【2025年8月刊】都市の鍼治療指南書、ノスタルジアは世界を滅ぼすのか、セキュリティの共和国……デサイロが注目したい人文・社会科学の新刊12冊
「いま私たちはどんな時代を生きているのか」──人文・社会科学領域の研究者とともにこの問いを探り、研究のなかで立ち現れるアイデアや概念の社会化を目指すアカデミックインキュベーター「デサイロ(De-Silo)」。
2025年8月に刊行の人文・社会科学領域の新刊書の中から、デサイロとして注目したい12冊をピックアップしました。
気になるタイトルがあれば、読書リストにぜひ加えてみてください。
1.ハウジング・バイ・ピープル:〈居住の自律〉を取り戻す
・スラムの関係的価値に住宅所有の創造的泉源を見る古典的名著、待望の邦訳。
・画一的な住宅政策に異を唱え、生存環境としての住まいを問い直す。
・空き家問題、災害住宅……居住の危機を乗り越える「セルフヘルプ」の提言。
途上国都市の「建てる自由」に〈居住の自律〉本来の姿を見出した建築家ジョン・F・C・ターナー。
急速な都市化が進む1970年代、住宅とは何かではなく、「住宅は何をもたらすか」を問い続け、独自の住宅哲学を深めた。
中央集権的な住宅政策の矛盾を鋭く見抜き、立ち退きに翻弄される人々の姿に住宅保持の切実さを訴えた古典的名著、2万字を超える訳者解題を付し待望の邦訳。
著者
ジョン・F・C・ターナー(著)
1927年ロンドン生まれ。AAスクールで学んだ後、1957年よりペルーに滞在。不法占拠居住地が都市周縁部で急拡大する状況下、同地で8年にわたり住宅政策に携わる。1965年アメリカに移り、2年間ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)の共同都市研究センターで研究に従事。その後、1970〜71年米国住宅都市開発省のプロジェクトで〈セルフヘルプ住宅〉の評価を実施。翌72年には、この成果をもとに「Freedom to Build: Dweller Control of the Housing Process(建てる自由、未邦訳)」を出版した。1973年にロンドンへ戻り、AAスクールと同学の開発計画ユニットおよびユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで1983年まで教鞭をとった。1976年本書に示された提言が、同年の第1回国連人間居住計画会議で支持を集め、国連や世界銀行の途上国住宅政策に強い影響力をもった。2023年逝去。
発売日
2025/8/5
版元
慶應義塾大学出版会
2.都市の鍼治療指南書
概要(版元ウェブサイトより引用)
ハイライフ研究所ウェブサイトで連載中の膨大なデータベース「都市の鍼治療」を体系立てて読み解くための手引書。
「都市の鍼治療」は、ブラジルのクリチバ市長であったジャイメ・レルネルが提唱した都市の課題を解決させる手法です。
都市を身体に見立てて各事例を症例と捉え、都市の抱える課題やアプローチ方法を効能やツボと「鍼治療」になぞらえて分類し、多様な治療方法を解説しています。ウェブサイトと連動して読めるような一覧も付しています。
著者
服部 圭郎(著)
1963年東京都生まれ。東京大学工学部卒業、カリフォルニア大学環境デザイン学部で修士号取得。某民間シンクタンク勤務、明治学院大学経済学部教授を経て、現職。 専門は都市計画、地域研究、コミュニティ・デザイン、フィールドスタディ。 主な著書に『若者のためのまちづくり』『人間都市クリチバ』『衰退を克服したアメリカ中小都市のまちづくり』『ドイツ・縮小時代の都市デザイン』など。技術士(都市・地方計画)、博士(総合政策学)。
発売日
2025/8/6
版元
鹿島出版会
3.極右インターナショナリズムの時代: 世界右傾化の正体
概要(版元ウェブサイトより引用)
なぜこの時代に「右傾化」が世界中で進行しているのか。欧米で広がる極右政党の台頭と反イスラムの風潮、中東を中心としたムスリム諸国での宗教右派の台頭、西側リベラル政治勢力の後退にもかかわらず加速し続ける新自由主義経済政策――。一見するとバラバラに映る現象の背後には、実は共通する力が作用している。本書は極右思想のネットワーク化とその思想の広がりを、特定の国家・民族に限ることなく、地域横断的に分析することを通して、世界的な「右傾化」メカニズムの解明に挑む。
著者
佐原 徹哉(著)
1963年、東京生まれ。東京大学大学院人文科学研究科西洋史学博士課程中退。博士(文学、東京大学)。専門は、東欧史・比較ジェノサイド研究。明治大学政治経済学部教授。主な著書に『近代バルカン都市社会史』(刀水書房)、『中東民族問題の起源』(白水社)、『極右インターナショナリズムの時代』(有志舎)など。
発売日
2025/8/11
版元
名古屋大学出版会
4.トランプのアメリカ 内政と外交、そして世界
概要(版元ウェブサイトより引用)
トランプ2.0の衝撃
大統領はアメリカと世界をどう変えようとしているのか
相互関税、対外援助の縮小、不法移民の取り締まり強化・・・
大統領就任以来、世界に驚きと不安を与え続けるトランプ政権。その政権の現在を、内政、外交、社会など、あらゆる観点から気鋭の研究者が考察する。
編者
佐橋 亮(編)
東京大学東洋文化研究所教授
専門は国際政治学、東アジアの国際関係。著書に『米中対立——アメリカの戦略転換と分断される世界』(中央公論新社)、『共存の模索——アメリカと「二つの中国」の冷戦史』(勁草書房)、『冷戦後の東アジア秩序――秩序形成をめぐる各国の構想』(勁草書房)、『バイデンのアメリカ――その世界観と外交(UP plus)』(東京大学出版会)。
梅川 健(編)
東京大学法学部教授
専門はアメリカ政治外交史、アメリカ政治。著書に『大統領が変えるアメリカの三権分立制——署名時声明をめぐる議会との攻防』(東京大学出版会)、『アメリカ大統領の権限とその限界——トランプ大統領はどこまでできるか』(共編、日本評論社)、『アメリカ政治の地殻変動——分極化の行方』(共編、東京大出版会)。
発売日
2025/8/18
版元
東京大学出版会
5.国際政治における認知と誤認知
概要(版元ウェブサイトより引用)
なぜ誤認知は生じるのか、その結果として何が起きるのか? 戦争はじめ外交政策の決定因子を政策決定者を中心に分析した基本文献。
著者
ロバート・ジャーヴィス(著)
コロンビア大学アドレー・E. スティーヴンソン教授(本訳書の原書の刊行当時)。
1940年生まれ、2021年死去。カリフォルニア大学バークレー校政治学部博士課程修了、Ph.D.。ハーバード大学助教授・准教授、カリフォルニア大学ロサンジェルス校教授を歴任。アメリカ政治学会会長(2000-2001年)。国際政治学、政治心理学、核戦略論、インテリジェンス研究などに従事。
発売日
2025/8/18
版元
みすず書房
6.歴史学は世界を変えることができるか
概要(版元ウェブサイトより引用)
不条理なこの世界を変えたいと願うとき、歴史学には役割がある。ラディカルな態度に貫かれた、抑圧と解放をめぐる思索の軌跡。
「抑圧からの解放に向ける関心が私の研究を駆動してきた」。歴史学は、この日常、そして不条理なこの世界と地続きだ。だから、世界を変えたいと願うとき、歴史学には役割がある。抑圧の構造を読み解き、人びとの解放への夢を想起すること。そして、それらを開かれた言葉にすること。ラディカルな態度に貫かれた思索の軌跡。
著者
松沢 裕作(著)
1976年生まれ.東京大学大学院人文社会系研究科博士課程中退.博士(文学).現在,慶應義塾大学経済学部教授.日本近代史,史学史専攻.
著書に,『明治地方自治体制の起源』(東京大学出版会),『町村合併から生まれた日本近代』(講談社選書メチエ),『自由民権運動』(岩波新書),『生きづらい明治社会』(岩波ジュニア新書),『日本近代社会史』(有斐閣),『日本近代村落の起源』(岩波書店),『歴史学はこう考える』(ちくま新書),『近代日本のヒストリオグラフィー』(編著,山川出版社),『森林と権力の比較史』(編著,勉誠出版),『日本近・現代史研究入門』(共編,岩波書店)など.
発売日
2025/8/19
版元
岩波書店
7.文化が違えば、心も違う?
概要(版元ウェブサイトより引用)
文化が違えば人の考え方も変わる。歴史から生態、遺伝情報まで、多様な知見を駆使してこころの秘密に挑む文化心理学の最先端!
文化が違えば人の考え方も変わる。では、文化の違いはどこから生まれる? 文化はこころにどのような影響を与えている? 人類の歴史や地球の生態から、脳神経や遺伝情報まで、多様な知見を駆使して、人間のこころのメカニズムを解明する文化心理学。通俗的な偏見を退け、多様性の本質を捉える最先端の試みを紹介する。
著者
北山 忍(著)
1957年,静岡県焼津市生まれ.京都大学大学院哲学研究科(心理学専攻)修士課程修了後,米国ミシガン大学にて博士号B(Ph.D.)取得.現在は,ミシガン大学心理学部ロバート・ザイアンス冠教授,京都大学・人と社会の未来研究院特任教授.心理科学協会(APS)会長を務めたほか,アメリカ心理学会(APA)・Distinguished Scientific Contributions Award,APSよりWilliam James Fellow Awardなどを受賞.2026年より,行動・脳科学関連諸学会連合(Federation of Associations in Behavioral and Brain Sciences)会長を務める.アメリカ芸術科学アカデミー会員でもある.
発売日
2025/8/20
版元
岩波書店
8.フォレンジック・アーキテクチャー
概要(版元ウェブサイトより引用)
傷だらけの現場は証言する。
パレスチナ紛争をはじめとした国家が引き起こす暴力を調査し、記録・記憶・痕跡から見出した証拠を繋ぎ合わせ、責任の所在を浮かび上がらせる。斬新な調査手法で近年注目を浴びる「フォレンジック・アーキテクチャー」のさまざまな実践を記録した、パフォーマンスの断章。
著者
エヤル・ヴァイツマン(著)
1970年、イスラエルのハイファに生まれる。ガザ地区における調査から出発して、国家権力が引き起こす暴力事件を建築の問題として解析・追究・展示する調査機関フォレンジック・アーキテクチャーを主宰する。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ教授。主な著書に、Hollow Land: Israel’s Architecture of Occupation (Verso, 2012)、Investigative Aethetics: Conflicts and Commons in the Politics of Truth(Verso, 2021,邦訳『調査的感性術――真実の政治における紛争とコモンズ』、水声社,2024年)などがある。
発売日
2025/8/21
版元
水声社
9.残酷な楽観性
概要(版元ウェブサイトより引用)
苦しみさえ生む「愛着」と「欲望」から、人はなぜ逃れられないのか
愛、家族、あるいは共同体、国家――いつ打ち砕かれるかも分からない、そこでの「幸せな/よき生」を、なぜ人は追い求め、夢見つづけてしまうのか。
出口のない新自由主義社会における「私たちの欲望」への批評的介入を試みた、情動理論の“最重要文献”、待望の刊行!
「米国で最も尊敬され、影響力のある文学/文化研究者の一人」(ジュディス・バトラー)と評された、比類なき情動/クィア理論の批評家ローレン・バーラントが生涯をかけて辿り着いた到達点
著者
ローレン・バーラント(著)
シカゴ大学英文学ジョージ・M・プルマン特別教授。文学研究者、文化理論家、編集者(デューク大学出版局Theory Q Series等)。2021年に63歳で逝去。
著書に、The Female Complaint(Duke University Press, 2008)、Desire/Love(Punctum Books, 2012)、Sex, or the Unbearable(with Lee Edelman, Duke University Press, 2014)、The Hundreds(with Kathleen Stewart, Duke University Press, 2019)、On the Inconvenience of Other People(Duke University Press, 2022)など多数。
発売日
2025/8/25
版元
花伝社
10. ノスタルジアは世界を滅ぼすのか
概要(版元ウェブサイトより引用)
あなたの「懐かしい」は誰かの「武器」になる。
人類史上、最も危険で、最も癒され、最も儲かる「エモい」感情の正体。
政治やビジネスを動かし、消費を煽る、知られざる力とは。
著者
アグネス・アーノルド=フォースター(著)
歴史学者。ロンドン大学キングス・カレッジで博士号を取得。エディンバラ大学、マギル大学、UCL、ロンドン大学キングス・カレッジ、ロンドン大学クイーン・メアリー校感情史研究センターでも勤務。がんと手術に関する2冊の学術書の著者であり、学術誌、医学誌、主要誌に幅広く執筆している。また、BBCラジオやテレビに出演し、テレビドラマやドキュメンタリーのコンサルタントを務め、科学博物館、ウェルカム図書館、王立看護協会と緊密に協力している。ロンドン在住。
発売日
2025/8/27
版元
東洋経済新報社
11.セキュリティの共和国 戦略文化とアメリカ文学
概要(版元ウェブサイトより引用)
「心配のない」状態を指した「セキュリティ」は、有事に備え、安全を確保するための言葉に変わってしまった。
「理念の国」米国で死、暴力、軍事はいかに正当化されるのか。米国の戦略文化の行方を考える上での必読文献。ーー宇野重規(政治学者)
著者
新田 啓子(著)
1967年東京生まれ。立教大学教授。ウィスコンシン大学マディソン校大学院博士課程修了(Ph.D)専攻はアメリカ文学、文化理論。著書に『アメリカ文学のカルトグラフィ――批評による認知地図の試み』『アメリカの黒い傷痕――〈生態(エコロジー)〉としての人種と文学の潜勢力』、共著書に『ジェンダー研究のフロンティア5 欲望・暴力のレジーム』『クリティカル・ワード 文学理論』ほか。訳書にトリーシャ・ローズ『ブラック・ノイズ』。
発売日
2025/8/27
版元
講談社
12.ポストヒューマニズムデザイン
概要(版元ウェブサイトより引用)
人間中心のデザインはこれまで気候変動や環境破壊、抑圧等を生み出してきた。では、どのようにモノと中心を共有する新たなデザインの構築が可能なのだろうか。従来のデザインにおける暗黙の了解を解体し、ドゥルーズやラトゥール、インゴルドなどの思想を現実的なデザイン実践と接続した革新的著作!
著者
ロン・ワッカリー(著)
サイモンフレーザー大学インタラクティブアート&テクノロジー学部教授。同大学にてエブリデイ・デザイン・スタジオを創設。またアイントホーフェン工科大学インダストリアルデザイン学部教授であり、フューチャー・エブリデイ・クラスターにおける「人間以上中心の世界のためのデザイン」プログラム代表。彼の研究は、人間-テクノロジーの関係性およびポストヒューマニズムについての新たな理解を踏まえた、デザインおよびHCIの変容を対象としている。その目標は、新たなデザインの事例、理論、創発的実践を省察的に生み出すことで、説明責任を果たしうる、持続可能で公平なデザインのあり方を構築・理解することである。ノバスコシア美術デザイン大学にて視覚芸術学士(BFA)、ニューヨーク州立大学にて視覚芸術修士(MFA)、プリマス大学にてHCI領域の博士号(PhD)を取得。
発売日
2025/8/28
版元
明石書店
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