「身体性の生々しさ」と「現代のテクノロジー」を対峙させ、21世紀の理想の身体を問う──アーティスト・山内祥太【DE-SILO EXPERIMENT 2024アーティスト紹介】
4名の研究者と11組のアーティストがコラボレーションして新作を制作し、「生の実感とリアリティ」に迫っていく2daysイベント「DE-SILO EXPERIMENT 2024」。同イベントにて制作/出演するアーティストを紹介する本シリーズで今回取り上げるのは、「舞姫」や「カオの惑星」などの作品を通じて、身体性の生々しさや人間らしい感情と現代のテクノロジーを対峙させてきたアーティストの山内祥太だ。
DE-SILO EXPERIMENT 2024
【4/13~14開催】小説から音楽、映像、メディアアートまで。研究者とアーティストのコラボレーションにより、研究知を起点に「生の実感とリアリティ」を探る2daysイベント。
アーティストの山内祥太は4/13に出演し、パフォーマンスを実施。また、研究者の磯野真穂も交えたトークセッションに登壇する。参加希望の方は、下記ウェブサイトから4/13(DAY1)「Performance Ticket」の購入を。
インターネットが普及した1995年以降のリアリティと共に育った山内祥太は、自己と世界との関係性や、現実と空想の裂け目といったものをさまざまな方法で明らかにしようとしてきたアーティストだ。
金沢美術工芸大学にてもともと彫刻を専攻し、東京藝術大学映像研究科メディア映像専攻を修了した山内は、彫刻、映像、VR、パフォーマンスなど多様な表現メディアを通じて、身体性の生々しさや人間らしい感情と現代のテクノロジーを対峙させた作品を制作してきた。
例えば、「TERRADA ART AWARD 2021」ファイナリスト展で初披露され、その後オーストリアのリンツ市で開催される「アルスエレクトロニカフェスティバル2022」でも上演された「舞姫」は、人間とテクノロジーの恋愛模様をインスタレーションとして描いた作品だ。
ディスプレイ上に映し出されたゴリラが、実際の舞踏家の動きと同期しながら自らの皮膚を脱ぎ捨てていくという内容であり、これは「映像に映っている巨大な肌色のゴリラと人間がモーションキャプチャーというデジタルのコミュニケーションを通して、疑似的なSEXをする作品」だと、山内はインタビューにて語っている。
また、2022年から2023年にかけて森美術館で展示された作品「カオの惑星」は、リアルタイムに変化していくオンラインゲーム型の映像インスタレーションだ。
展示会場内のタブレット端末上やウェブサイトでは下記のような心理テストが表示され、いくつかの質問に答えていく。
未来の私たちの身体はどうなる?
性別を超えたアイデンティティーが一般化し始める。
AIと人間が交配することによって生まれる生命体が現れる。
人間は個を捨てて、集合的な意思と身体を共有する。
その結果、アバターのような「自分のカオ(顔)」が粘土のように形を変えながら生成される。それがサーバーにアップロードされると、さまざまなカオが集まってできた作品上の惑星に「自分のカオ」が加わり、互いに反応し合うことで多様なドラマが生まるという作品だ。
「脱毛が人権として確立された未来」におけるレジスタンス
一連の作品を通じて、身体性の生々しさを問うてきた山内が、「DE-SILO EXPERIMENT 2024」にて応答するのが、人類学者・磯野真穂による研究「21世紀の理想の身体」だ。
21世紀の理想の身体
人間は、自分の身体に必ず手を入れる。その理由は手を入れると安心するから。そのままだと不安だからだ。「ありのまま」といった言葉が近年もてはやされているが、現状はその逆である。毛髪再生医療や美容整形、医療痩身といった言葉に代表されるように、時に医療の手も借りながら、私たちは自分の身体を加工する。加えて、身体のデジタル化を容易にしたSNSやメタバースなどのIT技術の進化は、他者に見せるための身体変工の幅を広げ、かつ容易にした。しかしここまできても、身体変工はとどまることがない。あるひとつの問題が解決されても、次なる問題が発見・発掘され、私たちはその修正に追われるからだ。本プロジェクトでは、身体変工を取り巻く技術、情報、さらには「問題のある身体」を「理想の身体」に作り変えたいという欲望を支える分類思考を中核概念とし、多種多様な身体変工を俯瞰的に捉える。その作業を通じ、21世紀の理想の身体とその裏にある不安、さらにはその身体に賭ける希望のかたちを浮かび上がらせてみたい。
参考記事:“ありのまま“ではいられない私たち。「理想の身体」への欲望から見えてくるもの──人類学者・磯野真穂
本テーマに関する人類学研究をベースに、磯野自身が「身体の未来」を提示する2編の小説を制作。そのひとつである「HRR」という小説は、脱毛が人権として確立される未来を想像したもの。
この「HRR」に依拠しつつ、山内は2022年に個展「愛とユーモア」にて展示した作品「Tina」からの発展も取り入れるかたちで、新作「-HRR- OBSESSIONIZM」の展示とパフォーマンス、そして磯野とのトークセッションを行う。
山内祥太によるパフォーマンス&トークセッションに参加したい方は、下記のウェブサイトから4/13(DAY1)の「Performance Ticket」を選択し、購入してほしい。
【DE-SILO EXPERIMENT 2024のチケット購入はこちら】
山内祥太
アーティスト。1992年生まれ。自己と世界との関係性や、現実と空想の裂け目といったものをさまざまな方法で明らかにしようと試みてきた。映像、彫刻、VR、パフォーマンスなど表現メディアは多様で、身体性の生々しさや人間らしい感情と現代のテクノロジーを対峙させ、作品制作を行う。主な個展に「第二のテクスチュア(感触)」GalleryTOH(東京、2021年)、「MAMプロジェクト030×MAMデジタル:カオの惑星」森美術館(東京、2022年)「メディウムとディメンション:Apparition」青山目黒(東京、2023)など。主なグループ展に「六本木クロッシング2019展:つないでみる」森美術館(東京、2019年)、「鈴木大拙展 Life=Zen=Art」ワタリウム美術館(東京、2022年)、「アルスエレクトロニカフェスティバル 2022」(オーストリア、リンツ、2022年)「Kyoto Experiment 2023」THEATRE E9 KYOTO(京都、2023)など。 主な受賞歴に「TERRADA ART AWARD 2021」金島隆弘賞オーディエンス賞、「第25回文化庁メディア芸術祭」アート部門優秀賞など。
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