【2023年8月刊】フェミニスト現象学、日本文学の計量的読解、捕鯨問題……デサイロが注目したい人文・社会科学の新刊10冊
「いま私たちはどんな時代を生きているのか」──人文/社会科学領域の研究者とともにこの問いを探り、研究のなかで立ち現れるアイデアや概念の社会化を目指すアカデミックインキュベーター「デサイロ(De-Silo)」。
2023年8月に刊行の人文・社会科学領域の新刊書の中から、デサイロとして注目したい10冊をピックアップしました。
気になるタイトルがあれば、読書リストにぜひ加えてみてください。
1.ドミニク・マカイヴァー・ロペスほか『なぜ美を気にかけるのか: 感性的生活からの哲学入門』
概要(版元ウェブサイトより引用)
お気に入りの服を着る、おいしいものを食べる、好きな映画をみる――こうした日常のさまざまな美的選択は、人生にどのような意味をもたらすのか。人はなぜ美的な暮らしを送るのか。現代美学を代表する論者たちが3つの答えを提案する、哲学入門の授業向けに書かれた教科書。著者たちによる座談会とティーチングガイドつき。
【原著】Dominic McIver Lopes, Bence Nanay, Nick Riggle, Aesthetic Life and Why It Matters, Oxford University Press, 2022
著者
ドミニク・マカイヴァー・ロペス(Dominic McIver Lopes)(著)
ブリティッシュコロンビア大学哲学科教授。元アメリカ美学会会長、元カナダ哲学会会長。単著にSight and Sensibility: Evaluating Pictures(2005), A Philosophy of Computer Art(2009), Beyond Art (2014), Four Arts of Photography (2015), Being for Beauty: Aesthetic Agency and Value (2018)など。共編著にThe Routledge Companion to Aesthetics, Third Edition.(2013, with Berys Gaut)などがある。
ベンス・ナナイ(Bence Nanay)(著)
アントワープ大学哲学的心理学センター教授。ヨーロッパ感覚研究ネットワークのディレクターも務めている。単著にBetween Perception and Action(2013), Aesthetics as Philosophy of Perception(2016), Aesthetics: A Very Short Introduction(2019)。編著にCurrent Controversies in Philosophy of Perception(2016)がある。
ニック・リグル(Nick Riggle)(著)
サンディエゴ大学哲学科准教授。単著にOn Being Awesome: A Unified Theory of How Not to Suck (2017), This Beauty: A Philosophy of Being Alive (2022)、ほかに美的価値や芸術的スタイル、さらにはフリードリヒ・シラーやストリートアートについての論文がある。
森功次(もり・のりひで)(翻訳)
1981年生まれ。大妻女子大学准教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学、博士(文学)。著作に『ワードマップ現代現象学』(新曜社、2017年、共著)、『世界最先端の研究が教える すごい哲学』(総合法令出版、2022年、共編著)など。訳書にロバート・ステッカー『分析美学入門』(勁草書房、2013年)、ノエル・キャロル『批評について─芸術批評の哲学』(勁草書房、2017年)などがある。
発売日
2023/8/1
版元
勁草書房
2.松林哲也『何が投票率を高めるのか』
概要(版元ウェブサイトより引用)
エビデンスから投票率向上の環境要因を読み解く!
期日前投票期間や投票所の数,選挙啓発活動や議員定数の不均衡などの投票環境条件に注目し,それらがどのように投票率に影響を与えているのかを実証的に論じます。日本の有権者を対象とした投票率についての最新の研究成果をわかりやすく解説! 最終章では,そもそも投票率が高まることにどんな意味があるのかについても議論します。
著者
松林哲也(まつばやし・てつや)(著)
現職:大阪大学大学院国際公共政策研究科教授
略歴:1977 年生まれ。2007 年,テキサスA&M大学大学院政治学部博士課程修了,Ph. D.(政治学)
研究分野:政治行動論,政治的代表論,アメリカ政治,自殺対策
主な著作:『政治学と因果推論――比較から見える政治と社会』(岩波書店,2021 年);『政治行動論――有権者は政治を変えられるのか』(共著,有斐閣,2015 年);『自殺のない社会へ――経済学・政治学からのエビデンスに基づくアプローチ』(共著,有斐閣,2013年,日経・経済図書文化賞受賞)など。
発売日
2023/8/3
版元
有斐閣
3.須藤廣ほか『観光が世界をつくる――メディア・身体・リアリティの観光社会学』
概要(版元ウェブサイトより引用)
観光において、メディアがつくりだす非物質的なイメージ群は、身体的で物質的な現実(リアリティ)となる。それこそがまさに、「観光的リアリティ」ともいえるものだ。そうした「観光的リアリティ」が積層され重層化され、別の観光者たちにも共有されて体験されていくことで、いつしか、それが世界そのものとして立ち現れていく。
本書は、こういった観光が創り上げる独特の「世界=リアリティ」について書かれた論考集である。映画・小説・まんが・世相等、15の章から現代における観光の事例を考えることで、観光社会学の新たな地平を切り拓くことを試みる。〈観光が世界をつくる〉――本書を読み終わったとき、読者は、そんな感慨を抱くことになるはずだ。
著者
須藤廣(すどう・ひろし)(編集/著)
日本大学大学院文学研究科社会学専攻博士課程単位取得満期退学。北九州市立大学名誉教授。専門は観光社会学,文化社会学など。
[主な業績]『観光化する社会――観光社会学の理論と応用』(ナカニシヤ出版,2008),『ツーリズムとポストモダン社会――後期近代における観光の両義性』(明石書店,2012),『観光社会学2.0――拡がりゆくツーリズム研究』(遠藤英樹との共著,福村出版,2018)
遠藤英樹(えんどう・ひでき)(編集/著)
関西学院大学大学院社会学研究科博士課程後期課程単位取得退学。博士(観光学):立教大学。立命館大学文学部地域研究学域教授。専門は観光社会学,現代文化論,社会学理論など。
[主な業績]『ツーリズム・モビリティーズ――観光と移動の社会理論』(ミネルヴァ書房,2017),『ワードマップ 現代観光学――ツーリズムから「いま」がみえる』(橋本和也・神田孝治との共編著,新曜社,2019),『Understanding Tourism Mobilities in Japan』(編著,Routledge, 2020),『ポップカルチャーで学ぶ社会学入門――「当たり前」を問い直すための視座』(ミネルヴァ書房,2021)
山口誠(やまぐち・まこと)(編集/著)
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会情報学)。獨協大学外国語学部教授。専門は観光研究,メディア研究,歴史社会学。
[主な業績]『英語講座の誕生――メディアと教養が出会う近代日本』(講談社,2001),『グアムと日本人――戦争を埋立てた楽園』(岩波書店,2007),『ニッポンの海外旅行――若者と観光メディアの50年史』(筑摩書房,2010),『客室乗務員の誕生――「おもてなし」化する日本社会』(岩波書店,2020)
松本健太郎(まつもと・けんたろう)(編集/著)
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間環境学)。二松学舎大学文学部・大学院国際日本学研究科教授。専門は映像記号論,デジタルメディア論,観光コミュニケーション論。
[主な業績]『ロラン・バルトにとって写真とは何か』(ナカニシヤ出版,2014),『デジタル記号論――「視覚に従属する触覚」がひきよせるリアリティ』(新曜社,2019),『コンテンツのメディア論――コンテンツの循環とそこから派生するコミュニケーション』(塙幸枝との共著,新曜社,2022)など。
神田孝治(かんだ・こうじ)(編集/著)
大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(文学)。立命館大学文学部教授。専門は文化地理学,観光学。
[主な業績]『観光空間の生産と地理的想像力』(ナカニシヤ出版,2012),『現代観光地理学への誘い――観光地を読み解く視座と実践』(森本泉・山本理佳との共編著,ナカニシヤ出版,2022)
高岡文章(たかおか・ふみあき)(編集/著)
慶應義塾大学大学院社会学研究科社会学専攻博士課程単位取得退学。立教大学観光学部交流文化学科教授。専門は観光社会学。
[主な業績]「ソーシャル・ディスタンスはなぜそう呼ばれるか――旅を再想像するための一考察」(『アフターコロナの観光学――COVID-19以後の「新しい観光様式」』遠藤英樹編著,新曜社,2021),「参加型観光とその時代――『みる』から『する』へ」(『メディアとメッセージ――社会のなかのコミュニケーション』小西卓三・松本健太郎編,ナカニシヤ出版,2021),『よくわかる観光コミュニケーション論』(須藤廣・遠藤英樹・松本健太郎との共編著,ミネルヴァ書房,2022)
発売日
2023/8/4
版元
明石書店
4.トーマス・ニーダークローテンターラーほか『メディアと自殺: 研究・理論・政策の国際的視点』
概要(版元ウェブサイトより引用)
メディアの自殺報道はどうあるべきか
世界的な自殺研究者たちが、多様なメディアが自殺に与える影響について、歴史的分析からウェルテル効果やパパゲーノ効果などの理論的分析、各国の政策などを紹介。ソーシャルメディアとどのように付き合うか、ネットいじめの影響、集団自殺や拡大自殺の報道についても最新の知見を示し、回復への道筋も探る。メディアと自殺の関係を問う最先端研究論集。
著者
トーマス・ニーダークローテンターラー(編著)
Thomas Niederkrotenthaler/オーストリア、ウィーン医科大学公衆衛生センター社会医学研究所准教授、自殺研究ユニット長。主に自殺に関するメディア報道について、65以上の論文や書籍の分担執筆、著書を出版している。IASPではメディアと自殺専門研究グループ(SIG)の共同議長で、現在はオーストリア代表の共同議長も務める。パパゲーノ効果を提唱し、ドイツ自殺予防学会のハンス・ロスト賞やE・リンゲル賞(いずれも学際的自殺学プラットフォーム 自殺研究ウィーンワークショップwww. suizidforschung.at より授与)など、複数の国際的な賞を受賞。
スティーブン・スタック(編著)
Steven Stack/ウェイン州立大学の精神医学、犯罪学教授。主に自殺の危険因子と保護因子について320以上の論文や分担執筆、3冊の著書(『自殺と映画:社会的パターン』(Suicide Movies: Social Patterns)、『劇的なパフォーマンスとしての自殺』(Suicide as a Dramatic Performance)、『自殺とクリエイティブアート』(Suicide and the Creative Arts))を出版。また、Archives of Suicide Research、Crisis、Sociology、Suicide & Life Threatening Behaviorなど5つの学術誌の編集委員。自殺学への生涯の貢献に対してアメリカ自殺予防協会によるルイ・ダブリン賞を受賞。
太刀川 弘和(たちかわ・ひろかず)(監訳)
1967年茨城生まれ。筑波大学医学専門学群卒業、博士(医学)。現在、筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学教授。著書に『つながりからみた自殺予防』(人文書院、2019年)がある。
専門分野:臨床精神医学、大学メンタルヘルス、自殺予防、精神科救急、災害精神医療
趣味は自主映画製作
髙橋 あすみ(たかはし・あすみ)(監訳)
1992年生まれ。筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻修了。博士(医学)。専門は臨床心理学、自殺予防。現在、北星学園大学社会福祉学部心理学科専任講師。
発売日
2023/8/7
版元
人文書院
5.石川良子/林恭子/斎藤環『「ひきこもり」の30年を振り返る』
概要(版元ウェブサイトより引用)
当初、「病理的な登校拒否の長期化」や「非社会的な若者」として取り上げられた「ひきこもり」の概念は、社会的認識、当事者像、医療的アプローチ、いずれも大きく変遷を遂げ、現在も変わり続けている。当事者・臨床家・研究者の3人がこの30年間を振り返り、いかなる支援と対応が望ましいのか、「ひきこもり」が何を世に投じているのかを論じる。
著者
石川良子(いしかわ・りょうこ)(著)
松山大学人文学部教授.専攻は社会学・ライフストーリー研究.著書に『「ひきこもり」から考える――〈聴く〉から始める支援論』(ちくま新書),『ひきこもりの〈ゴール〉――「就労」でもなく「対人関係」でもなく』(青弓社ライブラリー),共編著に『ライフストーリー研究に何ができるか』(新曜社),『ひきこもりと家族の社会学』(世界思想社)など.
林恭子(はやし・きょうこ)(著)
10代で不登校,その後断続的に30代までひきこもる.一般社団法人ひきこもりUX会議代表理事.東京都ひきこもりに係る支援協議会委員等.著書に『ひきこもりの真実――就労より自立より大切なこと』(ちくま新書),編著に『いまこそ語ろう,それぞれのひきこもり』(日本評論社),共著に『ひきこもり白書2021』(ひきこもりUX会議)など.
斎藤 環(さいとう・ たまき)(著)
精神科医.筑波大学医学医療系社会精神保健学教授.オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン共同代表.専門は思春期・青年期の精神病理学.「ひきこもり」の治療・支援ならびに啓蒙活動.著書に『改訂版 社会的ひきこもり』(PHP新書),『オープンダイアローグとは何か』(医学書院),共著に『新版 ひきこもりのライフプラン――「親亡き後」をどうするか』(岩波ブックレット)など.
発売日
2023/8/7
版元
岩波書店
6.村上由鶴『アートとフェミニズムは誰のもの?』
概要(版元ウェブサイトより引用)
アートとフェミニズムは少なくない人びとからよく見えなくなっていて、その実態がよくわからなくなっている。いわば、アートとフェミニズムは入門したくてもできない「みんなのものではないもの」になっているのが実情だ。もともと、「みんなのもの」になろうとするエネルギーを持っているアートとフェミニズム。理解の断絶が進む現在の状況に風穴を開けるには――。フェミニズムを使ってアートを読み解く、あたらしい試み。
著者
村上由鶴(著)
1991年、埼玉県出身。日本大学藝術学部写真学科助手を経て東京工業大学環境・社会理工学院 社会・人間科学コース博士後期課程在籍。日本写真芸術専門学校非常勤講師。公益財団法人東京都人権啓発センター非常勤専門員。共著に『クリティカル・ワード ファッションスタディーズ』(フィルムアート社)。POPEYE Web「おとといまでのわたしのための写真論」、The Fashion Post「きょうのイメージ文化論」、幻冬舎plus「現代アートは本当にわからないのか?」を連載中。写真やアート、ファッションイメージに関する執筆や展覧会の企画を行う。専門は写真の美学。
発売日
2023/8/18
版元
光文社
7.原知章ほか『文化的持続可能性とは何か: 文化のゆるやかな共鳴を捉えるために』
概要(版元ウェブサイトより引用)
経済・社会・環境を文化から問い直す、
日本の事例に基づくポストSDGs時代の人文学論集!
人類学、民俗学、考古学を横断しながら、資本主義・消費社会の網目に完全には絡めとられない余白を見出し、生活空間を主体的かつ自律的に維持・運営するための文化を持続させる人々の営みを描き出す
著者
原知章(はら・ともあき)(編集)
早稲田大学 人間科学学術院 教授
松田俊介(まつだ・しゅんすけ)(著)
東北芸術工科大学 芸術学部 歴史遺産学科 講師
酒井貴広(さかい・たかひろ)(著)
早稲田大学 文学学術院 非常勤講師
都築由理子(つづき・ゆりこ)(著)
早稲田大学 人間総合研究センター
招聘研究員
大澤誠(おおさわ・まこと)(著)
岡山大学 グローバル人材育成院 非常勤講師
山越英嗣(やまこし・ひでつぐ)(著)
都留文科大学 文学部 比較文化学科 准教授
発売日
2023/8/25
版元
ナカニシヤ出版
8.中澤瞳ほか『フェミニスト現象学: 経験が響きあう場所へ』
概要(版元ウェブサイトより引用)
見過ごされてきた経験を言葉にする
沈黙を求める社会のなかで、
異なる声の共鳴を待つために
乳児の育児、更年期、トランスジェンダー、アセクシュアル、男らしさ、DV、老い、占い、ファッション、ペットロス……
さまざまな当事者の経験を記述・考察し、性をめぐる「当たり前」と「規範」を問い直すフェミニスト現象学。現象学自体を共鳴の場としつつ、多様なテーマと理論、自己や他者の語りを扱った論考からその可能性を指し示す。
現象学のみならず社会学、倫理学、クィア批評など他分野の執筆者による方法論的な論考と、それに対する編者からの応答も収録。
「本書に収められた論考とコラムの中に、本書を手に取ってくれたあなたの経験と何かしら共鳴するものがあれば嬉しい。それぞれがそれぞれの仕方で生きる世界を知る方法を分かち合うことができたらさらに嬉しい。私たちはいったい何を経験しているのか、それを理解するために、私たちは経験の記述と考察を続けていくし、他の人たちの経験の記述と考察に耳を傾けていく。もしも興味をもってくれたなら、あなたにも経験の記述を始めて欲しい。多くの人たちの、さまざまな経験が交叉する場をフェミニスト現象学は開く、そうありたいと思っている。」(「はじめに」より)
著者
中澤瞳(なかざわ・ひとみ)(編集/著)
日本大学通信教育部准教授。専門は哲学。
共編著に『フェミニスト現象学入門』(ナカニシヤ出版、2020年)、共著に『メルロ=ポンティ読本』(法政大学出版局、2018年)など。
宮原優(みやはら・ゆう)(編集/著)
立命館大学客員研究員・非常勤講師。専門は現象学、哲学。
共編著に『フェミニスト現象学入門』(ナカニシヤ出版、2020年)、共著に『西洋古典学のアプローチ』(晃洋書房、2021年)など。
稲原美苗(いなはら・みなえ)(編集/著)
神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授。専門は現象学、ジェンダー論、臨床哲学。
主著にAbject Love: Undoing the Boundaries of Physical Disability(VDM Verlag, 2009)、共著にRoutledge Handbook of Well-Being(Routledge, 2018)など。
川崎唯史(かわさき・ただし)(編集/著)
東北大学病院臨床研究監理センター特任講師。専門は現象学、倫理学。
主著に『メルロ=ポンティの倫理学』(ナカニシヤ出版、2022年)、共編著に『フェミニスト現象学入門』(ナカニシヤ出版、2020年)など。
発売日
2023/8/25
版元
ナカニシヤ出版
9.ホイト・ロング『数の値打ち グローバル情報化時代に日本文学を読む』
概要(版元ウェブサイトより引用)
「機械で読む」ことで何ができるのか?
デジタル・ヒューマニティーズ×日本文学研究から
生まれた驚くべき成果。
デジタル時代の文学リテラシーがこの一冊で
つかめる、最前線の研究をいち早く翻訳!
数字と文学のあいだの概念上の分断を超えて、批評理論と統計学・計量的読解を融合した新たなアプローチから、 言語やテキストにひそむ人間の認識の問題にせまり、日本文学の読み直しを通して世界文学へと接続する。
データ・サイエンスの影響をうけた北米発の〈デジタル・ヒューマニティーズ〉の手法をつまびらかにする入門書にして、文学研究に量的革命を巻きおこす挑戦の書。
デジタル情報化とAI革命が猛スピードで進行しつつある現在、人文学においてもデジタル技術を研究に用いた〈デジタル・ヒューマニティーズ〉が注目されている。文学研究における〈デジタル・ヒューマニティーズ〉は北米で独自の発展をとげ、膨大なデータをコンピュータで処理し、ジャンルや文体といった大きな対象にアプローチする手法が確立されつつある。 日本文学に対して初めて本格的にこの手法を適用した本書は、夏目漱石の文学論にさかのぼりながら日本におけるデジタル思考の文芸史を概観し、青空文庫を例にテキストのアーカイヴとサンプルの意味を分析する。さらに「私小説」というジャンルの謎や、ジェイムズ・ジョイスで広く知られる「意識の流れ」の技法と日本の近代文学の関係、そして大日本帝国の時代の日本語小説における人種の表象がどのような記述によって生み出されてきたのかを、テクノロジーを駆使して膨大なテキストを解析することで明らかにする。
数字で文学を読み解き、文学研究における数字の値打ちを吟味する、グローバル情報化時代の文学研究を実践する必読の一冊。
著者
ホイト・ロング(Hoyt Long)(著)
1976年、オレゴン州ポートランド生まれ。オレゴン大学を卒業後、ミシガン大学アナーバー校で博士号を取得。近代日本文学を専門とし、現在、シカゴ大学東アジア言語文化研究科教授。シカゴ・テキスト・ラボを主宰している。著書に『平らでない地面の上──宮沢賢治と近代日本における場所づくり』(2012年、未訳)がある。
秋草俊一郎(あきくさ・しゅんいちろう)(翻訳)
1979年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。現在、日本大学大学院総合社会情報研究科准教授。専門は比較文学、翻訳研究など。著書に『「世界文学」はつくられる 1827–2020』、『アメリカのナボコフ──塗りかえられた自画像』など。訳書にクルジジャノフスキイ『未来の回想』、バーキン『出身国』、アプター『翻訳地帯──新しい人文学の批評パラダイムにむけて』(共訳)、レイノルズ『翻訳──訳すことのストラテジー』、ヴェヌティ『翻訳のスキャンダル──差異の倫理に向けて』(共訳)などがある。
今井亮一(いまい・りょういち)(翻訳)
1987年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。現在、立正大学文学部特任講師。専門は比較文学など。著書に、『路地と世界――世界文学論から読む中上健次』、『スヌーピーのひみつ A to Z』(共著)。訳書に、ハント『英文創作教室 Writing Your Own Stories』(共訳)、モレッティ『遠読──〈世界文学システム〉への挑戦』(共訳)、アプター『翻訳地帯』(共訳)、ボール『スヌーピーがいたアメリカ──『ピーナッツ』で読みとく現代史』など。
坪野圭介(つぼの・けいすけ)(翻訳)
1984年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、和洋女子大学国際学部助教。専門はアメリカの文学と文化。論考に、「マクロに読む/ミクロに読む──キングの小説作法」(『kotoba』第40号)など。訳書に、アプター『翻訳地帯』(共訳)、ブラット『数字が明かす小説の秘密──スティーヴン・キング、J・K・ローリングからナボコフまで』、キッド『判断のデザイン』、シールズ&サレルノ『サリンジャー』(共訳)、ハイスミス『サスペンス小説の書き方』など。
発売日
2023/8/26
版元
フィルムアート社
10.クジラのまち 太地を語る──移民、ゴンドウ、南氷洋
概要(版元ウェブサイトより引用)
捕鯨問題はすでに「捕る/捕らない」、「食べる/食べない」という単純な二項対立を超えて、科学や政治、倫理など、多様な問題が複雑に絡まりあった“捕鯨問題群”を形成するに至っている。
本書では、漁師、ペンション経営者、海産物販売業者など、「クジラのまち・太地」を愛し、誇りとする8名の生活史の「聞き書き」を軸に、従来は語られてこなかった太地の姿を提示。
鯨食・捕鯨をめぐってすれ違うまなざしの交差点を探り、複数の視点で“捕鯨問題群”に向きあい、広くオープンに語りあう環境の構築をめざす一冊。
著者
赤嶺 淳(あかみね・じゅん)(編集/著)
1967年大分県うまれ。一橋大学大学院社会学研究科教授。専門は食生活誌学、食生活史研究。人間による環境利用の歴史をあきらかにするため、水産物の生産から加工、消費までのサプライチェーンの発展過程に着目し、「食からみた社会」、「社会のなかの食」の変容過程をあとづけてきた。目下の関心は、マーガリンの主原料として20世紀初頭に創発した鯨油や大豆油、パーム油などの「油脂間競争」120年の絡まりあいの解明。おもな著作に『ナマコを歩く』(新泉社、2010年)、『鯨を生きる』(吉川弘文館、2017年)、「ノルウェーにおける沿岸小型捕鯨の歴史と変容」(『北海道立北方民族博物館紀要』29号、2020年)、「日本近代捕鯨史・序説」(『国立民族学博物館研究報告』47巻3号、2023年)など。
発売日
2023/8/28
版元
英明企画編集
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