人文・社会科学と「社会」をつなぎ直すために──ニュース解説、ランダムな探索、企業内研究、アーカイブの視点から考える
不可避の人口減少、低下する国際評価、疲弊する教員、逼迫する資金、ポスドク問題……アカデミアが抱える課題は山積してゆく一方です。とりわけ人文・社会科学領域においては、2015年にメディアを賑わせた「文系学部不要論争」をはじめ、より一層厳しい状況に置かれていると言えるでしょう。
そうした日本のアカデミアにおける「サイロ化(=組織やシステムなどが連携せずに孤立してしまう状態)」を崩すべくローンチされた、人文・社会科学領域の研究者を支援するアカデミックインキュベーター・プログラム「デサイロ(De-Silo)」。ローンチに際して開催されたイベントでは、「アカデミアの『再起動』のために。社会との接続のあり方を考える」と題したトークセッションが行われました。
アカデミアの知を活かしたニュース解説メディアを運営する石田健さん、データサイエンスや社会科学をバックグラウンドに幅広く社会提言や事業創造に取り組む成田悠輔さん、視覚身体言語の研究と「インタープリター」としての実践を行き来し、デサイロにも研究者として参画する和田夏実さん、そして長きにわたりアカデミアと産業界の振興に尽力してきた社会起業家/フィランソロピストであり、デサイロ理事の久能祐子……既存の枠組みにとらわれずアカデミアの未来を切り拓く4名が、アカデミアの窮状を打破するために社会と再接続するための方法を議論したセッションを、本記事ではダイジェストします。
研究成果の「評価」「指標化」の現在地、BtoC/BtoBでの研究資金調達の方法、さらにはマイナー領域の研究のあり方まで踏まえた、アカデミア「再起動」のための方法とは?
いま人文・社会科学に求められる「ランダムな探索」
4人の登壇者は、研究と社会の関わりについて、それぞれ独自の思索と実践を重ねてきました。
まずはメディア研究者として、東京大学大学院の先端表現情報学博士課程にて、頭の中にある言語以前の映像的・触覚的なイメージ、すなわち「内言」の研究を行っている和田夏実さん。
和田さんは、「インタープリター」という肩書きのもと、研究だけでなく幅広い活動に取り組んでいます。ろう者の両親のもとで手話を第一言語として育った経験を背景に、さまざまな身体性の人たちと協働しながら、感覚が持つメディアの可能性について模索。例えば、触手話をもとにした「LINKAGE」や、共同の感覚を探るカードゲーム「Qua|ia」など、言葉と感覚の翻訳方法を探るゲームやプロジェクトを展開してきました。
和田「NPOで子どもたちと一緒に働きながら研究したり、市町村と一緒にマイノリティの方々が社会の中で感じているさまざまな痛みを出発点に法改正を模索したり……外に出なかった思いを引き出し、アウトプットにつなげていく“つなぎ手”のような立ち位置で、研究や表現活動に取り組んでいます」
続いて、経済学者でイェール大学助教授の成田悠輔さん。成田さんは教育・医療政策などを対象とした経済学・データサイエンスの研究に取り組む傍ら、データ・アルゴリズム・数理・思想を組み合わせ、事業や政策、そして社会の未来像をデザインするスタートアップ・半熟仮想株式会社を起業・経営しています。さらには報道・討論・バラエティ・お笑いなど、多様なテレビ・YouTube番組にも企画・出演。研究者/実業家/タレントと“三足のわらじ”を履いています。
成田「僕が研究のみならず企業経営、そして三流タレントのような活動も並行しているのは、これまで誰も試したことがない社会との関わり方を模索しているからです。人文・社会科学の領域では、研究者の社会との関わり方がほとんど探索されておらず、既存のアカデミア内部の人たちの思い込みにとらわれてしまっているという意識がありまして。特にここ数十年間の人文・社会科学は、社会一般で理解してもらえるようなインパクトをあまり生み出せていないと言えるでしょう。
であれば、いまの段階ではとりあえずメリット/デメリットや価値については考えすぎず、ひたすらランダムに実験して探索し続けることが大事だと思うんです。時に眉をひそめられたとしても、既存の研究者の価値観や考え方と全く違うベクトルを向いているような、もっとわけのわからない営みを試していくことが大事ではないでしょうか」
一方、ニュース解説メディア「The HEADLINE」の編集長を務めながら、ニュース解説者としてTV や雑誌、YouTube などに多数出演する石田健さんは「自分はもう少し手堅いアプローチを模索している」と言います。
政治学で修士号を取得しながら、起業家としての企業売却も経験している異色の経歴を持つ石田さん。ニュース解説という領域に注目したのは、そこが人文・社会科学と、アカデミア外の社会の交差点だと捉えているからだと言います。
石田「例えば、多くの人は普段、ウクライナ研究者の話を聞きたいとはあまり思いませんよね。でも、ウクライナで戦争が起きるなどして社会的にアテンションが集まると、その領域の研究者も重宝される。ニュースは人文・社会科学に注目やお金が集まりやすいポイントだと考えて、ニュース解説メディアを運営したり、ニュース解説者として活動したりしているんです」
The HEADLINEの執筆者は、主に人文・社会科学領域の若手研究者を中心とした執筆者で構成されていると言います。
それによって、昨今の研究知見を踏まえ、また研究者としての知的生産の“作法”に則って執筆されたニュース解説記事が実現。例えば、「なぜ辺野古で座り込みをする人がいるのか?ひろゆき氏のツイートで話題」という記事では、国際安全保障研究や沖縄研究の知見も引きながら、この問題を考える際に押さえておくべき背景や経緯が丁寧に整理されています。
そして4人目の登壇者は、De-Silo運営メンバーでもある久能祐子。久能はかつて京都大学工学博士を取得したのち、新規医薬品の創成を目指しバイオベンチャーを起業、世界初の治療薬を何度も商品化してきました。長きにわたり研究成果の社会実装に取り組んできた経験をもとに、社会における研究の役割についてこう語ります。
久能「私がかつて新しい医薬品の開発に成功した時は、『ニーズがあるから』と出口を決めて逆算するニーズドリブンではなく、新しい発見が見つかった時の『面白い!』という感情を出発点としたシーズドリブンの取り組みでした。ですから成田さんがおっしゃるように、うまくいくかどうかを考えるより前に、『これは誰もやっていない』と思ったことをたくさんやってみて、仮説検証を繰り返すことが大事だと思います」
「評価」「指標化」によって研究の出口を狭めないために
こうした各々の思想・実践を踏まえ、重要な論点としてあがったのは、研究成果の「評価」「指標化」について。
昨今では、人文・社会科学の研究成果の評価方法の改善や指標化が、各所で模索されています。人文・社会科学とアカデミア外を接続していくにあたって、客観的な評価・指標化の方法を確立することは、有効かつ必要なアプローチの一つと言えるでしょう。
他方、今回のセッションでは、そうした評価・指標化にあたっての課題についても議論されました。評価・指標化の重要性は認めつつも、それに際してどうしても生じうる「分野間比較」の問題を指摘したのは成田さんです。
成田「評価・指標化にもとづく予算配分の話になってくると、学問領域同士で重要性を比較して考えることになりますよね。すると人文・社会科学のように、その意義が定性的でドメスティックになりがちな学問領域は、どうしても軽視されやすい。それを乗り越えるために、いかに人文・社会科学の領域外の人に対する説得材料を持てるかが重要になってくるでしょう」
成田さんの懸念に対して、久能も「評価・指標化によって研究の出口が狭まらないようにしなければならない」と重ねます。
久能「インパクト投資をはじめ、研究に限らずさまざまな評価軸が新たに作られようとしていますし、それ自体が学問にもなっているので、評価・指標化をお金を集めるためのツールとして使うことは有効でしょう。しかし、それによって研究の出口を狭めてしまわないように注意する必要があると思います。研究の中長期的な意義を正確に評価するというのは、非常に難易度が高いことですから。『どんな可能性も見逃さない』という研究者の存在意義を、忘れないようにしなければなりません」
クリエイターエコノミーは研究資金調達の救世主となるか?
着実に議論や試行錯誤が重ねられてはいるものの、課題も山積している研究の評価・指標化。その確立により持続可能な研究体制が実現するまでには、まだまだ時間がかかるでしょう。
直近で研究者が資金を調達するための方法として、議論の俎上に載せられたのは、B to Cでの資金調達の可能性です。一般の人々に幅広く価値提供することで、B to Cビジネスとして研究者がお金を集める方向性はありえるのでしょうか?
そこで可能性が議論されたのが、「評価経済」や「クリエイターエコノミー」。近年ではYouTubeやTwitterなどのインフルエンサー、TikTok、Substackなど新たなツールの勃興とともに、SNSなどで培われた評価や信用を基盤とする経済社会を指す「評価経済」や、個人のクリエイターが自身のスキルによって収益化を行う経済圏である「クリエイターエコノミー」(参考)が注目を集めています。
評価経済やクリエイターエコノミーは、研究資金調達のツールとなりうるのでしょうか?
ここで久能が一つのモデルケースとして挙げたのが、ノーベル生理学・医学賞を受賞したことで著名な医師/医学者・山中伸弥氏の事例です。山中氏が手がけるiPS細胞の研究は、公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団への寄付金によって、年間数億円規模の研究費を集めているとのこと。寄付研究者の渡邊文隆氏をはじめチームを組成することで実現したこのモデルを、研究者によるクリエイターエコノミーの雛形にできないかと久能は提案しました。
久能「この山中先生の方法は、とてもクリエイティブな資金調達のモデルを作り上げているのではないかと思います。成功の秘訣は、iPS細胞で再生医療を推進するというビジョンを構築し、ビジョンオリエンテッドな取り組みとした点にあるでしょう。さらにはニュースレターや雑誌、支援者へのメール連絡、研究所を訪ねてきた人を迎え入れる仕組みまで細やかに設計し、チームで運用しているんです」
対して、「このモデルは、ノーベル賞を受賞して知名度や信用資産が蓄積されていた山中さんだからこそ成立しているのではないか」と成田さん。むしろ、研究の中身と資金調達を切り離すことが大事なのではないかと指摘します。
成田「将来的に大きな影響力を持つかもしれない研究は、現時点では広く理解されづらいことも少なくありません。それをファンを作る活動と混ぜ合わせてしまうと、研究が持つ可能性を狭めてしまう。だからクリエイターエコノミーによって一定の売上を作れたとしても、お金を調達する活動と、それによって行う研究活動を切り離した方が良いと思います。そもそも研究者は、芸能人や政治家と比べて、知名度資産で勝負するのは相当難しいでしょう。不利な戦いを強いられる市場は潔く諦めることが、一つの方向性じゃないかなと思いますね」
石田さんも成田さんと近い見解を示しました。「研究者が自分から発信して評価経済やクリエイターエコノミーで頑張ればいい」という考えは、理想主義すぎるのではないかと重ねます。
石田「研究内容や意義が伝わりづらく、クリエイターとしてファンを集めるのに相性が悪い分野で短期的にB to Cの資金調達を試みると、研究が歪んでしまうでしょう。自己啓発に寄ってしまったり、無理矢理『実はこの分野にも関係があります』とこじつけたりするほかなくなるからです。他方、わかりやすくてファン集めに相性が良い研究であっても、それはそれで市場の論理の影響を受けやすいので、また別の問題が生まれてくるでしょう。
ですから自分は、多少はメインの研究と離れた内容であっても、したたかにお金を取りに行くことが大切だと思うんです。例えばThe HEADLINEでは、ドイツの戦後補償問題を研究している若手研究者に、現在のドイツ政治に関するニュース解説記事を書いてもらっていたりします。これは研究者の専門性を軽視しているようにも取れるかもしれませんが、生きるために研究と全く関係のない仕事を仕方なくするのと比べると、かなり専門性を活かしながら食いつなぐことができる。研究者の側からもう少ししたたかに、社会と接続する場所を見つけていくことも、ある程度は必要なのではないでしょうか」
企業による“ベーシックインカム”提供の可能性
B to Cでのクリエイターエコノミーや評価経済といった方向性に加え、研究資金の調達方法としてもう一つ考えられるのが、企業からの資金提供というB to Bの方向性です。
成田さんは、自らが経営する半熟仮想株式会社において経済学やデータサイエンスの知見を活かした企業との共同研究や事業を手がけてきた経験をもとに、「B to Bでの資金調達の方が、人文・社会科学系の研究者とは相性が良いのではないか」と語ります。
成田「僕の場合はわかりやすい形で企業とコラボレーションしていますが、分野によっていくらでもやりようはあるはずです。例えば、人文系の研究者であれば言葉を使う専門家なわけですから、企業広報における炎上対策やリスク管理で重宝されるでしょうし、社内でもダイバーシティ&インクルージョンを実現するためのコミュニケーションを支援するかたちもあり得ます」
企業は、かつて大学が担っていたような、研究者に対して「ベーシックインカム的なもの」を提供する役割を果たすようになるのではないかと成田さん。例えば大手IT企業の研究所で、コンピューターサイエンスやデザイン、ビジュアライゼーションから経済学や心理学まで、幅広い領域の研究者を数百人単位で抱えているケースもあると言います。
成田「下手な大学よりも企業の方が、研究者に対するベーシックインカム的な機能を果たしてる印象がありますね。大学以外の場所に、かつて大学が果たしていたような研究者たちのベーシックインカムプラットフォーム的なものを作ることが大事なのではないでしょうか」
一方、久能は企業が研究者に対してベーシックインカム的なものを提供することの意義は認めつつ、B to Bでの研究資金調達という方法の限界も指摘します。
久能「あくまで企業は、ある程度短期的な視点で、企業活動のために研究者に資金を提供します。ですから、新しい研究成果そのもの、また10年後に100倍になるようなコンセプトやアイデアの発見に対して、企業からリターンを返していくかたちは実現しづらいでしょう」
さらに、短期的には企業活動に対する貢献がわかりづらい研究成果に対して、仮に中長期的な視座から投資が実現できたとしても、また別の問題が生じると指摘します。研究が企業内で実施されたものであるがゆえに、アイデアを企業に「売ってしまう」ことになる。結果として、研究者に適切な報酬が付与されないリスクを久能は懸念します。
久能「企業との共同研究は、研究者にとってハイリスク・ローリワードです。かつての私たちのように販売権を持っていないと、自分の会社で商品化まで実現したとしても、全体の売り上げから20%〜25%ほどの配分しかもらえない。最初に言い出した人やリスクを取った人に、適切な経済的な報酬はもちろん、社会的な尊敬なども含めたリワードが返ってこないと、イノベーションは起こりにくいのではないでしょうか」
アーカイブそのものが価値になる研究は、切り分けて考える
さらには、中長期的なタイムスパンであっても、そもそも領域のマイナー性ゆえに、わかりやすい社会的インパクトに結びつかないタイプの研究もあります。
和田さんは「10年後に成果が100倍になる」という領域とはまた別の位相で生じる、マイナーな領域の研究の難しさについて指摘します。
和田「私の研究領域には言語学も含まれているのですが、例えば消滅危機言語の研究では、コミュニケーションが起点にあるゆえに、人間らしい部分に依拠するしかないという難しさを抱えています。論文レベルで『この言語使用における流通先を増やしていくため、アイドルの方に使ってもらうといった方法しかないのではないか』という結論に至っていたり、二人しか話者がいないのに、その二人の仲が悪いからその言語の解析ができないという課題を抱えていたり。わかりやすい社会的インパクトには結びつかないかもしれないけれど、『大切なものをいかに長く守り続けていくか』という観点での議論も必要だと思います」
さらには成果のわかりやすさのみならず、既存の研究の前提条件が壁を設けてしまっているケースもあると言います。和田さんは自身が取り組んでいる手話研究を例に、研究がマジョリティの感覚に寄り添いすぎてしまっているという問題を指摘します。
和田「現在、私が切実に直面している研究上の問題は、論文が音声言語や書記言語で書かれすぎているということです。これでは音声言語や書記言語にアクセスできない人はその成果を享受できないですし、そもそも視覚的な思考にもとづく手話の研究を音声言語だけで進めることの限界もあります。
手話という言語の中で生まれてきた視覚的な思考方法は、17世紀頃から編み上げられています。ラベルを貼るように、名付けることによってしか“ある”ことにならない、というわけではないと思うんです。
私自身は、まず手話言語話者の方々が、手話で対話し考えていくプロセスに研究の起点や発見があると考えています。そうした言語由来の哲学や技術、思考を熟成させた先に、いかにそれを外化し、社会に接続していくためのアプローチを発見するか。それがいま、私の中では課題になっていますね」
和田さんの議論を受けて、「研究のタイプによって分けて対処策を考えるべきではないか」と石田さんは提言します。
石田「いまの和田さんのお話を聞いて、かつての新聞のあり方が参考になるのではないかと感じました。昔の新聞記者はいわゆる夜討ち朝駆けをしている人ばかりではなく、例えばアメリカに送られて、誰も気にかけないような日米同盟のアーカイブ資料を地道にリサーチしている人もいたんですよ。でも、扱いは小さくてもそれが新聞で報じられたのを歴史学者が見て、新たな研究成果に結びついた例もある。
ですから、いずれは10倍の成果を生むような研究と、少しずつコツコツとアーカイブを残していくこと自体に価値がある研究とで、切り分けて考えるほうがよいと思っています。おそらく収益構造も別々なほうがよいのではないでしょうか」
研究者のアカデミア外との関わり方、「評価」「指標化」に際しての留意点、B to CとB to Bでの研究資金調達におけるメリット/デメリット、さらにはマイナー領域の研究のあり方……セッションは多角的な論点が次々と議論されていきました。こうした“宿題”を踏まえ、デサイロではこれから、人文・社会科学領域の研究者を支援するアカデミック・インキュベーター・プログラムを推進していきます。
プロジェクトに関わる研究者の皆さんの実践については、ニュースレターやTwitter、Instagramなどを利用して継続的に発信していきます。また、Discordを用いて研究者の方々が集うコミュニティをつくっていければと考えています。ご興味のある方はニュースレターの登録やフォロー、あるいはDiscordに参加いただき、この実験にお付き合いいただけますと幸いです。
Text by Tetsuhiro Ishida & Masaki Koike, Edit by Masaki Koike
■登壇者プロフィール
石田健(いしだ・けん)
The HEADLINE編集長。ニュース解説の The HEADLINE で編集長を務める他、TV や雑誌、YouTube などに多数出演。日テレ系『スッキリ』月曜日コメンテーター、『ABEMAヒルズ』月次コメンテーター。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程(政治学)修了後、2015年に創業した会社を東証プライム上場企業に売却して、現職。関心領域は政治思想、東アジアの近代史、テクノロジー時代の倫理と政治。
久能祐子(くのう・さちこ)
社会起業家、フィランソロピスト。京都大学工学部で1000人中6人の女子学生の一人として学部、修士、博士課程を修了。1982年に京都大学工学博士を取得する。在学中にミュンヘン工科大学の研究員として1年間の留学を果たす。専攻した生化学、生物化学の分野で基礎研究者を目指すが、偶然出会った発見を基に新規医薬品の創成を目指すためキャリアチェンジを決断し、以後、バイオベンチャーの共同創業者兼CEO等として、日米で研究開発、会社経営を経験する。これらの事業を通して、1994年に世界初のプロストン系緑内障治療薬を商品化に成功。その後、2006年には慢性特発性便秘症及び過敏性腸症候群治療薬-世界初のクロライドチャネルオープナーの商品化にも成功した。これら二つの医薬品は世界中で1兆円を超える大ヒット商品となった。2012年には、新型ワクチン開発を目指すVLPセラピューティクスを、2014年には、滞在型社会起業家インキュベーターHalcyon(ワシントンDC)を、2017年には、滞在型企業内起業家支援インキュベーター、フェニクシー(京都)を共同創業した。現在は、ワシントンDCで社会起業家、フィランソロピストとして活動している。京都大学理事(2022年9月30日まで)のほか、ジョンズホプキンス大学医学領域評議員、ヘンリー・L・スティムソンセンター理事、お茶の水女子大学、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の評議。
成田悠輔(なりた・ゆうすけ)
夜はアメリカでイェール大学助教授、昼は日本で半熟仮想株式会社代表。専門は、データ・アルゴリズム・ポエムを使ったビジネスと公共政策の想像とデザイン。ウェブビジネスから教育・医療政策まで幅広い社会課題解決に取り組み、企業や自治体と共同研究・事業を行う。混沌とした表現スタイルを求めて、報道・討論・バラエティ・お笑いなど多様なテレビ・YouTube番組の企画や出演にも関わる。東京大学卒業(最優等卒業論文に与えられる大内兵衛賞受賞)、マサチューセッツ工科大学(MIT)にてPh.D.取得。一橋大学客員准教授、スタンフォード大学客員助教授、東京大学招聘研究員、独立行政法人経済産業研究所客員研究員などを兼歴任。内閣総理大臣賞・オープンイノベーション大賞・MITテクノロジーレビューInnovaB tors under 35 Japan・KDDI FoundationAward貢献賞など受賞。著書に『22世紀の民主主義:選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』など。
和田夏実(わだ・なつみ)
ろう者の両親のもとで手話を第一言語として育ち、大学進学時にあらためて手で表現することの可能性に惹かれる。視覚身体言語の研究、様々な身体性の方々との協働からことばと感覚の翻訳方法を探るゲームやプロジェクトを展開。東京大学大学院 先端表現情報学 博士課程在籍。同大学 総合文化研究科 研究員。
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