一般社団法人デサイロ(De-Silo)は、人文・社会科学分野の研究者を伴走支援し、社会との多様な接点をつくるアカデミックインキュベーターです。「いま私たちはどんな時代を生きているのか」を研究者とともに探り、そのなかで立ち現れるアイデアや概念を頼りに、来るべき社会の探索と構想を目指します。


デサイロのミッション

「研究“知”とともに、次なる社会を探索する」

研究により生み出される知は、いま私たちが生きている時代を読み解く、あるいは社会がこれから直面する課題発見のための重要なリソース(資源)であるはず──。こうした視点に基づき、「いま私たちはどんな時代を生きているのか」を研究者とともに探り、そのなかで立ち現れるアイデアや概念を頼りに、来るべき社会の探索と構想を目指します。

また、そうした研究“知”を豊かにするために、大学、研究所、企業、行政、出版・メディア、そして生活者といった多様なステークホルダーと連携しながら、社会のコモンズとしての「研究」とそれを取り巻くエコシステムを支えていきます。

アプローチ

1.研究者エージェンシーとして、研究者を伴走支援

デサイロは、人文・社会科学分野の研究者を伴走支援し、持続的な活動をサポートします。研究と社会の接点を探り、多様なステークホルダーと連携した研究“知”の活用や、アカデミア外に広がる研究者のキャリアデザインを支援します。

研究者とアーティストとの協働による知のアウトリーチ

第一期のプログラムでは、人文・社会科学領域の4名の研究者の方(磯野真穂さん、柳澤田実さん、山田陽子さん、和田夏実さん)とともに、それぞれの研究テーマに基づいて「いま私たちはどんな時代を生きているのか」を探求し、そのなかで出てきた知をアーティストの方とのコラボレーションによって、社会に届けていきます。

第一期に参加する4名の研究者

研究テーマ:21世紀の理想の身体(磯野真穂)

磯野真穂(いその・まほ)
人類学者。専門は文化人類学・医療人類学。博士(文学)。早稲田大学文化構想学部助教、国際医療福祉大学大学院准教授を経て2020年より独立。身体と社会の繋がりを考えるメディア「からだのシューレ」にてワークショップ、読書会、新しい学びの可能性を探るメディア「FILTR」にて人類学のオンライン講座を開講。著書に『他者と生きるーリスク・病い・死をめぐる人類学』(集英社新書)『なぜふつうに食べられないのか――拒食と過食の文化人類学』(春秋社)、『医療者が語る答えなき世界――「いのちの守り人」の人類学』(ちくま新書)、『ダイエット幻想――やせること、愛されること』(ちくまプリマ―新書)、宮野真生子との共著に『急に具合が悪くなる』(晶文社)などがある。(オフィシャルサイト:www.mahoisono.com )

関連記事:“ありのまま“ではいられない私たち。「理想の身体」への欲望から見えてくるもの──人類学者・磯野真穂

研究テーマ:「私たち性 we-ness」の不在とその希求(柳澤田実)

柳澤田実(やなぎさわ・たみ)
1973年ニューヨーク生まれ。専門は哲学・キリスト教思想。関西学院大学神学部准教授。東京大学21世紀COE研究員、南山大学人文学部准教授を経て、現職。編著書に『ディスポジション──哲学、倫理、生態心理学からアート、建築まで、領域横断的に世界を捉える方法の創出に向けて』(現代企画室、2008)、2017年にThe New School for Social Researchの心理学研究室に留学し、以降Moral Foundation Theoryに基づく質問紙調査を日米で行いながら、宗教などの文化的背景とマインドセットとの関係について、何かを神聖視する心理に注目しながら研究している。

関連記事:“ねじ伏せない”社会変革のため、「私たち」の感覚にリアリティを付与する──哲学者・柳澤田実

研究テーマ:ポスト・ヒューマン時代の感情資本(山田陽子)

山田陽子(やまだ・ようこ)
社会学者。大阪大学大学院人間科学研究科准教授。博士(学術)。単著に『働く人のための感情資本論―パワハラ・メンタルヘルス・ライフハックの社会学』(青土社,2019年)、『「心」をめぐる知のグローバル化と自律的個人像―「心」の聖化とマネジメント』(学文社,2007年)、編著に『社会学の基本-デュルケームの論点』(学文社,2021年)など。社会学史学会奨励賞受賞(2007年)。社会学理論や学説を丹念に読み込みながら、フィールドワークやインタビュー調査を通して人々の生の声を聴き、近代資本主義社会と感情、自殺について研究している。

関連記事:「感情」すらも資本化されていく時代に、「働くこと」と「癒し」を問い直す──社会学者・山田陽子

研究テーマ:「生きているという実感」が灯る瞬間の探求(和田夏実)

和田夏実(わだ・なつみ)
インタープリター。ろう者の両親のもとで手話を第一言語として育ち、視覚身体言語の研究、様々な身体性の人たちとの協働から感覚がもつメディアの可能性について模索している。LOUD AIRと共同で感覚を探るカードゲーム《Qualia》や、たばたはやと+magnetとして触手話をもとにした繋がるゲーム《LINKAGE》など、言葉と感覚の翻訳方法を探るゲームやプロジェクトを展開。東京大学大学院 先端表現情報学 博士課程在籍。同大学 総合文化研究科 研究員。2016年手話通訳士取得。《an image of…》《visual creole》 "traNslatioNs - Understanding Misunderstanding", 21_21 DESIGN SIGHT, 2020

関連記事:一人ひとりの「生きているという実感」を見つけ出すために──メディア研究者・和田夏実

4名の研究者による研究成果の発表及びアーティストによる作品の公開は、2023年秋〜冬頃を予定しています。後述の情報発信プラットフォームにてその経過報告をしていきます。ご関心のある方はぜひフォローしてください。

研究活動を支援する「アカデミックインキュベーター・プログラム」の運営

人文・社会科学文化の若手研究者を支援する「デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム」は、単年での研究資金の提供(年間100万円)にとどまらず、人文・社会科学分野の研究と社会の新しい接点を模索し、研究者の持続的な活動をサポートするプログラムです。

研究と社会の新しい接点づくりと、研究者のキャリアデザインの支援に取り組んでいきます。企業内研究者としての就職や、別に本業をもちながら研究活動を続ける在野の研究者もいますが、常勤職のポスト減少が避けられないなかで、研究活動を続けていくためには、研究と社会の新しい接点をつくり、持続可能に活動を続けていくためのモデル構築が求められていくはずです。

研究者の活動分野において、一般市民向けの講座やファンクラブの開設、企業や行政の有識者リサーチへの参加、学術誌以外への寄稿や執筆など、その特性に応じた社会へのアウトリーチと、それにひもづく収益化の検討と実行を支援します。

社会へのアウトリーチを支援するプログラムではありますが、「社会への発信活動を主体」としているわけではありません。研究活動の支援が主体であり、その活動の過程で生まれた価値の出力先や社会との接点を、デサイロが支援します。

ニュースレターでの知の発信

ニュースレタープラットフォームSubstackやSNSを利用した情報発信に取り組んでいます。研究者の皆さんの研究を「いま私たちはどんな時代を生きているのか」というデサイロの独自の視点や編集的観点から読み解き、社会へと届けていきます。

​​■ Substack
https://substack.com/home

■ Twitter
https://twitter.com/desilo_jp

​■ Instagram
https://www.instagram.com/desilo_jp/

De-Silo Publishingの運営

編集者のサポートによるアカデミアの知のアウトリーチの一環として、アカデミックインキュベーター・プログラムの採択研究者による研究成果を書籍(単著)という形にまとめる出版部門「De-Silo Publishing」を立ち上げる予定です。単著の制作に伴走するだけでなく、研究者の方々への経済的報酬がより配分される出版モデルの構築を目指します。


2.研究エコシステムを豊かにするためのプロジェクト展開

持続的な研究活動のための資金調達やキャリアデザイン、新しい研究評価の枠組みの検討まで──研究エコシステムを豊かにするためのプロジェクト組成や、調査報告レポートの作成に取り組みます。

人文・社会科学分野における課題と機会領域を探る「リサーチレポート」の制作

現在、人文・社会科学分野の知見を社会に還元しようとする動きが進んでいます。経済学の知見を生かしたコンサルティングを提供する企業や、人類学の知見から調査・マーケティング、課題発見をサポートする企業などが生まれ始めました。日本学術振興会などのファンディング・エージェンシーも、未来社会が直面するであろう諸問題に係る有意義な応答を社会に提示することを目指す研究テーマを支援するプログラムを立ち上げ、研究者とNPOや行政、産業界などの多様なセクターでのコラボレーションを促進しようとしています。

こうした背景を踏まえ、デサイロでは既存の文献調査に加えて、このようなアカデミアの内外で研究知の社会実装を試みる実践者や当該領域の専門家へのヒアリングを行うことで、人文・社会科学の知が生み出すインパクトの体系化や課題解決に向けた機会領域の提示を行います。また、制作したレポートはオープンソースとして広く公開します。

詳細:“文系学問”を取り巻く課題解決に向けた支援者を募集!

DeSciの仕組みを応用した資金調達の実験

持続的な研究活動のためには「資金調達」やファンドレイズは欠かせません。助成金も含めてさまざまな取り組みが行われてきましたが、デサイロではWeb3のテクノロジーやブロックチェーンを用いて現代科学が抱える諸問題を解決しようとする「DeSci(分散型サイエンス)」の仕組みを応用した資金調達にも取り組みます。現在はアドバイザーである濱田太陽さんとともに、その可能性について、探索しています。

関連記事:「DeSci(分散型サイエンス)」とは何か?研究資金調達のオルタナティブとなりうるムーブメント|濱田太陽


運営メンバーのご紹介

アカデミアを取り巻く諸問題への課題意識や、アカデミアの知の可能性を信じている社会起業家や編集者を中心にデサイロは立ち上がりました。

岡田弘太郎(おかだ・こうたろう)
編集者。一般社団法人デサイロ代表理事。『WIRED』日本版エディター。クリエイティブ集団「PARTY」パートナー。スタートアップを中心とした複数の企業の編集パートナー。アーティスト・なみちえのマネジメントを担当。研究者やアーティスト、クリエイター、起業家などの新しい価値をつくる人々と社会をつなげるための発信支援や、資金調達のモデル構築に取り組む。1994年東京生まれ。慶應義塾大学にてサービスデザインを専攻。「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023」選出。Twitter: @ktrokd

久能祐子(くのう・さちこ)
社会起業家、フィランソロピスト。京都大学工学部で1000人中6人の女子学生の一人として学部、修士、博士課程を修了。1982年に京都大学工学博士を取得する。在学中にミュンヘン工科大学の研究員として1年間の留学を果たす。専攻した生化学、生物化学の分野で基礎研究者を目指すが、偶然出会った発見を基に新規医薬品の創成を目指すためキャリアチェンジを決断し、以後、バイオベンチャーの共同創業者兼CEO等として、日米で研究開発、会社経営を経験する。これらの事業を通して、1994年に世界初のプロストン系緑内障治療薬を商品化に成功。その後、2006年には慢性特発性便秘症及び過敏性腸症候群治療薬-世界初のクロライドチャネルオープナーの商品化にも成功した。これら二つの医薬品は世界中で1兆円を超える大ヒット商品となった。2012年には、新型ワクチン開発を目指すVLPセラピューティクスを、2014年には、滞在型社会起業家インキュベーターHalcyon(ワシントンDC)を、2017年には、滞在型企業内起業家支援インキュベーター、フェニクシー(京都)を共同創業した。現在は、ワシントンDCで社会起業家、フィランソロピストとして活動している。京都大学理事(2022年9月30日まで)のほか、ジョンズホプキンス大学医学領域評議員、ヘンリー・L・スティムソンセンター理事、お茶の水女子大学、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の評議員も務める。2015年、フォーブス「自力で成功した女性50人」に日本人としてただ一人選ばれる。2018年ワシントンDCビジネス殿堂入り。

濱田太陽(はまだ・ひろあき)
神経科学者(博士)。シニアリサーチャー(株式会社アラヤ)。沖縄科学技術大学院大学(OIST)科学技術研究科博士課程修了。2022年より、Moonshot R&Dプログラム (目標9)「逆境の中でも前向きに生きられる社会の実現」(山田PMグループ)のPrincipal Investigatorとして前向き状態に関するモデル化に従事している。研究テーマは好奇心の神経計算メカニズムの解明や大規模神経活動の原理解明。教育やサイエンスの新たな可能性を模索している中で、分散型サイエンスに注目している。

小池真幸(こいけ・まさき)
デサイロ(De-Silo)編集パートナー。編集、執筆(自営業)。近年は主に批評誌「PLANETS」、デザインの可能性を探究するメディア「designing」、個性を探究するメディア「うにくえ」、組織の創造性を賦活する最新理論を基盤とした専門家集団・株式会社MIMIGURIなどにて、研究者やクリエイター、事業家らと協働しながら企画・編集を手がける。1993年神奈川生まれ、東京大学にて教育哲学を専攻。

石田哲大(いしだ・てつひろ)

編集者/ライター。農業・建築系など複数スタートアップでのPM/事業開発を経て独立。現在はデザイン、サスティナビリティ、ディープテック領域を中心に、企画編集・リサーチに携わる。1992年北海道十勝生まれ。国際基督教大学(ICU)にて政治思想を専攻。

栗村智弘(くりむら・ともひろ)

プロジェクトマネージャー、ライターなど。株式会社インクワイアを経て独立。複数媒体の運営に継続してかかわりながら、スポーツや音楽、ビジネスなどの分野で取材・執筆も行う。早稲田大学文学部卒。競技歴は野球、バスケットボール、空手、陸上、ハンドボール。1997年愛知生まれ、神奈川県藤沢市在住。うさぎを飼っている。2024年4月から再び進学予定。

古島海(こじま・かい)
1998年神奈川・横浜生まれ。編集者、ライター、サービスデザイナー。「ハイコンテクストと生活を繋ぐには?」をテーマに、メディアやプロジェクトの発信・運営をサポート。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科にて「閑のある生活」を提供できる都市のデザイン。

アートディレクション:畑ユリエ
写真:丸尾和穂

お問い合わせ

プログラムへのお問い合わせやコラボレーションのご相談については、下記メールアドレスにご連絡ください。

De-Silo事務局
E-Mail:contact@de-silo.xyz

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一般社団法人デサイロ(De-Silo)は、人文・社会科学領域の研究者を支援するアカデミックインキュベーターです。 「いま私たちはどんな時代を生きているのか」を研究者とともに探り、研究のなかで立ち現れるアイデアや概念の社会化を行います。財団、出版、コミュニティという3つの機能を通じて、研究資金の提供や、その知を社会に届けるサポートをしています。