【2024年9月刊】人文学からの都市再開発問い直し、二〇世紀フェミニズムの金字塔全訳、〈迂回する経済〉の都市論……デサイロが注目したい人文・社会科学の新刊15冊
「いま私たちはどんな時代を生きているのか」──人文・社会科学領域の研究者とともにこの問いを探り、研究のなかで立ち現れるアイデアや概念の社会化を目指すアカデミックインキュベーター「デサイロ(De-Silo)」。
2024年9月に刊行の人文・社会科学領域の新刊書の中から、デサイロとして注目したい15冊をピックアップしました。
気になるタイトルがあれば、読書リストにぜひ加えてみてください。
1.アートベース・リサーチ・ハンドブック
概要(版元ウェブサイトより引用)
創造的なアートの手法を活用し研究課題に取り組む実践が、学問領域を超えて進展しつつある。様々な表現形式を駆使した実例をもとにその哲学から方法、評価までを展望する。
著者
パトリシア・リーヴィー(Patricia Leavy)(著/文 | 編集)
独立系社会学者で、アメリカ・マサチューセッツ州イーストンにあるストーンヒルカレッジの社会学・犯罪学の元学科長・教授。同校ジェンダー研究科の創設時のディレクターも務めた。単著・共著書、編集書は30冊以上にもわたり、10のブックシリーズを創刊し編集を担当している。公共にひらかれた研究に対する貢献はメディアでも注目され、アメリカ全国のニュースメディアから頻繁に取材を受けている。『The Huffington Post』『The Creativity Post』『We Are the Real Deal』などのオンラインメディアにも記事を定期的に掲載。また、雑誌『Art/Research International』の共同創設者および共同編集者でもある。
岸 磨貴子(監修 | 翻訳)
明治大学国際日本学部教授。関西大学大学院博士課程修了(情報学)。専門は、教育メディア研究・学習環境デザイン。国内では、主にICT教育環境デザイン、アートを取り入れた探究学習プロセスの研究、多文化共生のための教育プログラム開発、海外では、アラブ諸国を中心に移民・難民の教育学習支援やメンタルケアに取り組んでいる。その具体的なアプローチとして、映像や応用演劇やビジュアルアートなどのアート手法を活用。パフォーマンス・アプローチ心理学の理論と実践を開発する米国Eastside研究所および社会構成主義の国際団体Taos研究所のアソシエイト。
川島 裕子(監修 | 翻訳)
関西大学総合情報学部准教授。トロント大学オンタリオ教育研究所博士課程修了(Ph.D.)。専門は、応用演劇・教育メディア研究。北海道教育大学にて「教師に対する演劇的手法によるコミュニケーション教育」プロジェクトに従事したのち、大学での初年次教育や多文化共生教育プログラムの実践研究に取り組む。身体性や実践知に重点をおいた演劇パフォーマンスを切り口に、ジェンダーや人種などの文化的差異の越境体験や、人々の情動的コミュニケーションに着目した、多元的な関係性を創出する学習プログラムのデザインについて研究。現在は、ドキュメンタリー演劇や高校探究における演劇実践にアーティストと連携し取り組んでいる。
荒川 歩(監修 | 翻訳)
武蔵野美術大学造形構想学部教授。同志社大学大学院文学研究科博士課程修了(心理学)。専門は、質的研究法ほか。立命館大学人間科学研究所、名古屋大学大学院法学研究科、武蔵野美術大学教養文化研究室等を経て、現職。美術大学において、アート、デザインにとっての質的探究の意味の先鋭化とその教育の可能性を探っている。本人はアートもデザインも全然できない。だがそれが強みだと本人は言い張る。ゼミ生の研究手法は、アート制作、デザイン表現、論文と多様なため、それぞれの探究プロセス方法を媒介として、自身の想像力の限界の向こう側へどのように到達するかを中心に、各自の可能性を最大化する支援に励んでいる。
三代 純平(監修 | 翻訳)
武蔵野美術大学造形学部教授。早稲田大学大学院日本語教育研究科博士課程修了(日本語教育学)。専門は、日本語教育、ライフストーリー研究、実践研究。韓国の仁川外国語高校、徳山大学等を経て、現職。留学生やサハリン残留日本人永住帰国者などの移動の経験についてライフストーリー研究を行い、ことばの学びとアイデンティティ、社会の関係を探究する。また、ライフストーリー研究の成果を基に、社会参加、あるいは社会変革を目的とした日本語教育の実践研究に取り組む。東京都日野市との連携による親子の多文化交流イベント企画やカシオ計算機との産学連携によるインクルーシブ社会を目指した活動の取材など、プロジェクト型の日本語教育を実践する。
発売日
2024年9月5日
版元
福村出版
2.環境と運動
概要(版元ウェブサイトより引用)
環境社会学からみる地域と地球の持続可能性
環境からの問いかけと、応答する社会運動。試行を続ける市民社会の過去から未来へ。
地域の未来は、地球の未来は、はたして持続可能か。気候危機をはじめとする喫緊のさまざまな環境問題が人類全体に重く問いかけている。社会運動は市民社会の〈声〉であり、社会問題のすぐれた社会的表現であるとともに、社会変革の原動力でもある。本書は、環境研究や社会運動研究の国内外の理論的・実践的蓄積を踏まえ、そこに潜勢力をもった創造的な営為を見出し、意味づけをはかる社会学的な〈まなざし〉を提示する。
著者
金子 勇 (著/文)
北海道大学名誉教授
吉原 直樹 (著/文)
東北大学名誉教授
長谷川 公一(編集)
2024年8月現在
東北大学名誉教授,尚絅学院大学特任教授
発売日
2024年9月9日
版元
ミネルヴァ書房
3.都市の緑は誰のものか 人文学から再開発を問う
概要(版元ウェブサイトより引用)
都市のあちらこちらで再開発の計画が持ち上がり、少なからず反対の声があがっている。社会科学や自然科学の研究者は問題点を指摘するなど活発に発言しているが、人文学の研究者からの発言はあまり表に出ていない。都市は人間が生活する場であり、そこには暮らしの歴史や物語がある。そう考えると、歴史学や倫理学、美学など人文学の研究者も何か語ることができるのではないか。そのような思いから、2023年6月に、神宮外苑再開発問題をめぐるオンラインセミナーが開かれた。
本書ではそのときの登壇者にあらたな執筆者をくわえ、10章構成で、それぞれの専門分野から、都市の自然と人間との関わりについて論じた。関係的価値、グリーンインフラ、将来世代への責任などのキーワードを軸に、具体的な事例を参照しながら幅広いテーマを扱っている。都市に生きる私たちにとって、持続可能な都市とは何かを考える一助となるだろう。
著者
太田和彦(編著)
南山大学総合政策学部准教授。東京農工大学連合農学研究科修了。博士(農学)。専門は環境倫理学、食農倫理学、シリアスゲーム。翻訳書に『〈土〉という精神』(ポール・B・トンプソン、農林統計出版、2017年)、『食農倫理学の長い旅』(ポール・B・トンプソン、勁草書房、2021年)、『LIMITS』(ヨルゴス・カリス 、大月書店、2022年)がある。アジア太平洋圏食農倫理会議、第4回オンライン大会、第5回名古屋大会主催。
吉永明弘 (編著)
法政大学人間環境学部教授。千葉大学大学院社会文化科学研究科修了。博士(学術)。専門は環境倫理学。著書に『都市の環境倫理』(勁草書房、2014年)、『ブックガイド環境倫理』(勁草書房、2017年)、 『はじめて学ぶ環境倫理』(ちくまプリマ―新書、2021年)、編著に『未来の環境倫理学』(勁草書房、2018年)、『環境倫理学(3STEPシリーズ)』(昭和堂、2020年)、 『技術哲学(3STEPシリーズ)』(昭和堂、2024年)がある。
北條勝貴 (著/文)
上智大学教授。専門は東アジア環境文化史、パブリック・ヒストリー。主要著書に『環境と心性の文化史』上・下(共編著、勉誠出版、2003年)、『パブリック・ヒストリー入門』(共編著、勉誠出版、2019年)、『療法としての歴史〈知〉』(責任編集、森話社、2020年)などがある。
鬼頭秀一(著/文)
1951年名古屋市生まれ。東京大学大学院理学系研究科(科学史・科学基礎論)博士課程単位取得退学、東京大学大学院新領域創成科学研究家教授を経て、現在東京大学名誉教授。著書に、『自然保護を問いなおす――環境倫理とネットワーク』(ちくま新書、1996年)、『環境倫理学』(共編著、東京大学出版会、2009年)など。
穂鷹知美(著/文)
学習院大学人文科学研究科博士後期課程修了、博士(史学)。日本学術振興会特別研究員(環境文化史)を経て、2006年よりスイス在住ライター。主な著書・論文に『都市と緑―近代ドイツの緑化文化』(共著、山川出版社、2004年)、「ヨーロッパにおけるシェアリングエコノミーのこれまでの展開と今後の展望」『季刊 個人金融』(2020年夏号)、「ネットワーク執行法でネット上の発言はどう変わったか――デジタル時代のメディアとコミュニケーション」(『ドイツ研究』56巻、2022年)。
ルプレヒト・クリストフ (著/文)
愛媛大学社会共創学部環境デザイン学科・准教授、一般社団法人FEAST理事。地理学・都市計画・生態学博士(2015年、オーストラリア・グリフィス大学)。主な著書に『みんなでつくる「いただいます」』(共編著、昭和堂、2021年)、「Multispecies Cities: Solarpunk Urban Futuress」(共著、World Weaver Press、2021年)「Solarpunk Creatures」(共著、World Weaver Press、2024年)。
青田麻未(著/文)
群馬県立女子大学文学部専任講師。博士(文学)。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。日本学術振興会特別研究員PD(成城大学)を経て、現職。主な著書に『環境を批評する 英米系環境美学の展開』(春風社、2020年)、『「ふつうの暮らし」を美学する 家から考える「日常美学」入門』(光文社新書、2024年)などがある。
高橋綾子(著/文)
兵庫県立大学環境人間学部教授。
発売日
2024年9月10日
版元
ヘウレーカ
4.新版 〈海賊版〉の思想: 18世紀英国の永久コピーライト闘争
概要(版元ウェブサイトより引用)
およそ250年前、永久の「著作権」をめぐる裁判が起こった。権利を永久に独占しようとしたロンドンの大書店主たちに厳然と挑み、「パブリック・ドメイン」を勝ち取ったのは、エジンバラの「海賊出版者」アレクサンダー・ドナルドソンだった。デジタル技術の進歩、生成AIなど、著作権をめぐる状況が急速に変わる時代の中で、保護と利用のバランスについてどう考えるべきか? 18世紀イギリスの法廷闘争を通じて、文化の発展と著作権法の相関性を史的に考察する。 2007年のみすず書房版に図版を大幅に追加し、さらに定本刊行以降の著作権をめぐる動向を解説した「新版あとがき」を付す。
著者
山田奨治 (著)
1963年、大阪市生まれ。国際日本文化研究センター教授、総合研究大学院大学教授。専門は情報学と文化交流史。筑波大学大学院(修士課程医科学研究科)修了。京都大学博士(工学)。(株)日本アイ・ビー・エム、筑波技術短期大学助手などを経て現職。著書:『禅という名の日本丸』(弘文堂、2005)、『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』(人文書院、2011)、『東京ブギウギと鈴木大拙』(人文書院、2015)、『著作権は文化を発展させるのかーー人権と文化コモンズ』(人文書院、2021)ほか多数。
発売日
2024年9月10日
版元
皓星社
5.エスノグラフィ入門
概要(版元ウェブサイトより引用)
「苦しみとともに生きる人びとが直面している世界を表し出す。そこにエスノグラフィのもっとも良質な成果が宿るのです。」
『タイミングの社会学』(紀伊國屋じんぶん大賞2024第2位)の著者による、待望の入門書。
生活を書く、それがエスノグラフィの特徴です。そして、もっとも良質なエスノグラフィの成果は、 苦しみとともに生きる人びとが直面している世界を表し出すところに宿るものです。もともと人類学で発展したこの手法は、シカゴ学派を拠点に、 社会学の分野でも広がっていきました。本書では、5つのキーワードに沿って、そのおもしろさを解説していきます。予備知識はいりません。ぜひ、その魅力を体感してください。
著者
石岡 丈昇 (本文)
1977年、岡山市生まれ。専門は社会学/身体文化論。日本大学文理学部社会学科教授。フィリピン・マニラを主な事例地として、社会学/身体文化論の研究をおこなう。著作に『タイミングの社会学──ディテールを書くエスノグラフィー』(青土社、2023年、紀伊國屋じんぶん大賞2024第2位)、『ローカルボクサーと貧困世界──マニラのボクシングジムにみる身体文化』(世界思想社、2012年、第12回日本社会学会奨励賞。2024年に増補新版)、共著に『質的社会調査の方法──他者の合理性の理解社会学』(岸政彦・丸山里美との共著、有斐閣、2016年)など。
発売日
2024年9月11日
版元
筑摩書房
6.東大ファッション論集中講義
概要(版元ウェブサイトより引用)
東京大学文学部史上初の講義を書籍化!
教養としてのファッション
ファッションとは何か? 衣服とは?
12のテーマを通じて文化や芸術としてのファッションを学び、歴史と未来に問う。
東大生の反響を呼んだ一度きりの特別講義がその熱を凝縮した一冊となってよみがえる。
著者
平芳 裕子(本文)
神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授。1972年東京都生まれ。東京藝術大学美術学部芸術学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。専門は表象文化論、ファッション文化論。主な著作に『まなざしの装置――ファッションと近代アメリカ』(青土社)、『日本ファッションの150年――明治から現代まで』(吉川弘文館・近刊)などがある。
発売日
2024年9月11日
版元
筑摩書房
7.歴史学はこう考える
概要(版元ウェブサイトより引用)
史料とは何か? 解釈が複数になるのはなぜ? 安易な議論に振り回されないために、歴史家が築いてきたこれらの理屈を学べば、歴史の解像度がもっとあがる!
著者
松沢 裕作 (本文)
1976年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程中退.博士(文学)。東京大学史料編纂所助手・助教、専修大学経済学部准教授をへて、慶應義塾大学経済学部教授。専門は日本近代史、史学史。著書に『明治地方自治体制の起源』(東京大学出版会)、『重野安繹と久米邦武』(山川出版社)、『自由民権運動』(岩波新書)、『日本近代村落の起源』(岩波書店)、『日本近・現代史研究入門』(岩波書店、共編)などがある。
発売日
2024年9月11日
版元
筑摩書房
8.マテリアル・ガールズ:フェミニズムにとって現実はなぜ重要か
概要(版元ウェブサイトより引用)
ジェンダーアイデンティティとは何か ——
混迷をきわめるジェンダー問題を分析し、 平等な社会のための現実的な解決策を提示する
多様な「性」を尊重する社会づくりが世界的に進むなかで、それに合わせた法制度などが整備されつつある。その一方で、複雑化した「ジェンダー概念」への理解が追いつかず、社会的混乱を来してもいる。本書では、生物学的性別よりもジェンダーを優先する、いわゆる「ジェンダーアイデンティティ理論」が生まれた思想的背景を、ボーヴォワール、ジュディス・バトラーなどを振り返りながら丁寧に説明し、「ジェンダーアイデンティティ」とは何かを明らかにする。さらに、女性専用スペース、医療、政治、データ収集など、さまざまな文脈において生物学的性別の重要性を提示することを通して、「誰もが生きやすい社会」の実現に向けた現実的な解決を試みる。
著者
キャスリン・ストック(著/文)
1972 年生まれ。元イギリス・サセックス大学教授。オクスフォード大学で哲学の学士号を、セント・アンドリュース大学で修士号、リーズ大学で博士号を取得。専門は、美学、フィクションの哲学。特にジェンダーと性別(セックス)に焦点を当てた研究が注目を集めている。ジェンダーと性別の複雑な問題に対する哲学的研究は、フェミニズムとジェンダー理論の分野で重要な貢献をしている。著書に、Only Imagine: Fiction, Interpretation and Imagination, OUP, 2017 など。
中里見博(翻訳)
大阪電気通信大学教授。専門は憲法、ジェンダー法学。主要著作に、『ポルノグラフィと性暴力──新たな法規制を求めて』(明石書店、2007 年)他。翻訳に、キャサリン・マッキノン、アンドレア・ドウォーキン『ポルノグラフィと性差別』(共訳、青木書店、2002 年)、キャサリン・マッキノン『女の生、男の法』上下(共訳、岩波書店、2011 年)。
千田有紀(解説)
武蔵大学社会学部教授。専門はジェンダーの社会学、現代社会論、家族社会学、教育社会学。
主要著作に、『日本型近代家族──どこから来てどこへ行くのか』(勁草書房、2011 年)、『女性学/男性学』(岩波書店、2009 年)、共著に、千田有紀・中西祐子・青山薫『ジェンダー論をつかむ』(有斐閣、2013 年)、翻訳に、シーラ・ジェフリーズ『美とミソジニー』(共訳、 慶應義塾大学出版会、2022 年)他。
発売日
2024年9月18日
版元
慶應義塾大学出版会
9.女らしさの神話(上)
概要(版元ウェブサイトより引用)
幸福なはずのアメリカの主婦たちに広がる正体不明の不安やいらだち。その「名前のない問題」の原因は、結婚して夫や子どもの面倒をみることが幸せだとする「女らしさの神話」にあるのではないか。神話がいかにして強固になったかを解き明かし、その解体を唱えた二〇世紀フェミニズムの金字塔。一九六三年の著作の全訳。
著者
ベティ・フリーダン (著/文)
1921-2006.アメリカのジャーナリスト,作家。本書の刊行が戦後の第二波フェミニズム運動のきっかけとなったと言われる。全米女性機構(NOW)を創設するなど、フェミニズム運動を主導した。
荻野 美穂(翻訳)
大阪大学名誉教授。女性史・ジェンダー研究。著書に『中絶論争とアメリカ社会』(岩波書店)、『ジェンダー化される身体』(勁草書房)、『「家族計画」への道』(岩波書店)、『女のからだ フェミニズム以後』(岩波新書)など。訳書に、ジョーン・W. スコット『ジェンダーと歴史学』(平凡社ライブラリー)など。
発売日
2024年9月18日
版元
岩波書店
10.スマートシティとキノコとブッダ 人間中心「ではない」デザインの思考法
概要(版元ウェブサイトより引用)
発見的・開眼的に思考/試行せよ。
未来の都市像「スマートシティ」は、どのようにデザインされ、どのように人々に生きられるのか? 本書では、その構想のために「人類とは異なる知性の象徴としてのキノコ」と「人類を超越した知性の象徴としてのブッダ」を召喚。現在の人間と都市と社会を相対化し、人間中心「ではない」アプローチで世界を捉え直す探求の道を、地中と宇宙から照らし出します。
本書が提唱する思考法のポイントは、東洋/日本的な知のあり方である「無分別智」を身につけ、「今ここ、目の前にあるモノやコトの価値を新たに見出し(発見的)」、「その価値を別のところへ結びつけ、さらなる価値を生み出す(開眼的)」こと。さまざまな分野の先駆者たちとの対話を軸に、人間中心主義を超えるデザインのための理論、実例、練習問題を展開する一冊です。
著者
中西泰人(著/文)
1970年大阪生まれ。慶應義塾大学環境情報学部教授。ヒューマンコンピュータインラタクション、エクスペリエンスデザイン、創造活動支援の研究と実践を行う。著書・訳書に『UnityとROS2で実践するロボットプログラミング:ロボットUI/UXの拡張』『Processing:ビジュアルデザイナーとアーティストのためのプログラミング入門』『アイデアキャンプ:創造する時代の働き方』『社会イノベーションの方法と実践』など。
本江正茂(著/文)
1966年富山生まれ。東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻准教授、宮城大学事業構想学群教授(兼務)。情報技術が拓く都市と建築の新しい使い方をデザインし、人々が持てる力を存分に発揮しあえる環境をつくりだすべく研究中。主なデザイン作品に「山元町震災遺構中浜小学校」「せんだい3.11メモリアル交流館」。訳書に『シティ・オブ・ビット』、共著に『プロジェクトブック』『OfficeUrbanism』など。
石川初(著/文)
慶應義塾大学環境情報学部教授。博士(学術)。ランドスケープアーキテクト。京都府宇治市生まれ。東京農業大学農学部造園学科卒業。鹿島建設建築設計本部、株式会社ランドスケープデザイン設計部を経て2015年より現職。『思考としてのランドスケープ──地上学への誘い』(LIXIL出版、2018年)にて日本造園学会賞受賞。ランドスケープの思考をさまざまなデザインに応用する研究・教育に携わっている。
発売日
2024年9月19日
版元
ビー・エヌ・エヌ
11.在野と独学の近代-ダーウィン、マルクスから南方熊楠、牧野富太郎まで
概要(版元ウェブサイトより引用)
近代に入り、大学などの研究機関が整備される中、在野で独学に打ち込むという道を歩んだひとびともいた――。
本書は、柳田国男に「日本人の可能性の極限」と評された南方熊楠を軸とし、ダーウィン、マルクスから福来友吉、牧野富太郎、三田村鳶魚ら、英日の独学者の姿を描き出す。さらに知のインフラとしての郵便、辞書、雑誌、図書館などにも着目。
近代の独学者たちの営みは、現在の「知」をも照らすだろう。
著者
志村真幸(著/文)
慶應義塾大学文学部准教授,南方熊楠顕彰会理事.1977年神奈川県生まれ.慶應義塾大学文学部卒業.京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程単位取得退学.博士(人間・環境学).
著書『日本犬の誕生』(勉誠出版,2017年),『南方熊楠のロンドン』(慶應義塾大学出版会,2020年/サントリー学芸賞〔社会・風俗部門〕,井筒俊彦学術賞),『熊楠と幽霊』(集英社インターナショナル新書,2021年),『未完の天才 南方熊楠』(講談社現代新書,2023年).
編著『異端者たちのイギリス』(共和国,2016年),『動物たちの日本近代』(ナカニシヤ出版,2023年),『南方熊楠の生物曼荼羅 生きとし生けるものへの視線』(三弥井書店,2024年)ほか.
発売日
2024年9月19日
版元
中央公論新社
12.〈迂回する経済〉の都市論: 都市の主役の逆転から生まれるパブリックライフ
概要(版元ウェブサイトより引用)
企業が追求する利益直結型開発と
人々が望むパブリックライフは
両立できるか?
企業が利益直結型の開発を追求する一方で、私たちは余白的共用空間に日常の豊かさを求める。経済と公共のジレンマに揺れる都市に、儲けに価値をおかない空間やサービスが最終的に利益をもたらすという逆説的思考=迂回する経済を実装しよう。再開発地、盛り場、郊外住宅地、学生街のフィールドサーベイから切りひらく新境地。
著者
吉江 俊(著/文)
早稲田大学リサーチイノベーションセンター研究院講師。1990年生まれ。2013年早稲田大学建築学科卒業、2015年同大学院創造理工学研究科修了。日本学術振興会特別研究員、ミュンヘン大学訪問研究員、早稲田大学建築学科講師を経て現職。2019年民間住宅開発と地域像の変容に関する研究で博士(工学、早稲田大学)。宮城県加美町や佐賀県多久市のコミュニティ計画作成、民間企業との共同研究や、早稲田大学キャンパスマスタープラン作成、東京都現代美術館「吉阪隆正展」企画監修などに携わる。著書に『住宅をめぐる〈欲望〉の都市論―民間都市開発の台頭と住環境の変容』(単著、2023年)、『クリティカル・ワード 現代建築―社会を映し出す建築の100年史』(共著、2022年)など多数。
発売日
2024年9月22日
版元
学芸出版社
13. 2.5次元学入門
概要(版元ウェブサイトより引用)
そこに立つのは人間か、キャラクターか
「2.5次元」――アニメ、マンガ、ゲームといった2次元のコンテンツを人間の身体という3次元において実現したもの。舞台やミュージカル、ライブコンサートなどを通して多くのファンによって見出されてきた2.5次元とはいかなる文化であるのか。多様な展開をみせるその現在形をさまざまな学問的な知見から探求する、これからの2.5次元文化研究のための画期にして、基本書。
著者
須川亜紀子
発売日
2024年9月24日
版元
青土社
14.オタク文化とフェミニズム
概要(版元ウェブサイトより引用)
わたしたちの消費は「正しい」のだろうか
金銭と時間の投資、心身の過剰な労働、性的消費との葛藤…、わたしたちと「推している」対象のあいだにはさまざまな問題が浮かびあがってくる。しかし、その活動に喜びが見出されることは間違いない。喜びと苦しさとが入り混じるその実践をすくい取りながら、「推し活」社会の現在地を描きだす。「推し活」論の決定版!
エンターテインメントをめぐるモヤモヤを考えるための補助線となる書。
著者
田中東子(著者)
1972年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(政治学)。現在、東京大学大学院情報学環教授。専門は、メディア文化論、第三波以降のフェミニズム、カルチュラル・スタディーズ。単著に『メディア文化とジェンダーの政治学』(世界思想社)。共著・編著に『ガールズ・メディア・スタディーズ』(北樹出版)、『ジェンダーで学ぶメディア論』(世界思想社)など。共訳書にポール・ギルロイ『ユニオンジャックに黒はない』(月曜社)、アンジェラ・マクロビー『フェミニズムとレジリエンスの政治』(青土社)などがある。
発売日
2024年9月24日
版元
青土社
15.奴隷たちの秘密の薬—18世紀大西洋世界の医療と無知学
概要(版元ウェブサイトより引用)
カリブ海植民地医学のグローバルヒストリー
医学が「科学」になろうとしていた18世紀。
カリブ海植民地は熱帯医学のフィールドワークの場となった。
植物を使いこなし、独自の治療法を編み出した奴隷や先住民。
彼らの医療知識を評価する一方で、その秘密を開示させようとするヨーロッパ人医師。
知をめぐる交流と葛藤、搾取と抵抗の相互関係を科学史家ロンダ・シービンガーが分析する。
著者
ロンダ シービンガー (著/文)
スタンフォード大学歴史学科ジョン・L・ハインズ科学史教授。「科学と技術におけるジェンダー」研究の国際的な先駆者であり、国連、欧州議会、多くの研究助成機関で講演活動を展開。アレキサンダー・フンボルト財団からフンボルト賞を受賞(1999–2000:歴史部門で全米初の女性)、米国のグッゲンハイム・フェローシップなど栄誉ある賞を多数受賞。ロバート・プロクター氏との共著でAgnotology(Stanford University Press, 2008)がある。
初の単著『科学史から消された女性たち』に次ぐ2作目『女性を弄ぶ博物学』で国際科学社会学会・第2回フレック賞受賞。3作目『ジェンダーは科学を変える!?』では理工系分野の女性研究者をいかに育成するかを論じ、4作目『植物と帝国』では文化的・社会的文脈で抹殺されてきた知識の研究(アグノトロジー)の重要性を説き、3つの国際的な賞を受賞。
近年では性差に配慮した革新「ジェンダード・イノベーション」を提唱し、欧州委員会や米国衛生研究所と協力してプロジェクトを展開している。
小川 眞里子(翻訳)
三重大学名誉教授(科学史・科学論)。(公財)東海ジェンダー研究所理事。博士[学術](東京大学 2012年)。著書『フェミニズムと科学/技術』(岩波書店 2001年)、『甦るダーウィン』(岩波書店 2003年)、『病原菌と国家』(名古屋大学出版会 2016年)。共編著『女性研究者支援の国際比較』(明石書店 2021年)、『ジェンダード・イノベーションの可能性』(明石書店 2024年)。共著『環境危機と現代文明』(朝倉書店1996年、新装版2008年)、『科学技術と社会』(東京大学出版会 2020年)、『科学と倫理』(中央公論新社 2021年)など。共訳書にシービンガーの主要著作四冊はじめ、ボウラー『環境科学の歴史』I・II(朝倉書店 2002年)など。『病原菌と国家』で日本科学史学会学術賞。令和四年度男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰など。
鶴田 想人(翻訳)
大阪大学社会技術共創研究センター特任研究員。東京大学大学院総合文化研究科(科学史・科学哲学研究室)博士課程単位取得退学。修士(学術)。専門は科学史・科学論。日本学術振興会特別研究員(DC1)を経て現職。論考「無知学(アグノトロジー)の現在」(『現代思想』 2023年6月号)、「植物の名を正す」(『ユリイカ』 2023年4月号)など。共編著『ジェンダード・イノベーションの可能性』(明石書店 2024年)、『無知学への招待』(明石書店 近刊)、翻訳にプロクター「無知学」(『思想』 2023年9月号)など。
並河 葉子 (翻訳)
神戸市外国語大学外国語学部教授。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程中退、修士(文学)。専攻:イギリス帝国史、ジェンダー史。主要論文に共著「奴隷貿易・奴隷制廃止と「自由」」(『国民国家と帝国』岩波講座世界史16巻岩波書店 2023年)、「反奴隷制運動の情報ネットワークとメディア戦略」(『情報の世界史』第六巻ミネルヴァ書房 2018年)。共訳書にレヴァイン『イギリス帝国史―移民・ジェンダー・植民地へのまなざしから―』(昭和堂 2021年)、共同監訳にシェリダン、シールズ編『イギリス宗教史』(法政大学出版会 2014年)。
発売日
2024年9月27日
版元
工作舎
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