研究者への道からラッパーへ──アーティスト・Skaaiの軌跡【DE-SILO EXPERIMENT 2024アーティスト紹介】
研究者とアーティストのコラボレーションにより、研究知を起点に「生の実感とリアリティ」を探る2daysイベント「DE-SILO EXPERIMENT 2024」。同イベントにて制作/出演するアーティストを紹介する本シリーズの初回で取り上げるのは、九州大学大学院にて情報法を専攻したのちにラッパーに転身した異例の経歴をもつSkaaiだ。
DE-SILO EXPERIMENT 2024
【4/13~14開催】小説から音楽、映像、メディアアートまで。研究者とアーティストのコラボレーションにより、研究知を起点に「生の実感とリアリティ」を探る2daysイベント
2024年に「研究」と「アート」をテーマとしたイベントを開催する上で、欠かせないと感じた人物がいた。
それが、DE-SILO EXPERIMENT 2024のDAY2(4/14)に出演いただくアーティストのSkaaiだ。
九州大学の大学院にて情報法を研究していたSkaaiは、AbemaTV「ラップスタア誕生 2021」をきっかけに、ラッパーとしての活動を本格化。その後、Spotifyが注目する次世代アーティスト「RADAR: Early Noise 2023」への選出や、国内最大規模のヒップホップフェスティバル「POP YOURS」に2年連続で出演するなど、破竹の勢いで活動を続けてきた。
23年9月には2nd EP『WE'LL DIE THIS WAY』をリリースし、Spotify O-EASTでの単独公演を成功させた。単独公演では「決別」をテーマとしたEPのコンセプトに沿うかたちで、ステージ上では過去の衣装を脱ぎ、新しい衣装を着るといった実験的なパフォーマンスが展開された。
そんなSkaaiは、「HOMEWORK」などの楽曲に代表されるように、日本語、英語、韓国語が入り混じったボーダーレスかつ知的なリリックと、リズミカルなフロウが特徴的だ。
知的なリリックでありながら、洗練されつつも“踊れる”楽曲を仕上げているのは、ビートメイカーとしてSkaaiの数々の楽曲をプロデュースしてきたuinだ。SIRUP、Skaai、uinの3名で手がけた楽曲「FINE LINE」に関するインタビューで、uinは次のように語っている。
uin:そうですね。Skaaiくんのリリックの「傀儡の糸」にあるように、やっぱり実は操られてる、誘導されてるみたいな状況ってたくさんあるんだろうなっていうのは、思うところあって。自分で情報を取捨選択しないと、本当に踊らされちゃう。わからないなりに、勉強しながらどれが正しくてどれが正しくないのか、そういうことを考えるきっかけになる曲になればいいなと思って、ビートはとりあえずもうノリよくてみんな踊れるけど、一度噛み砕いてみた時に、「あれ、なんかこれ、意外と踊っている場合じゃないかも?」みたいな、そういう感じでみんな捉えてくれたらいいなと思うんです。
思考するきっかけをつくる楽曲というものが、リリックだけではなくトラックメイキングの側面からも生み出されているのは特徴のひとつだと言えるだろう。
また、Skaaiは別のインタビューにて法学の研究と音楽表現を通じて成し遂げたいことの違いを次のように語っている。
「そうですね、学問と音楽とで役割が違うと考えています。例えば自分が、研究者になって論文を出すことの意義と、自分の音楽を通してメッセージを伝えることの意義と、それぞれ違った影響力があって。アートだけでは国は変えられないし、立法や政策を通して一国の社会を直接的に変える力を一番持っているのは政治家だと思うし、そういったところでそれぞれ役割があるのかなと思っています。僕自身、日本の社会に対して思うことはありつつも、参政権がほぼないみたいなところで苦しめられてもいますが、実際に研究を通して論文を書くと、それが国会で扱われるかもしれないというところで間接的に国政参加できるかもしれません。ただ、それはその論文を読む層だけに限られると思います。
ただ、アートに関していえば、例えば、スタジオジブリの宮崎駿監督は、高度経済成長期の日本の社会に対して思っていたことを自作のキャラクターを介して表現しました。しかし、難解な表現を避け、独創的な世界観とそのパッケージングの上手さをして、作品をマス層に届けたと思うんです。そういった意味でアートの可能性はとても広いものがあるのかなと思います。」
Skaaiのバックグラウンドをより知りたいと感じた方は、『GQ』や「Abema TV」で公開されているドキュメンタリーを参照してほしい。
my name is - 2023 - #95:Skaai(ラッパー) (HIPHOP) |ABEMA
4つの研究テーマへの応答としてのDJ Set
今回のDE-SILO EXPERIMENT 2024で、SkaaiはDJ Setでのパフォーマンスとトークを行う。Skaai以外のコラボレーターとなるアーティストは、ひとつの研究テーマに応答するかたちで作品を制作をすることに対し、Skaaiは4つの研究テーマ──「21世紀の理想の身体」「『私たち性 we-ness』の不在とその希求」「ポストヒューマン時代の感情資本」「『生きているという実感』が灯る瞬間の探求」──や、「研究」と「アート」の交差というイベント全体のコンセプトを反映したDJ Setでのパフォーマンスを実施し、DAY2のトリを飾っていただくことになる。
幼少期から韓国、マレーシア、シンガポール、カナダ、アメリカなどのさまざまな国での滞在を経験し、インタビューでも自身のルーツやアイデンティティについてたびたび言及してきたSkaaiが、「私たち性 we-ness」というテーマにどのように応答するのか、トークで語られるその内容を楽しみにしてほしい。
またSkaaiは、昨年末にAbemaTVで公開されたドキュメンタリーシリーズ「my name is」にて次のように語っている。
「バイブスで始まって、思考で終わりたい」
この言葉は、まさに今回のイベントの羅針盤のようなものになると感じたことを覚えている。DE-SILO EXPERIMENT 2024で展開されるパフォーマンスや展示、ワークショップなどをオーディエンスが体験し、その体験を通じて、いま私たちが置かれた状況や時代性、そしてこれからの社会のあり様を思考するきっかけを提供したい──。そんなイベントの意図を、この言葉が象徴しているように感じている。
「研究」と「アート」が交差し、次なる時代を考えるための知が立ち現れる現場をぜひ目撃し、参加してほしい。
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Skaai
1997年、アメリカ・ヴァージニア州生まれ、大分県育ちのアーティスト。幼少期から韓国、マレーシア、シンガポール、カナダ、アメリカでの滞在を経験し、九州大学に進学。2020年に同大学院に進学し、「情報法」を専門とする。同年に、SoundCloud上での楽曲リリースを皮切りにラッパーとしての活動を開始。AbemaTV『ラップスタア誕生 2021』ではその実力とポテンシャルを見込まれ、審査員から高い評価を得た。22年5月には国内最大規模のヒップホップフェスティバル『POP YOURS』に出演し、同年9月にはBIMとDaichi Yamamotoが客演参加した自身初のEP『BEANIE』を発表。23年9月には「決別」をテーマとした2nd EP『WE’LL DIE THIS WAY」をリリース。日本語、英語、韓国語が入り混じったボーダーレスかつ知的なリリックと、リズミカルなフロウが特徴的。
▶出演者の楽曲をキュレーションした「DE-SILO EXPERIMENT 2024」公式プレイリストも公開中!