メディアアーティスト・木原共と社会学者・山田陽子の対話から生まれた、会話型ゲーム「感情資本遊戯 β」【DE-SILO EXPERIMENT 2024 プログラム紹介】
DE-SILO EXPERIMENT 2024にて体験できるプログラムの詳細と背景意図を紹介する本シリーズ。今回取り上げるのは、社会学者・山田陽子が設定した「ポストヒューマン時代の感情資本」という研究テーマに対して、メディアアーティスト/ゲーム開発者・木原共がゲーム制作と体験型パフォーマンスという形で応答するプログラムだ。
DE-SILO EXPERIMENT 2024
【4/13~14開催】小説から音楽、映像、メディアアートまで。研究者とアーティストのコラボレーションにより、研究知を起点に「生の実感とリアリティ」を探る2daysイベント。
メディアアーティスト/ゲーム開発者・木原共は4/13(DAY1)に、制作した会話型ゲームのパフォーマンスと展示、そして社会学者・山田陽子とのトークセッションに出演する。
参加希望の方は下記公式サイトから「DAY1 パフォーマンスチケット」の購入を。
研究者とアーティストの協働により生み出された作品展示やパフォーマンスが展開される「DE-SILO EXPERIMENT 2024」。
本イベントに参画する研究者の一人である、社会学者・山田陽子が設定した研究テーマは「ポストヒューマン時代の感情資本」だ。
現在、多くの職場で、感情を抑え込んだり無かったことにしたりするのではなく、セルフコントロールに基づき上手に活用することが、生産性やモチベーションの維持に役立ち、自己の成長や人脈の拡大につながるとの考え方が一般化している。
アンガーマネジメント、心理的安全、レジリエンス、「ファンベース」など、人びとの共感や愛着や信頼を原資にするビジネスモデルやマーケティングの手法、感情管理の技法を活用した人的資源管理や職場のリスク管理も顕著である。
一方、家庭や親密な領域では、公正で公平な家事育児の分担やシャドウワークの可視化と支払い要求、時間の効率的な使い方、教育投資とリターンの予測、AI搭載マッチングアプリを介して効率よく相手に出会いたいという欲望など、私的で情緒的なつながりの範疇とみなされてきた事柄が合理性や効率性、公平性や正当性という基準によって測られ、査定されるようになっている。
このように「経済的行為のエモーショナリゼーション」と「感情生活の経済化合理化」が同時に進行する動的プロセスをイスラエル=フランスの社会学者エヴァイルーズは「感情資本主義」と呼んだ。
本研究では、感情資本、「エモディティ感情商品」、「ネガティブな関係性」をキーワードに、合理的なものと感情的なものの結びつきを解きほぐす。経済発展と技術革新が人間の感情や他者とのコミットメントを巻き込んだ結果、今何が生じているのかについて考察し、その未来を展望する。
※研究テーマの背景を伺ったインタビュー記事:
「感情」すらも資本化されていく時代に、「働くこと」と「癒し」を問い直す──社会学者・山田陽子
このテーマに応答するのが、新たな問いを人々から引き出す遊びをテーマに、実験的なゲームやインスタレーションの開発を行なう木原共だ。
参考記事:「感情」すらも資本化されていく時代の行く末を、「ゲーム」を通じて問う──メディアアーティスト/ゲーム開発者・木原共【DE-SILO EXPERIMENT 2024アーティスト紹介】
木原は今回のDE-SILO EXPERIMENT 2024に際して、会話型ゲーム「感情資本遊戯 β」という楽曲を制作した。
イスラエル=フランスの社会学者エヴァ・イルーズが2000年代に提唱した「感情資本」は、「経済的行為のエモーショナリゼーション」と「感情生活の経済化・合理化」が同時に進行する動的プロセスのことを示している。
「経済的行為のエモーショナリゼーション」とは、例えばマインドフルネスやレジリエンス、怒りのコントロールなど、自分の心身を「整える」スキルを介して生産性を上げたり、職場の人的資源管理やリスク管理をしたりする行為のこと。あるいは、「ファン」になってもらう仕掛けや物語を提供することで末永く愛用してもらうようなマーケティング手法などが、当てはまるとされている。
一方で「感情生活の経済化・合理化」とは、公正で公平な家事育児の分担、シャドウワークの可視化と支払い要求、家事育児のアウトソーシング、時短家電、教育投資とリターンの予測、マッチングアプリを介して効率良く相手を探す……「お金に換えられないもの」や「愛情」とみなされていたものが数量化され、交換される状態のことを指す。
メディアアーティスト/ゲーム開発者の木原共が開発した会話型ゲーム「感情資本遊戯 β」では、「感情資本化」が極端に進んだ、少し先の仮想の社会が舞台となる。その世界を生きる一人として、とある難しい決断を迫られた時、自分はどのように振る舞うのか──複数人との掛け合いを通して体験できる。
展示は複数人で体験可能であるが、4月13日(DAY1)に行われるパフォーマンスでは観客の一部がステージに上がり、直接作品世界に参加できる仕掛けとなっている。研究とアートが交差することに生まれる新たな景色を目撃するために、ぜひイベントに足を運んでほしい。
【DE-SILO EXPERIMENT 2024のチケット購入はこちら】