【2024年3月刊】ケアリング・デモクラシー、トランスジェンダーと性別変更、アンチ・ジオポリティクス……デサイロが注目したい人文・社会科学の新刊10冊
「いま私たちはどんな時代を生きているのか」──人文・社会科学領域の研究者とともにこの問いを探り、研究のなかで立ち現れるアイデアや概念の社会化を目指すアカデミックインキュベーター「デサイロ(De-Silo)」。
2024年3月に刊行の人文・社会科学領域の新刊書の中から、デサイロとして注目したい10冊をピックアップしました。
気になるタイトルがあれば、読書リストにぜひ加えてみてください。
1.トランスジェンダーと性別変更: これまでとこれから (岩波ブックレット 1090)
概要(版元ウェブサイトより引用)
生殖不能要件は憲法違反――長く放置されてきた人権侵害を是正するため、「性同一性障害特例法」の改正が求められている。いま私たちに必要な基礎知識とは何なのか。特例法が制定された背景から、法・医学・国際人権の知見まで、高井ゆと里、野宮亜紀、立石結夏、谷口洋幸、中塚幹也らエキスパートが解説する。
著者
【編者】
高井ゆと里(たかい・ゆとり)
群馬大学情報学部准教授.哲学・倫理学.周司あきらとの共著に『トランスジェンダー入門』(集英社新書),訳書にショーン・フェイ『トランスジェンダー問題』(明石書店).
【執筆】
野宮亜紀(のみや・あき)
LGBT法連合会顧問.神奈川大学非常勤講師.共著に『プロブレム Q&A 性同一性障害って何?』(緑風出版).
立石結夏(たていし・ゆか)
弁護士.共著に『詳解 LGBT 企業法務』(青林書院).
谷口洋幸(たにぐち・ひろゆき)
青山学院大学法学部教授.国際人権法.『性的マイノリティと国際人権法』(日本加除出版)
中塚幹也(なかつか・みきや)
岡山大学ジェンダークリニック医師,岡山大学学術研究院保健学域教授.『個「性」ってなんだろう?』(あかね書房).Yahoo!ニュースエキスパート「生殖とジェンダーの今」
発売日
2024年3月7日
版元
岩波書店
2.作田啓一 生成の社会学
概要(版元ウェブサイトより引用)
戦後日本の社会学を牽引した作田啓一。彼は人間の非合理性/リアルを語り得る「もう一つの社会学」を求めた。バーチャルとの区別が失われた世界に必要なのは、生きている実感を深部で把握して分析しうる〈最深の理論〉である。文学から社会学は何を学びうるのか? 価値の生成、羞恥の連帯、溶解体験、〈リアル〉とは何か? エゴの相克と分断を超える契機はどこにあるのか?〈超近代〉の展望をひらく希望の思考。
著者
岡崎宏樹 (おかざき ひろき)
1968年兵庫県生まれ。神戸学院大学現代社会学部教授。京都大学文学部哲学科社会学専攻卒業、京都大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学、京都大学博士(文学)。専門は理論社会学、文化社会学。
主な著作に、『バタイユからの社会学―至高性、交流、剝き出しの生』(関西学院大学出版会、2020年)、『作田啓一 VS. 見田宗介』(分担執筆、弘文堂、2016年)、『戦後日本の社会意識論―ある社会学的想像力の系譜』(分担執筆、有斐閣、2023年)などがある。
発売日
2024年3月11日
版元
京都大学学術出版会
3.現代民俗学入門: 身近な風習の秘密を解き明かす (創元ビジュアル教養+α)
概要(版元ウェブサイトより引用)
なぜトイレにはスリッパがあるの?
火葬場で箸わたしをするのはどうして?
そのヒントは、民俗学にありました。民俗学の知識を使って、ネット上の美談からLGBTQIA+まで、現在の世の中の各所に潜むいろいろな疑問や話題を取り上げ、豊富な図解とともにわかりやすく解説します。民俗学は現代社会でも使える、生きた学問だった!
著者
島村 恭則(シマムラ タカノリ)(編)
関西学院大学社会学部長、教授。世界民俗学研究センター長。博士(文学)。専門は、現代民俗学、民俗学理論。1967年東京生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学。著書に『みんなの民俗学』(平凡社)、『民俗学を生きる』(晃洋書房)、『〈生きる方法〉の民俗誌』(関西学院大学出版会)、『日本より怖い韓国の怪談』(河出書房新社)などがある。
発売日
2024年3月13日
版元
創元社
4.私たちの近現代史 女性とマイノリティの100年 (集英社新書)
概要(版元ウェブサイトより引用)
1923年9月1日に発生した関東大震災は、東京近郊に大きな被害をもたらしたばかりか、近代日本の精神にも大きな傷跡と罪科を刻み込んだ。
民間人らによる朝鮮人虐殺や憲兵らによる無政府主義者殺害である。
シベリア抑留体験のある父を持ち、ドラマ・映画化された小説『風よ あらしよ』でアナキスト伊藤野枝・大杉栄と、大震災での彼らの殺害を描いた村山由佳、祖父が関東大震災で殺されかけ、家父長制の色濃い在日家庭に育ち、自らも様々な形での差別を経験してきた朴慶南。
ふたりが、戦争と植民地支配、災害と虐殺が日本人社会に与えた影響、そして、いまだ女性やマイノリティへの差別と偏見が根強く残るこの国の100年を語り尽くす。
著者
村山由佳(むらやま ゆか)
1964年、東京都生まれ。直木賞作家。
著書に『風よ あらしよ』『星々の舟』『ダブル・ファンタジー』『天使の卵』『ある愛の寓話』『放蕩記』『記憶の歳時記』『星屑』『はつ恋』『二人キリ』など多数。
朴慶南(ぱく きょんなむ)
1950年、鳥取県生まれ。作家。
著書に『クミヨ!(ゆめよ)』『いつか会える』『ポッカリ月が出ましたら』『命さえ忘れなきゃ』『やさしさという強さ』『あなたが希望です』『私たちは幸せになるために生まれてきた』など。
発売日
2024年3月15日
版元
集英社
5.ロシアの革命思想: その歴史的展開 (岩波文庫 青N 610-1)
概要(版元ウェブサイトより引用)
ゲルツェン(1812-1870)はロシア史上、最初の政治的亡命者であった。彼の言う「革命思想」とは、人間の尊厳と言論の自由を守る思想である。その展開を描きながら、農奴制と専制の非人間性を告発する本書は、現代をも撃つ。新訳。
著者
ゲルツェン (ゲルツェン) (著/文)
1812-1870. 19世紀ロシアを代表する知識人。近代ロシア初の政治的亡命者。主著に『過去と思索』『向こう岸から』ほか。
長縄 光男 (ナガナワ ミツオ) (翻訳)
1941年生まれ。横浜国立大学名誉教授。ロシア社会思想史。著書に『評伝ゲルツェン』『ゲルツェンと1848年革命の人びと』ほか。訳書にゲルツェン『過去と思索』(共訳)、同『向こう岸から』ほか。
発売日
2024年3月19日
版元
岩波書店
6.中国と日本における農村ジェンダー研究―1950・60年代の農村社会の変化と女性
概要(版元ウェブサイトより引用)
中国と日本の農村ジェンダー研究のこれまでとこれから
1950年代から60年代の中国と日本において農村社会と女性の生活はいかに変化したのか? 医療、教育、ケア、財産所有、労働、政治参加などのあり方に焦点をあてた既存研究の特徴を明らかにするとともに、研究の空白をさぐる一冊。
著者
【執筆】
姚 毅(Yao Yi)大阪公立大学大学院生活科学研究科客員研究員
劉 楠(Liu Nan)山梨英和大学人間文化学部講師
閻 美芳(Yan Meifang)龍谷大学社会学部社会学科専任講師
江口 伸吾(Eguchi Shingo)南山大学外国語学部教授
李 亜姣(Li Yajiao)日本学術振興会外国人特別研究員(東京大学社会科学研究所)
李 晶(Li Jing)華東師範大学公共管理学院副教授
景 淋(Jin Lin)華東師範大学公共管理学院修士課程
金 鑫(Jin Xin)早稲田大学商学学術院産業経営研究所助教
松岡 悦子(Matsuoka Etsuko)奈良女子大学名誉教授
【編著】
大橋 史恵(Ohashi Fumie)お茶の水女子大学ジェンダー研究所准教授
南 裕子(Minami Yuko)一橋大学大学院経済学研究科准教授
堀口 正(Horiguchi Tadashi)大阪公立大学大学院生活科学研究科教授
岩島 史(Iwashima Fumi)京都大学大学院経済学研究科講師
発売日
2024年3月20日
版元
晃洋書房
7.VTuberの哲学
概要(版元ウェブサイトより引用)
VTuberは中の人にも虚構のキャラクターにも還元されないという「非還元主義」に立ち、VTuber独自の存在様態を理論化しつつ、その魅力を実際の活動の例を多数挙げながら分析する。
著者
山野 弘樹(ヤマノ ヒロキ)
1994年、東京都生まれ。2017年、上智大学文学部卒業。2019年、東京大学大学院総合文化研究科(超域文化科学専攻)修士課程修了。同年より日本学術振興会特別研究員DC1(面接免除内定)。現在、東京大学大学院総合文化研究科博士課程。専門はポール・リクールの思想、およびVTuberの哲学。2019年、日本哲学会優秀論文賞受賞。2021年、日仏哲学会若手研究者奨励賞受賞。主著に『独学の思考法』(講談社現代新書、2022年)。
発売日
2024年3月21日
版元
春秋社
8.ゾンビの美学: 植民地主義・ジェンダー・ポストヒューマン
概要(版元ウェブサイトより引用)
ゾンビとは一体何なのか
博士論文をもとにした学術研究がついに誕生
「だが現在、または近い未来において、人間に「似ているにすぎないもの」として作り出されたゾンビの方に、人間が「似て」くるだろう。」(本書より)
『恐怖城(ホワイト・ゾンビ)』『私はゾンビと歩いた!』から、ジョージ・A・ロメロを経て『バイオハザード』『ワールド・ウォー・Z』まで、ヴードゥー呪術、噛みつき、ウィルス感染など、多様な原因で人間ならざるものへと変化し、およそ100年にもわたり増殖し続けるゾンビと作品の数々。恐怖の対象として類を見ないその存在に託されたものは何か。本書では、ゾンビの歴史を通覧し、おもに植民地主義、ジェンダー、ポストヒューマニズムの視点から重要作に映るものを仔細に分析する。アガンベンの生権力論を援用し、ゾンビに現代および近未来の人間像をみる力作。
著者
福田 安佐子(フクダ アサコ)
1988 年生。国際ファッション専門職大学国際ファッション学部助教。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。専門はホラー映画史、表象文化論、身体論。共著に『ヒューマン・スタディーズ:世界で語る/世界に語る』(集広舎)、『モダンの身体:マシーン・アート・メディア』(小鳥遊書房)、共訳書にブライドッティ『ポストヒューマン』(フィルムアート社)、クロンブ『ゾンビの小哲学』(人文書院)がある。
発売日
2024年3月22日
版元
人文書院
9.アンチ・ジオポリティクス: 資本と国家に抗う移動の地理学
概要(版元ウェブサイトより引用)
地政学が見落としてきた運動が、聞こうとしなかった叫びが、ここにある。
国境廃絶を求める闘争が続く地中海の「移民の島」で、万博への抗議渦巻くミラノの路上で、技能実習生の「失踪」が絶えない日本の建設現場で——。いまこそ、地球上のさまざまな場所で響く、境界をすり抜け、食い破る人々の叫びに耳を傾けるときだ。欲望と叛乱の地理学の、野心あふれる実践。
著者
北川眞也(きたがわ・しんや)
1979年、大阪府生まれ。関西学院大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(地理学)。現在、三重大学人文学部准教授。専門は政治地理学、境界研究。著書に『交差するパレスチナ——新たな連帯のために』(共著、新教出版社、2023年)、『惑星都市理論』(共著、以文社、2021年)など。訳書に、サンドロ・メッザードラ『逃走の権利——移民、シティズンシップ、グローバル化』(人文書院、2015年)、フランコ・ベラルディ(ビフォ)『ノー・フューチャー——イタリア・アウトノミア運動史』(共訳、洛北出版、2010年)がある。
発売日
2024年3月23日
版元
青土社
10.ケアリング・デモクラシー:市場・平等・正義
概要(版元ウェブサイトより引用)
これまでの民主主義論が前提する自立/自律したリベラルな個人像を批判し、誰もが「他者に依存せざるをえない存在」という人間観の下での社会構想を訴えるとともに、「ケア」を周縁に封じ込めてきたその政治性や権力性を問う。民主主義の定義を「ケア責任の配分に関わるもの」とし、ケアの倫理を踏まえた社会への変革を提起する。
著者
ジョアン・C・トロント(Joan C. TRONTO)
ミネソタ大学政治学教授、ニューヨーク市立大学大学院およびハンターカレッジ政治学教授を経て両大学の名誉教授。専門はフェミニズム政治理論。著書に、『モラル・バウンダリー――ケアの倫理と政治学』(杉本竜也訳、勁草書房、近刊)ほか。
監訳者
岡野 八代(おかの やよ)
同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。専門は西洋政治思想、フェミニズム理論。主な著書に『ケアの倫理――フェミニズムの政治思想』(岩波新書、2024年)、『フェミニズムの政治学――ケアの倫理をグローバル社会へ』(みすず書房、2012年)、ジョアン・トロントとの共著『ケアするのは誰か?――新しい民主主義のかたちへ』(白澤社、2020年)。訳書にエヴァ・キテイ『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』(監訳、白澤社、2010年)、アイリス・マリオン・ヤング『正義への責任』(共訳、岩波書店、2022年)など。
発売日
2024年3月28日
版元
勁草書房
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