アーティストとメディア研究者の対話・フィールドワークから生まれた、楽曲とライブパフォーマンス──マイカ・ルブテ×和田夏実【DE-SILO EXPERIMENT 2024 プログラム紹介】
DE-SILO EXPERIMENT 2024にて体験できるプログラムの詳細と背景意図を紹介する本シリーズ。今回取り上げるのは、メディア研究者・和田夏実が設定した「『生きているという実感』が灯る瞬間の探求」という研究テーマに対して、音楽プロデューサー/シンガーソングライターのマイカ・ルブテが楽曲制作とライブパフォーマンスという形で応答するプログラムだ。
DE-SILO EXPERIMENT 2024
【4/13~14開催】小説から音楽、映像、メディアアートまで。研究者とアーティストのコラボレーションにより、研究知を起点に「生の実感とリアリティ」を探る2daysイベント。
音楽プロデューサー/シンガーソングライターのマイカ・ルブテは4/13に、制作した楽曲のパフォーマンス、そしてメディア研究者・和田夏実とのトークセッションに出演する。
参加希望の方は下記ウェブサイトから「DAY1 パフォーマンスチケット」の購入を。
研究者とアーティストの協働により生み出された作品展示やパフォーマンスが展開される「DE-SILO EXPERIMENT 2024」。
本イベントに参画する研究者の一人である、メディア研究者・和田夏実が設定した研究テーマは「『生きているという実感』が灯る瞬間の探求」だ。
人には誰しもの中に、ときめきを覚え、無我夢中になり、それに向かって走っていきたくなる衝動というものが存在する。
もしくはその種が、それぞれの中に存在している。存在理由、生きている意味、そういった言葉ではなく、はりあいという、何かとの間で芯のあるぱりっとした感情と衝動が走り、自分の中でそうある自分自身、そこに没入している状態のことを心地よいと感じること、そうしたいきいき(LIVELY)とした状態はいかにして生まれうるのだろうか。
本研究では、独自の世界認識や設定をもとにそれぞれが構築する内言のありようを探りながら、自分をとりまく世界から手応えを感じ、自らの中で種を咀嚼し、大切に育て、身体の中に息づくものとして耕す方法について検討する。
いきいきとすることが描きうる世界の未来、ときめき自体がもたらす世界の開拓について、極限状態を起点として描きながら、一人ひとりの内なる世界が描く未来を探求する。
※研究テーマの背景を伺ったインタビュー記事:
一人ひとりの「生きているという実感」を見つけ出すために──メディア研究者・和田夏実
このテーマに応答するのが、先進的なエレクトロニックミュージックとポップなメロディラインを共存させた楽曲が特徴的なアーティスト・マイカ・ルブテだ。
参考記事:音楽というメディアの力を通じて描く「『生きているという実感』が灯る瞬間」──シンガーソングライター/プロデューサー・マイカ・ルブテ【DE-SILO EXPERIMENT 2024アーティスト紹介】
マイカは今回のDE-SILO EXPERIMENT 2024に際して、「心象volcano」という楽曲を制作した。
和田は言語やコミュニケーション、表現自体を起点に、一人ひとりの内なる世界における接続と自律から立ち現れてくる「生きているという実感」を探求するなかで、ある施設をたびたび訪れてきた。それが、岡山県長島にある、かつてハンセン病患者の療養施設として利用されていた長島愛生園(国立ハンセン病療養所)だ。
同園に初の精神科医として勤務した神谷美恵子は『生きがいについて』という著書を記しており、長島愛生園への訪問や同書との出合いが、和田が今回の研究テーマを設定するうえで大きな影響を与えている。
マイカも、そのフィールドワークを追体験するように同園を訪れ、長島の住民との交流や愛生園への訪問を通じて感じた、自身の感情や生の実感を火山に見立て、「心象volcano(=火山)」という楽曲が生まれた。
人間が持つ生への強い願望、諦めと情熱という対照的な感情、外部世界からの隔絶、家族との分離、差別と偏見にさらされた島内での隔離生活を通じて描かれる、真に生きることへの切望。これらの複雑な感情は、愛生園の歴史とそこで生きた人々の強い生命力を背景に、マイカ独自のエクスペリメンタルポップとして表現されている。透明感あふれるヴォーカルと流れるようなシンセサイザーの音色が、徐々に熱を帯び、マグマのように外へ溢れ出す生命力と喜びを描き出す。
本楽曲は、4月3日にデジタルリリースされ、同月13日のDE-SILO EXPERIMENT 2024 DAY1 14:30~15:00にWALL&WALLにて行われる、マイカによるライブパフォーマンスにて初披露となる。
またパフォーマンスに続く15:00~15:30には、和田とマイカが制作のプロセスを振り返りながら、研究“知”とアートの交差から何が立ち現れたのかを語るトークセッションも開催される。また、隣接するOMOTESANDO MUSEUMでは、和田の研究成果も展示予定だ。
マイカは長島愛生園での経験や和田との対話をどのように解釈し、表現へと落とし込んだのか? 研究とアートが交差することに生まれる新たな景色を目撃するために、ぜひイベントに足を運んでほしい。
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