他の人の消費が妨げられない財を公共財と呼びます)を整える必要性を訴えています。このような国でいう公共事業の支援のような仕組みが、パブリックブロックチェーンを支えているのです。
複数のプロジェクトの中の一つとしてDeSciを支える理由もこのようなロジックが背景の一つにあると言えるでしょう。ヴィタリック・ブテリンは、2021年3月に公開された『The Most Important Scarse Resource is Legitimacy』というブログの文章の中で、イーサリアムが保有する資産を全てインフラの維持のみに使うよりも、一定の支出を研究開発やコアプロトコルに割り当てることで、新しいインフラに先行投資を行いエコシステムの価値が高まると示唆しています。
すでにイーサリアム等のパブリックブロックチェーンが公共財を支援する議論や取り組みが出てきています。
その一つが、連載の第2回でも紹介した、オープンソースプロジェクトを支援する『Gitcoin』です。Gitcoinは、イーサリアムのエコシステムに貢献するプロジェクトに対して、ユーザーの寄付の数を重視して支援する仕組みを導入していたり、保有する資産をGitcoinに貸し付けて利息の一部を公共財の支援にあてる仕組みも提供を開始したり、様々な取り組みを行っています。Gitcoinは、イーサリアムファウンデーションや分散型金融のプロトコルである1INCHなどとパートナーシップを結び、これまでに5082万ドル (約69億2800万円)の支援を行いました。公共的なプロジェクトへの支援の代表例として、2022年の年末には、イーサリアムファウンデーションは、国際連合児童基金 (UNICEF)と連携し、金融アクセス、教育・リテラシー、環境、公衆衛生の格差を是正するプロジェクトをサポートしています。
また、2023年4月には、ブロックチェーン技術が公共的なシステム、国際開発、持続可能な経済などの分野で活用できるかどうかを議論するBlockchain for Impact Workshopが、米国のハーバード大学で開催 (主催者: ヘレーナ・ロン (コロンビア大学博士課程学生))されました。これらの議論や取り組みは今後も増えていくと考えられます。
エコシステムの拡大という観点から考えると、パブリックブロックチェーンが公共的なサービスやプロジェクトを支援することは、自らの影響力を世界中に拡散させるための強力な戦略であると言えます。
Web3はそもそも「公共的」だった
現在活発に行われているパブリックブロックチェーンによる公共的なシステムへの寄付や投資は、すでにバズワード化したWeb3という標語とそもそも関係性があると筆者は考えています。
Web3は、イーサリアムの認知度を上げるためのマーケティング用の言語という側面であるのと同時に、イーサリアムというシステムで何を目指すのかが表現された言葉です。
現在使われているWeb3という用語は、イーサリアムの共同創業者の一人であるギャビン・ウッドによって元々提案されました。彼は、「Less-techy: What is Web 3.0?」の中で、スノーデン事件に代表されるように国への信頼性が崩壊した時代における新たなウェブとしてWeb 3.0という標語にまとめています。
ギャビン・ウッドが提唱したWeb 3.0は、その後Web3というムーブメントになりその意味も変化していきました。イーサリアムによって主に4つの特徴にまとめられています(図1、参考)。
その一つが、誰もがWebにアクセス権を持っており、誰もが排除されない「パーミッションレス」です。経済学の財の枠組みから見ると、このパーミッションレスはコモンズや公共財に分類されます。つまり、Web3的な特徴を持つプロダクトやサービスは、成否は別として、コモンズや公共財的な性質を志向しているわけです。このパーミッションレスという特徴は、ヴィタリック・ブテリンが使う誰もが参画できるインフラとしての”ワールドコンピュータ”という比喩にうまく表現されています。例えば、分散型金融 (DeFi)は、政府が信頼できない国の市民や銀行口座を持たない人たちが金融にアクセスできる機会を提供していると考えられており、パーミッションレスが持つ利点を活かしています。
誰もが参画するようなプロトコルを実現するためには、誰かがメンテナンスし、エコシステムが拡大するのを促す必要があります。たとえばGitcoinは、イーサリアムのエコシステムが健全に維持され拡大されるような仕組みを支援者の寄付を通じて導入しています。イーサリアムが持つ限りある資本や資源を、どのように持続可能な状態で利用するのかという技術や議論も必要になります。特に『コモンズの悲劇』と呼ばれるような誰もが個人の利益を追求することで有限な資源が枯渇してしまう課題を回避する仕組みや適切な公共財やコモンズの管理する仕組みを設計する必要があります。
また、インターネット上の情報は、参加者が増えるほど利用者の利益が増えるネットワーク効果があることがよく知られています。このような特徴を持つ財には、反競争性(anti-rivalry)の特徴があると定義されています。イーサリアムを含むパブリックブロックチェーンは、参加者を増やすことでより多くの人たちがサービスの質が向上するという特徴を共有しています。このようなコモンズを管理したり、より良い協力行動を促す仕組みを構築する学問として、経済学ではメカニズムデザインが知られており、イーサリアム界隈でも積極的に議論されています [Campbell&Moore, 2022; Jacob, 2022; Hart et al., 2022; Rachel, 2022]。特にヴィタリック・ブテリンは、経済学者であるグレン・ワイルやオードリー・タンらが作る新たな公共を作る運動であるRadicalxChangeにも参加しています。彼がこの運動に参加する背後にある動機は、公共財やコモンズの効果的な活用がイーサリアムのエコシステムの持続性に直結しているという認識からだと筆者は考えています。
図1:Web3の特徴と経済学における財の種類. Web3の特徴の一つであるパーミッションレスは、財の種類における排他可能性と類似している。Web3の理念として、コモンズや公共財を支援する動機がある。
他にも分散型データストレージ(InterPlanetary Filesystem, IPFS)を提供しているProtocol labsは、研究開発をしたり、Funding the commonsというワークショップをGitcoinやイーサリアムと共同して開催しています。Protocol labsはパブリックブロックチェーンではないですが、イーサリアムと同様に多くの利用者が増えることで、サービスの質が向上する特徴があります。このようなプロトコルもイーサリアムと一緒に公共財やコモンズを支援する動きを見せるのはこれまで言及した背景があるわけです。
一方で、人を惹きつけるプロジェクトであるということは、運営が悪意を持って惹きつけた人たちのお金を奪い利用してしまうこともできる側面もあります。2022年に起きたFTXを含めたさまざまなクリプトエコシステムの問題点は、このような側面から生まれた可能性もあります。
これまで見てきたブロックチェーン界隈での新たな公共的なシステムを構築する運動は、アメリカでは別のムーブメントも存在しています。
例えば、2000年代よりビル・ゲイツとメリンダ・ゲイツらはゲイツ財団を組織し、彼らの資産の大半を気候問題や感染症問題など公共的な事業やプロジェクトに対して寄付や投資する活動を行っています。ゲイツ財団は、ビジネスで培った経験をもとに財団活動を透明化し、支援に効果があるかを計量化しつつ支援するモデルを提案してきました。2010年には、ビル・ゲイツとメリンダ・ゲイツらは、ウォーレン・バフェットともにギビング・プレッジという啓蒙活動を始めました。この啓蒙活動は、大富豪が、生涯にわたって資産の半分以上を寄付すると宣誓するもので、これまでに総勢200名以上が宣誓に参加しています。これらのムーブメントは、「慈善資本主義 (philanthrocapitalism)」[Bishop&Green, 2008]と呼ばれ、アメリカの慈善活動を通じて公共的なサービスやプロジェクトを支援する動きとして理解できるでしょう。似たような動きに、効果的に他者を支援する仕組みを構築していこうという「効果的利他主義(Effective Altruism)」[MacAskill, 2016; Singer, 2015] もあります。こちらは、倫理学者であるピーター・シンガーやウィリアム・マッカスキル(オックスフォード大学准教授)など研究者を中心に探求され定式化されてきた経緯があります。
日本では、経済学者である宇沢弘文(1928-2014)が唱えた社会的共通資本 [宇沢, 2000]を再考する動きがあります。社会的共通資本とは、森林や水資源など、人間にとって魅力的な社会を維持するための持続可能で安定した資本や社会的なシステムのことを指します。地球や地域社会の有限な資源をどのように持続的に活用していくかという観点で見直されており、京都大学では社会的共通資本と未来寄附研究部門が設立され、東京大学でも社会的共通資本寄付講座(代表:松島斉(東京大学経済学部教授))が設置されています。このように、日本でも公共財やコモンズの再考が行われています。
このセクションでは、そもそもWeb3と呼ばれる運動が、公共性の高いシステムを新たに構築していく思想と結びついており、世界中の公共性の高いサービスやプロジェクトを支援していくことは、エコシステムを拡大していく戦略の一環であることを確認しました。DeSciなどへの研究開発支援は、そのようなエコシステム支援の一つとして理解できるでしょう。
公共的システムとしてのDeSci
Web3においては「パーミッションレス」という誰もがアクセスする権利があることが謳われているということを、先のセクションで確認しました。これは、Web3のプロジェクトが公共的なシステムを目指す理念的な原動力になっています。
またサイエンスもまた誰もがその恩恵を享受できる公共的なシステムであり、その観点で言えばDeSciは分散型技術を通じて公共的なサイエンスのシステムをブロックチェーン界隈のみならず再構築しようとする運動と言えます。
ここでは、パブリックブロックチェーン等がDeSciなどの研究開発を支援する理由について、以下の3つの観点から考えていきたいと思います。
情報の解析方法としてのサイエンス
ブロックチェーンのユースケースとしてのDeSci
研究開発の基盤としてのDeSci
1) 情報の解析方法としてのサイエンス
まず、情報の解析方法としてのサイエンス。
ブロックチェーンは取引情報が記録され、取引に関わる情報を計算し可視化することができるため、それら関わる計量手法の開発やその利用方法などにサイエンスが入り込む余地があります。
ブロックチェーンは、公開帳簿と呼ばれている通り、取引の記録が公開されており、多くの人たちに会計情報が晒されることになります。実際、イーサリアムなどのパブリックブロックチェーンの暗号通貨を保有している人たちがどれぐらい保有しているかは公開されています。これらをもとにDAOがどういった人たちが参加しており、どういった課題を持っているのか経済的、社会科学的な分析を行うことで、DAOのマネジメントを行うことが可能になります。
また、ブロックチェーンで記録される情報をどのように活用するのかは帳簿という利用方法以外でも、試行錯誤が行われています。
例えば、人間同士のやりとりを記録しソーシャルグラフとして活用する方法も考えられます。Gitcoinでは、ソーシャルグラフを活用して、支援額の割引などに活用することを提案しています。Gitcoinで知られている課題として、Gitcoin上で支援を受け付けているプロジェクトに対して、近いコミュニティの人たちが精力的に支援したり、彼らに賄賂を渡して支援を促すなどの不正行為ができることが知られています。記録されたソーシャルグラフを利用することで、近いコミュニティの人たちによる影響力を割り引いたり、不正行為を検出することなどが検討されています。
2) ブロックチェーンのユースケースとしてのDeSci
次に、ブロックチェーンのユースケースとしてのDeSci。
ブロックチェーンが実際のユースケースとして活用されることで、ブロックチェーンのエコシステムを拡大することができます。
連載第2回目などで説明してきたデータNFTを提供する「Ocean Protocol」や、知的財産権(IP)とNFTを組み合わせるIP-NFTを提供する「Molecule」などは新たなブロックチェーンの活用方法を提供しています。個人の遺伝子情報をデータ化しブロックチェーンで管理するGenomesDAO、長寿研究にファンディングするVitaDAOや女性の健康に関わる研究にファンディングを行うAthenaDAOなどはこれらのプロトコルを利用しており、実際のユースケースとしてブロックチェーンのエコシステムは拡大しています。ヴィタリック・ブテリンとその賛同者らは、2023年3-5月の間に、Zuzaluと呼ばれるコミュニティを組織し、モンテネグロでイベントを開催しました。Zuzaluのイベントでは、公共財やサイエンスに関するレクチャーも同時に開催されました。ゼロ知識証明やAIといったトピックの他に、ユースケースとしてのDeSciは大きく取り上げられ、VitaDAOや合成生物学研究にファンディングするValleyDAOのメンバーなどが参加しています。その取り上げられ方から、ヴィタリック・ブテリンによるDeSciへの注目の高さが伺えます。
今後、さらにDeSciのプレイヤーが増えることで、世の中でブロックチェーンが活用されるユースがより増えることが期待されています。
3) 研究開発の基盤としてのDeSci
最後に、研究開発の基盤としてのDeSci。
これまで述べてきたように、パブリックブロックチェーンやWeb3の組織には公共的なシステムをサポートする動機があります。また、パブリックブロックチェーンはこれまで研究開発の基盤を独自に持っていなかったため、DeSciのように科学者や研究者の参入があることで、パブリックブロックチェーン等が持つ客観的に技術的な課題を明らかにし修正する仕組みが生まれることになります。
例えば、DAO Research Collectiveという非営利の組織は、DAOに関する研究開発を支援し、DAOが持つ課題を発見したり機能を高めたりすることでDAOのエコシステムを健全に維持、拡大することを狙っています。個別のDAOが経験している課題を、集約的に拾い上げ研究として進めることができます。
組織の透明化や改善のためにサイエンスを利用する構造は、パブリックブロックチェーン等のみが持つものではなく、国や地方自治体などの政策決定の文脈でも言及されるサイエンスを活用した証拠に基づく政策 (Evidence-based Policy Making)とも類似しています。また、先のセクションで言及した慈善資本主義のプレイヤーであるアーノルド夫妻が運営するアーノルドベンチャーズも、サイエンス、特にメタサイエンスと呼ばれる領域を米国のCenter for Open Scienceへの支援を通して推進しています。Center for Open Scienceは「科学研究のオープン性、健全性、再現性」を高めることを目標とし、実際に研究データや論文等を登録するオープンサイエンスフレームワークを提供しており、心理学者などを中心にすでに多くの研究者に利用されています。
このようにブロックチェーンの界隈がDeSciのような研究開発を推進する仕組みを構築することは、そのエコシステムを維持していくためには普遍的に構築する必要がある機能と言えるのかもしれません。
このようにDeSciは、連載の第2回で取り上げたようなサイエンスの課題を解決するという目的だけではなく、ブロックチェーン界隈が活動を透明化し、改善することで、エコシステムの維持や拡大するために必要な機能であり支援の対象になっています。
今回見てきたように、パブリックブロックチェーン、特にイーサリアムがDeSciを支える根底には、公共的なシステムを新たに構築する動きがあることを確認してきました。この動きは、慈善資本主義や効果的利他主義などと言った新たな公共的なシステムを求める動きとも共鳴しており、ブロックチェーン界隈で公共的なものを構築する動きを、変化する世界の中で公共的なシステムの再構築に接続する試みと捉えることができるでしょう。
サイエンスも複数の課題を抱えており、国に支援されて研究を進めていく既存のシステムではない新たなサイエンスのシステムも複数立ち上がりつつあります。DeSciは、その一つであり、新たな公共的なシステムを支えるインフラの一つになりうると筆者は考えています。
参考文献
Bishop, M., & Green, M. (2008). Philanthrocapitalism: How the Rich Can Save the World and Why We Should Let Them. A & C Black Publishers Ltd.
Campbell, S., & Moore, M., (2022). Solarpunk! Reimagining Public Goods in the Age of Ethereum. https://society.mirror.xyz/OuxuYixNEYVX6D0kW6aHMy9g66lEwf5KsnlIha7F0bQ (2023/05/16) (キャンベル, S., & ムーア, M. (2022). Shinya Mori (訳) ソーラーパンク!Ethereum時代における公共財を新たに想像する Fracton Ventures https://mirror.xyz/0xF5CA53792C47e3a0792380292D15c894097015fF/Da4-BW_gGgpQwzfQBdO5V-KJjZWHT31y0c3C9TxHC14)
Jacob, 2022. Hyperstructures. https://jacob.energy/hyperstructures.html (2023/05/12) (ジェイコブ, Shinya Mori (訳) (2022). ハイパーストラクチャー Fracton Ventures)
Hart,S., Shorin, T., & Lotti, L., 2021. Positive Sum Worlds: Remaking Public Goods https://otherinter.net/research/positive-sum-worlds/ (2023/05/12) (ハート, S.他 Shinya Mori (訳) (2022). ポジティブサムワールド:公共財の再構築 Fracton Ventures)
MacAskill, W. (2016). Doing Good Better: Effective Altruism and a Radical New Way to Make a Difference. Guardian Faber Publishing. (マッカスキル, W 千葉 敏生(訳)(2016). 〈効果的な利他主義〉宣言! ――慈善活動への科学的アプローチ みすず書房)
Rachel, Lunarpunk and the dark side of the cycle. https://www.egirlcapital.com/writings/107533289 (2023/05/12)
Singer, P. (2015). The Most Good You Can Do: How Effective Altruism Is Changing Ideas About Living Ethically. Yale University Press. (シンガー, P. 関 美和(訳)(2016). あなたが世界のためにできる たったひとつのこと 〈効果的な利他主義〉のすすめ NHK出版)
宇沢弘文. (2000). 『社会的共通資本』 岩波新書.
濱田太陽(はまだ・ひろあき)
神経科学者(博士)。シニアリサーチャー(株式会社アラヤ)。沖縄科学技術大学院大学(OIST)科学技術研究科博士課程修了。2022年より、Moonshot R&Dプログラム (目標9)「逆境の中でも前向きに生きられる社会の実現」(山田PMグループ)のPrincipal Investigatorとして前向き状態に関するモデル化に従事している。研究テーマは好奇心の神経計算メカニズムの解明や大規模神経活動の原理解明。教育やサイエンスの新たな可能性を模索している中で、分散型サイエンスに注目している。
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