本日リリース!哲学者・柳澤田実との対話から生まれた、「んoon」の新曲『NANA』
本日4月10日、んoonが新曲「NANA」をリリースした
本楽曲は、んoonが哲学者・柳澤田実とのコラボレーションにより制作された楽曲だ。
参考記事:“崩壊したアンサンブル”を奏でるバンドは、「私たち性 we-ness」をどう眼差すのか?──バンド・んoon【DE-SILO EXPERIMENT 2024アーティスト紹介】
哲学者・柳澤田実が設定した研究テーマは「『私たち性 we-ness』の不在とその希求」だ。
柳澤は、日本社会における個人主義や自己責任論、オタク的な個人消費の普及が、多くの日本 人が「私たち」である感覚を持てず、「私」とそのささやかな延長しかわからないという状況から来 ているという予想からこの研究テーマを掲げた。日本人の「私たち」感覚の喪失と掘り起こしを、イメージのアーカイヴとフッテージによって顕在化させ、他者と共同する中間領域がすっぽりと抜けた2020年代の日本人の「セカイ」を作品として記録し、希望的 には「私たち」が生成する兆しを指し示すことを目指している。
“ねじ伏せない”社会変革のため、「私たち」の感覚にリアリティを付与する──哲学者・柳澤田実
んoon(ふーん)はボーカル、ベース、ハープ、キーボードというユニークな編成にて活動するバンドであり、ジャンルを定義することは難しい。
その状態を「崩壊したアンサンブル」と指摘されたこともある同バンドの輪郭は、メンバー個々=「私性 I-ness」ではなく、「彼/彼女たち性 they-ness」でもないものである。今回の楽曲「NANA」は、そんなバンドの在り方や佇まいそのものの構造が反映された楽曲になっている。
制作プロセスでは、次のようなことが重視されたという。
・作品の説明がなくても、耳を委ねられるような強度があること(ノリノリであること)
・作品の説明を経ると聴くものの聴取の体験がさらに変化すること(ノリノリであること)
また、同バンドのリーダーを務めるベーシストの積島直人は本楽曲の特徴を次のように記述する。
「『7拍のベースリフ』『4小節で円環するハープ』『3拍+4拍のキーボード』『28小節で一周するリズム』『2文字/3文字の言葉とメロディ』といった、輻輳する各パートの音が寄る辺なく並走していく。どれを聞いてもどれかとはズレていく感覚が常にあるが、かといって並走音と全く切り離されてもいない(並走音がなければズレの感覚もない)。全く異なっているのでもなく、全く同じところを見ているのでもないので、演奏中はなにをやりとりしているのかわからなくなる。無理やり楽譜に起こせないこともない、無理やり解読できないこともないテクスト群にある『掬いとれなさそうな澱の部分』を『私たち性 we-ness』と呼べるのかもしれない」
本楽曲は、4月14日のDE-SILO EXPERIMENT 2024 DAY2 17:30~18:00にWALL&WALLにて行われる、んoonによるライブパフォーマンスにて初披露となる。
またパフォーマンスに続く18:00~18:30には、んoonと柳澤が制作のプロセスを振り返りながら、研究“知”とアートの交差から何が立ち現れたのかを語るトークセッションも開催される。また、隣接するOMOTESANDO MUSEUMでは、柳澤の研究成果も展示予定だ。
積島はイベント当日について「会場で聞く際は、んoonのそれぞれの楽器に(どれでもよいです)耳をそばだてて私の輪郭が剥落しながらも、複数形になる感覚を体験していただきたい」と言葉にしている。研究とアートが交差することに生まれる新たな景色を目撃するために、ぜひイベントに足を運んでほしい。
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