「サンプリング対象」として筒井康隆からオードリー・タンまでを取り入れる先鋭的なトラックメイカー/ラッパー・荘子it【DE-SILO EXPERIMENT 2024アーティスト紹介】
4名の研究者と11組のアーティストがコラボレーションして新作を制作し、「生の実感とリアリティ」に迫っていく2daysイベント「DE-SILO EXPERIMENT 2024」。同イベントにて制作/出演するアーティストを紹介する本シリーズで今回取り上げるのは、音楽ユニットDos Monosのメンバーであり、多分野のコラボレーターとの越境的な共作曲も多数手がけるアーティストの荘子itだ。
DE-SILO EXPERIMENT 2024
【4/13~14開催】小説から音楽、映像、メディアアートまで。研究者とアーティストのコラボレーションにより、研究知を起点に「生の実感とリアリティ」を探る2daysイベント
トラックメイカー/ラッパーの荘子itは4/14に出演し、気鋭の映像作家Pennackyとともにパフォーマンスを実施。参加希望の方は、下記ウェブサイトから4/14(DAY2)「Performance Ticket」の購入を。
「トラックメイカー/ラッパー」を肩書きとして活動する荘子itであるが、創作活動におけるインスピレーションは哲学書や小説、映画まで多岐に渡る。楽曲制作におけるサンプリング先は、フリージャズや民族音楽といった楽曲のみに留まらず、自身の感情を奮い立たせるようなあらゆる創作物であるという。
そもそも、アーティスト名の由来は思想家・荘子の思想「万物斉同(この世の最上位概念である道の立場に立てば、あらゆる対立と差別は消滅する)」に賛同しつつも、そこにプラスアルファ(it/何か)を加えたいという思いからだ。
日本大学藝術学部にて芸術論や哲学史、映画史を学んだ荘子itは、2015年に高校の同級生であるTaiTanと没 aka NGSとともに、Dos Monos(ドスモノス)を結成した。その後、2019年には1st Album『Dos City』を、2020年には2nd Album 『Dos Siki』をリリース。いずれも「芸術とはなにか?」「社会とはなにか?」という探求の末に生まれた表現を、音楽へと昇華させている。
多様なバックグラウンドを持ち「鬼才」とも呼ばれる荘子it/Dos Monosであるが、なかでも越境的な活動として知られるのが、台湾デジタル担当政務委員大臣であるオードリー・タンとともに制作した楽曲「Civil Rap Song ft. Audrey Tang」。タンが放つ未来に向けたメッセージをヒップホップの言語をもってアンプリファイ(増幅)している。
Dos Monos- Civil Rap Song ft. Audrey Tang
そのプレスリリースに荘子itは、「オードリー・タンの発話を、その音楽的ポテンシャルにおいて増幅し届けられることは、メッセージの内容それ自体を超えて、ぼくらにとっての文化的エンパワーメントとなるだろう」とコメントを添えている。異なる分野のアーティスト/クリエイター/研究者との交差により、化学反応を起こし、アーティストとして進化を遂げ続けるのが荘子it/Dos Monosである。
2022年には小説家・筒井康隆ともコラボレーションアルバム「だんでぃどん feat. 筒井康隆」をリリース。「文學界」2020年11月号に掲載された筒井の短編「ダンシングオールナイト」と、長編「ダンシング・ヴァニティ」をもとにした、20分にも及ぶ組曲アルバムとなっている。
さらに、2024年には林田球による漫画『大ダーク』とコラボレーションし、その独自の世界観と音の再現をすることを試みた楽曲「闇の骨楽 -DAI DARK BORN」を発表したり、「パラサイト 半地下の家族」などを配給する映画スタジオ・NEONが配給権を持つ映画「HOW TO BLOW UP」にDos Monosの未発表音源が使用されたりと、その越境の幅は広がり続けている。
「私たち性」と向き合い、ヒップホップクルーからロックバンドへと姿を変えたDos Monos
そんな越境的な活動を重ねてきた荘子itであるが、今回のDE-SILO EXPERIMENT 2024では、哲学者・柳澤田実の「we-ness 私たち性の不在とその希求」という研究テーマに応答し、気鋭の映像作家Pennackyとともにパフォーマンスを実施する。
今回のテーマ「私たち性 we-ness」は、Dos Monosとしての今後の活動を考える上では欠かせないキーワードでもあると、デサイロが運営するPodcastにて荘子itは語っている。
Dos Monosは2023年をもってヒップホップクルーとしての活動を終了し、2024年3月からロックバンドとして活動すると宣言した。その背景には「Dos Monosらしさ(俺ららしさ)」は、個性の調和を目指すヒップホップカルチャー/サンプリングカルチャーはなく、異なる方角を向きつつも共同体であろうとするバンドカルチャーの中にあるのではないかという考えがあったというのだ。
「we-ness 私たち性の不在とその希求」というテーマは、荘子itの持つ音楽的ポテンシャルによってどのように増幅されていくのか? また、両者の「私たち性」に向けた探求はいかに交差し、化学反応を起こすのか? ぜひDE-SILO EXPERIMENT 2024の場まで目撃しにきてほしい。
荘子itによるパフォーマンスに参加したい方は、下記のウェブサイトから4/14(DAY2)の「Performance Ticket」を選択し、購入をお願いしたい。
【DE-SILO EXPERIMENT 2024のチケット購入はこちら】
荘子it
1993年生まれ。 2015年に中高時代の友人であるTaiTan(MC)、没(MCDJ)とヒップホップグループDos Monosを結成。トラックメーカーとMCを担当。 グループ活動のほか、アーティストのプロデュースや楽曲提供も行う。2020年に『Dos Siki』、2021年に『Dos Siki 2nd season』『Larderello』などの作品をリリース。英ロンドンのバンドblack midi、米アリゾナのInjury Reserveや、台湾のIT大臣オードリータン、小説家の筒井康隆らとの越境的な共作曲も多数。2024年のDos Monos第二期はロックバンドとして活動することを宣言している。
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