【2023年5月刊】企業が求める〈主体性〉研究、「女子」研究、政党の「カルテル化」……デサイロが注目したい人文・社会科学の新刊10冊
「いま私たちはどんな時代を生きているのか」──人文/社会科学領域の研究者とともにこの問いを探り、研究のなかで立ち現れるアイデアや概念の社会化を目指すアカデミックインキュベーター「デサイロ(De-Silo)」。
2023年5月に刊行(予定)の人文・社会科学領域の新刊書の中から、デサイロとして注目したい10冊をピックアップしました。
気になるタイトルがあれば、読書リストにぜひ加えてみてください。
1.リチャード・カッツ/ピーター・メア 『カルテル化する政党』
概要(版元ウェブサイトより)
政党の本質はどのように変化したか。国家への浸透と政党間の共謀によって特徴づけられる新たなタイプの政党モデルについて論じる。
政党の機能や支持の低下、無党派層の増大など、近年では政党に対して否定的な見方が示されるようになった。しかし、今もなお政党が政治の中心に位置することには変わりがない。本書は、もはや政党が社会(有権者)とのつながりを重視せず、国家機関の一部となって存続しているとするカルテル政党論を体系的に解説する。
著者
リチャード・カッツ(著/文)
ジョンズ・ホプキンズ大学政治学部教授。Ph. D.元European Journal of Political Research共同編集長(2006─2012)。著書にThe Challenges of Intra-Party Democracy (co-edited with William P. Cross, Oxford University Press, 2013)、Political Institutions in the United States (Oxford University Press, 2007)がある。
ピーター・メア(著/文)
元欧州大学院比較政治学部教授。Ph. D.著書にRuling the Void (Verso, 2013), Party Patronage and Party Government in European Democracies (co-edited with Petr Kopecky and Marcia Spirova, Oxford University Press, 2012)がある。2011年逝去。
岩崎 正洋(いわさき・まさひろ)(翻訳)
1965年生まれ。東海大学大学院政治学研究科博士課程後期修了。博士(政治学)。杏林大学社会科学部・総合政策学部助教授、日本大学法学部助教授、同准教授を経て、現在は日本大学法学部教授。専門は比較政治学。著書に『政党システムの理論』(東海大学出版会、1999)、『比較政治学入門』(勁草書房、2015)、『政党システム』(日本経済評論社、2020)、翻訳書に『民主政治はなぜ「大統領制化」するのか』(監訳、ミネルヴァ書房、2014)がある。
浅井 直哉(あさい・なおや)(翻訳)
1990年生まれ。日本大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(政治学)。日本大学法学部特別助教を経て、現在は日本大学法学部専任講師。著書に『日本政治とカウンター・デモクラシー』(分担執筆、勁草書房、2017)、『日本の連立政権』(分担執筆、八千代出版、2018)、『議会制民主主義の揺らぎ』(分担執筆、勁草書房、2021)がある。
発売予定日
2023年5月1日
版元
勁草書房
2.河村豊/小長谷大介/山崎文徳『未来を考えるための科学史・技術史入門』
概要(版元ウェブサイトより)
現代を読み解き、近未来を展望するためのツールとして、科学史、技術史、さらに科学技術史の視点・方法論を提示する。時代は人類起源から現代までを扱い、欧米を中心としつつ、アラビア科学や近現代の日本における科学・技術も取り上げる。また知識人・科学者たちの視点と、彼らをサポートした権力者の視点を織り交ぜ、科学史と技術史のつながり、特に民生技術史と軍事技術史との関係が理解できるように描く。終章ではこれからの科学史・技術史の課題を示した。各章末に、発展的・探究的なチャレンジ課題、およびブックガイドを紹介。魅力的な図版も豊富に収録している。
著者
河村豊(かわむら・ゆたか)(著/文 | 編集)
1988年 東京工業大学大学院理工学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(学術)
東京工業高等専門学校名誉教授。専門:電気技術史、戦時科学史。著書『電気技術史概論』(共著、ムイスリ出版)、『科学史概論』(共著、ムイスリ出版)
小長谷大介(こながや・だいすけ)(著/文 | 編集)
2009年 東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。博士(学術)
龍谷大学経営学部教授。専門:現代物理学史。著書『熱輻射実験と量子概念の誕生』(北海道大学出版会)、『20世紀物理学史:理論・実験・社会』(共訳、名古屋大学出版会)他
山崎文徳(やまざき・ふみのり)(著/文 | 編集)
2006年 大阪市立大学経営学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(商学)
立命館大学経営学部教授。専門:技術史、技術論、技術経営論。著書『科学と技術のあゆみ』(共著、ムイスリ出版社)、『日本における原子力発電のあゆみとフクシマ』(共著、晃洋書房)、『21世紀のアメリカ資本主義』(共著、大月書店)
発売予定日
2023年5月1日
版元
北樹出版
3.鈴木智之『ワークプレイス・パーソナリティ論: 人的資源管理の新視角と実証』
概要(版元ウェブサイトより)
いま注目される、職場の「こころ」。
独自の実証研究により日本企業への提言を引き出す。
職場の「こころ」に注目が集まっている。ビッグファイブ、ダーク・トライアド、GRITなどの世界的に蓄積されたパーソナリティ研究の知見は、どのように職場のデザインと働き方に活かしていけるものなのだろうか。これまでは捉えどころがなかった職場におけるパーソナリティ理論の系譜と世界的潮流に研究者と実務家はどのように対峙して、理解を進めればよいのだろうか。採用、選抜、育成、評価、それぞれの人事活動に関連する世界中の膨大なパーソナリティ研究を体系的・包括的にレビューし、独自の実証研究によってこれからの日本企業への提言を引き出す。
著者
鈴木智之(すずき・ともゆき)(著/文)
名古屋大学大学院経済学研究科産業経営システム専攻准教授、経済学部経営学科准教授。日本労務学会理事。
慶應義塾大学総合政策学部卒業。東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程・博士課程修了。博士(工学)・人間行動システム。
アクセンチュア株式会社マネジャー、wealth share株式会社代表取締役社長、東京大学大学院情報学環特任准教授などを経て現職。人的資源管理・組織心理学を専門分野とし、特にワークプレイス・パーソナリティ論、就職選抜論の理論・実証研究を行っている。 主な著書に『就職選抜論――人材を選ぶ・採る科学の最前線』(中央経済社、2022年、日本の人事部「HRアワード2022」書籍部門受賞)。
発売予定日
2023年5月2日
版元
東京大学出版会
4.大貫恵佳ほか『ガールズ・アーバン・スタディーズ 「女子」たちの遊ぶ・つながる・生き抜く』
概要(版元ウェブサイトより)
現代の都市は、女性を通せばどのように見えるのか。都市において「女性を“する”楽しさ」や「女性を“させられる”苦しさ」に焦点をあわせれば、どのような視点が得られるか。女性から見えるさまざまな都市のトピックを論じ、従来とは異なる都市のリアリティを読み解く。
著者
大貫恵佳(オオヌキ・サトカ)(著/文 | 編集)
駒沢女子大学人間総合学群人間文化学類人間関係専攻准教授
木村絵里子 (キムラ エリコ) (著/文 | 編集)
日本女子大学人間社会学部現代社会学科助教
田中大介 (タナカ ダイスケ) (著/文 | 編集)
日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授
塚田修一 (ツカダ シュウイチ) (著/文 | 編集)
相模女子大学学芸学部メディア情報学科准教授
中西泰子 (ナカニシ ヤスコ) (著/文 | 編集)
相模女子大学人間社会学部社会マネジメント学科教授
発売予定日
2023年5月16日
版元
法律文化社
5.武藤浩子『企業が求める〈主体性〉とは何か: 教育と労働をつなぐ<主体性>言説の分析』
概要(版元ウェブサイトより)
教育界・産業界に飛び交うマジック・ワード――〈主体性〉
近年、〈主体性〉を持った人材が社会で広く求められており、教育界もまた、〈主体性〉を持った人材の育成に取り組んでいる――しかし、その〈主体性〉とは一体何なのか?
本書は、これまで曖昧なままにされてきた〈主体性〉に鋭く切り込み、〈主体性〉が強く求められることで生じるパラドキシカルな今日的課題についても示唆する。〈主体性〉に関わる教育界・産業界の方々、また教育から労働へと移行する学生、必読の書。
著者
武藤浩子(むとう・ひろこ)
発売予定日
2023年5月18日
版元
東信堂
6.西村祐子『皮革とブランド 変化するファッション倫理』
概要(版元ウェブサイトより)
流行の最先端をゆく高級バッグから一点モノの財布まで、革製品はファッションを彩る必需品だ。しかし、皮革文化には常に、自然破壊、動物愛護、大量廃棄といった倫理的な問題がつきまとっていた。その来歴と現在から、人々の欲望を満たすためにあらゆるものをブランディングしていく消費文化の本質を描き出す。
著者
西村祐子(にしむら・ゆうこ)(著/文)
駒澤大学総合教育研究部教授.London School of Economics(LSE,ロンドン大学)にて社会人類学博士号取得.著書に『革をつくる人びと――被差別部落,客家,ムスリム,ユダヤ人たちと「革の道」』(解放出版社,2017 年),『草の根NPOのまちづくり――シアトルからの挑戦』(編著,勁草書房,2004 年),Gender, Kinship and Property Rights: Nagarattar Womanhood in South India(Oxford University Press, 1998), Civic Engagement in Contemporary Japan: Established and Emerging Repertoires(Henk Vinkenらと共著,Springer, 2012)などがある.
発売予定日
2023年5月23日
版元
岩波書店
7.トッド・ローズ『なぜ皆が同じ間違いをおかすのか 「集団の思い込み」を打ち砕く技術』
概要(版元ウェブサイトより)
ハーバード教育大学院で〈個性学研究所〉設立の心理学者が、「みんな同じ」の危険性と脱却法を解説!
「集合的幻想」とは──事実に見えたことが実際には思い込みだったにもかかわらず、間違った認識に基づいて大勢が行動すること。
・品不足と勘違いして買い占めに走り、本当に品不足を引き起こす。
・欠陥があるとの誤解により、移植用の腎臓の10%以上が廃棄される。
・周囲から期待されているという思い込みのため、自分の人生を犠牲にする。
ありもしないことを皆で信じる「集合的幻想」は、社会や組織、個人にいたるまで大きな弊害をもたらす。自身も「幻想」を体験した心理学者が、脳科学・心理学の知見と多くの事例をもとに、幻想にとらわれる過程、打破する方法を解説。ぶれない思考や正しい認識を身につけ、豊かな人生を送るための必読書!
著者
トッド・ローズ(著/文)
心理学者。誰もが活気ある社会で満ち足りた人生を送れるような世界の実現を目指すシンクタンク〈ポピュレース〉共同設立者・代表。ハーバード教育大学院心理学教授として〈個性学研究所〉を設立したほか「心・脳・教育プログラム」を主宰した。著書に『ハーバードの個性学入門――平均思考は捨てなさい』(早川書房)、『Dark Horse――「好きなことだけで生きる人」が成功する時代』(共著、三笠書房)がある。
門脇 弘典 (かどわき・ ひろのり)(翻訳)
翻訳家。東京外国語大学外国語学部卒。訳書にロール・クレア・レイエ『プラットフォーマー勝者の法則』、アルン・スンドララジャン『シェアリングエコノミー』 (以上、日経BP社)、マックス・H・ベイザーマン『ハーバード流「気づく」技術』(KADOKAWA)など。
発売予定日
2023年5月25日
版元
NHK出版
8.石岡丈昇『タイミングの社会学: ディテールを書くエスノグラフィー』
概要(版元ウェブサイトより)
フィールドワークが世界の見方を変える――
舞台は、マニラの貧困地区。突然試合が中止だと告げられるボクサー、自宅が急に目の前で破壊されるスラム街の住人、常に主人の顔色を窺う家事労働者……。何が起こるかわからない明日を待ち、絶えざる今を生きのびるとはどういうことか。かれらが生きる時間のディテールをともに目撃し、ともに書くための理論と思想。
著者
石岡丈昇(いしおか・とものり)(著/文)
発売予定日
2023年5月25日
版元
青土社
9.荒川歩/鈴木公啓/木戸彩恵『〈よそおい〉の心理学: サバイブ技法としての身体装飾』
概要(版元ウェブサイトより)
なぜ,私たちは今日も〈よそおい〉続けるのか? 日常生活をサバイブするための〈心理的社会的機能〉の観点から探る。「普段の役割を降りるツール」「自他の関係調整ツール」「空間形成参与行動」「ジェンダーワーク」といった機能に着目しつつ,衣服,化粧,ピアッシング,痩身,美容整形などの〈よそおい〉行為を考察。
著者
荒川歩(あらかわ・あゆむ)(著/文 | 編集)
鈴木公啓(すずき・ともひろ)(著/文 | 編集)
木戸彩恵(きど・あやえ)(著/文 | 編集)
発売予定日
2023年5月31日
版元
北大路書房
10.大沢真知子『「助けて」と言える社会へ 性暴力と男女不平等社会』
概要(版元ウェブサイトより)
本書は、長年、非正規・ワーキングプア・ワークライフバランスなど、特に女性キャリア研究に打ち込んできた著者がさまざまな現場取材や研究プロジェクトで明らかになった問題と提言をまとめた野心作です。
コロナ禍でより顕在化した性暴力、男女不平等社会の実態
性暴力被害者の実態を社会に伝え、性暴力が生じるメカニズムを解明するとともに、性暴力のない社会を目指ために、私たち一人ひとりがどう取り組んでいくべきか……。
セクシャル・ハラスメントや性暴力問題に関心があったり、深刻な悩みを抱えている全ての人たちに強くお勧めします。
著者
大沢真知子(おおさわ・まちこ)(著/文)
日本女子大学名誉教授。専門は労働経済学、女性キャリア研究。日本ペンクラブ女性作家委員会委員。東京都女性活躍推進会議専門委員。南イリノイ大学経済学部博士課程修了。Ph. D(経済学)。コロンビア大学社会科学センター研究員。シカゴ大学ヒューレット・フェロー、ミシガン大学ディアボーン校助教授、亜細亜大学助教授・教授を経て日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授。
主な著書は『ワークライフバランス社会へ』(岩波書店、2006)『ワークライフシナジー』(岩波書店、2008)『ワーキングプアの本質』(岩波書店、2010)『妻が再就職するとき―セカンドチャンス社会へ』(NTT 出版、2012)『女性はなぜ活躍できないのか』(東洋経済新報社、2015)『なぜ女性は仕事を辞めるのか』共編著(青弓社、2015) 『21 世紀の女性と仕事(放送大学叢書)』(左右社、2018)『なぜ女性管理職は少ないのか―女性の昇進を妨げる要因を考える』共編著(青弓社、2019)等多数。
発売予定日
2023年5月31日
版元
西日本出版社
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