【2024年4月刊】人新世とツーリズム、結婚の社会学、ヴァナキュラー・アート……デサイロが注目したい人文・社会科学の新刊10冊
「いま私たちはどんな時代を生きているのか」──人文・社会科学領域の研究者とともにこの問いを探り、研究のなかで立ち現れるアイデアや概念の社会化を目指すアカデミックインキュベーター「デサイロ(De-Silo)」。
2024年4月に刊行の人文・社会科学領域の新刊書の中から、デサイロとして注目したい10冊をピックアップしました。
気になるタイトルがあれば、読書リストにぜひ加えてみてください。
1.ヴァナキュラー・アートの民俗学
概要(版元ウェブサイトより引用)
ヴァナキュラーを知らずして、現代の多様な文化現象を把握することはできない。普通の人びとのありきたりで、平凡な日常世界での創作活動=ヴァナキュラー・アートを民俗学的視点から浮かび上がらせる未完のプロジェクトとしてのヴァナキュラー文化決定版論集。
著者
菅 豊 (スガ ユタカ) (編集)
東京大学東洋文化研究所教授。1963年生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科中退。博士(文学)。専門は民俗学。1991年国立歴史民俗博物館民俗研究部助手、1996年北海道大学文学部助教授、1999年東京大学東洋文化研究所助教授・准教授を経て2007年より現職。主な著書に『修験がつくる民俗史』(吉川弘文館、2000年)、『川は誰のものか』(吉川弘文館、2006年)、『「新しい野の学問」の時代へ』(岩波書店、2013年)、『鷹将軍と鶴の味噌汁』(講談社、2021年)など。
発売日
2024年4月1日
版元
東京大学出版会
2.声なきものの声を聴く──ランシエールと解放する美学
概要(版元ウェブサイトより引用)
“声を持たないとされてきた者の声を聞こえるようにし、不可視とされてきた者を可視的にし、能力を持たないとされてきたものの能力を主張する。それこそが政治なのだ──”
本書ではフランス現代思想の重鎮、ジャック・ランシエールの美学・芸術思想を扱う。だが、取り上げるのはランシエールだけではない。ドゥルーズ、ブルデュー、カント、リオタール、グリーンバーグ、フローベールらを手がかりに、現代思想のあり方そのものを問い、日常生活のなかに息づく美や感性を見つめ直す。
若き俊英による待望の芸術論。
著者
鈴木 亘 (スズキ ワタル) (著/文)
1991年生まれ。現在、東京大学大学院人文社会系研究科助教。専門は美学。主な論文に、「ランシエールの政治的テクスト読解の諸相──フロベール論に基づいて」(『表象』第15号、2021年)、「ランシエール美学におけるマラルメの地位変化──『マラルメ』から『アイステーシス』まで 」(『美学』第256号、2020年)。他に、「おしゃべりな小三治──柳家の美学について 」(『ユリイカ』2022年1月号、特集:柳家小三治)など。訳書に、ジョルジュ・ディディ=ユベルマン『受肉した絵画』(水声社、2021年、共訳)など。
発売日
2024年4月4日
版元
堀之内出版
3.承認をひらく──新・人権宣言
概要(版元ウェブサイトより引用)
民主主義社会とは「個人の尊厳から出発し、人間らしい生活ができないような貧困・排除があってはならない社会」である。その実現のために、今こそ社会的相互承認と社会参加が求められる。あるべき「承認」の本質とは何か。ロングセラー『豊かさとは何か』以来、民主主義の核心を真摯に問い続けてきた著者の到達点。
著者
暉峻 淑子 (テルオカ イツコ) (著/文)
1928年生まれ.経済学者.日本女子大学文学部卒業.
法政大学大学院社会科学研究科経済学専攻博士課程修了.経済学博士.
日本女子大学教授,ベルリン自由大学,ウィーン大学の客員教授などを経て,埼玉大学名誉教授.NGO/NPO法人国際市民ネットワーク代表.「対話的研究会」主宰.
著書―『豊かさとは何か』『豊かさの条件』『社会人の生き方』『対話する社会へ』(以上,岩波新書),『ほんとうの豊かさとは――生活者の社会へ』『格差社会をこえて』(以上,岩波ブックレット),『サンタクロースってほんとにいるの?』(福音館書店),『ゆとりの経済』(東洋経済新報社),『豊かさへ もうひとつの道』(かもがわ出版),Nippons Neue Frauen(日本の新しい女性)(共著,Rowohlt Verlage)ほか.
発売日
2024年4月6日
版元
岩波書店
4.東アジアのメディア・ジェンダー・カルチャー――交差する大衆文化のダイナミズム
概要(版元ウェブサイトより引用)
2000年代以降、K-POPや韓流ドラマなどといった東アジア発の大衆文化が世界を席巻している。新たな東アジアのメディア状況、ジェンダー状況と、そこから生まれてきた大衆文化のカルチャー状況を総合的に提示する論集。
著者
佐野 正人 (サノ マサト) (編/著)
所属:東北大学国際文化研究科教授
専攻分野:東アジア比較文化、東アジア比較文学、東アジア比較メディア論
主要著作・論文:佐野正人編『思想・文化空間としての日韓関係――東アジアの中で考える』、明石書店、2021)、「旅をする文学――明治三〇年代日本文学と東アジアネットワーク」、『日本近代文学』第58集、1998)、「佐藤清・植民地的な主体として――植民地・京城帝大・英文学」(筑波大学文化批評研究会編『〈翻訳〉の圏域――文化・植民地・アイデンティティ』、2004)、「李箱 ポストコロニアルな詩人」(『現代詩手帖』2019年8月号、思潮社、2019)、「モダニズム文学の旗手 金起林の足跡――北と南の間で行方不明になった詩人」(波田野節子・斉藤真理子・きむふな編『韓国文学を旅する60章』、明石書店、2020)など。
妙木 忍 (ミョウキ シノブ) (編/著)
所属:東北大学国際文化研究科 准教授
専攻分野:社会学、ジェンダー研究、観光研究
主要著作・論文:『女性同士の争いはなぜ起こるのか――主婦論争の誕生と終焉』(青土社、2009年)、『秘宝館という文化装置』(青弓社、2014年)、「第2章 地域に暮らした女性たち――定山渓温泉と芸者文化」(北海道ジェンダー研究会編『ジェンダーで読み解く北海道社会――大地から未来を切り拓く女性たち』、明石書店、2022年)など。
発売日
2024年4月8日
版元
明石書店
5.結婚の社会学
概要(版元ウェブサイトより引用)
「ふつうの結婚」なんてない。結婚の歴史を近代から振り返り、事実婚、パートナーシップなど、従来のモデルではとらえきれない家族のかたちを概観する。
著者
阪井 裕一郎 (サカイ ユウイチロウ) (本文)
1981年、愛知県生まれ。慶應義塾大学文学部准教授。専門は家族社会学。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。福岡県立大学人間社会学部専任講師、大妻女子大学人間関係学部准教授を経て、2024年4月より現職。著書に『仲人の近代』(青弓社)、『事実婚と夫婦別姓の社会学』(白澤社)、共著に『結婚の自由』(白澤社)、『社会学の基礎』(有斐閣)、共訳書にエリザベス・ブレイク『最小の結婚』(白澤社)などがある。
発売日
2024年4月10日
版元
筑摩書房
6.ことばの学習のパラドックス
概要(版元ウェブサイトより引用)
赤ちゃんはなぜ、ことばがわかるようになるのか? 認知科学の第一人者である著者がこの謎に取り組んだデビュー作。待望の文庫化。
著者
今井 むつみ (イマイ ムツミ) (本文)
1989年慶應義塾大学社会学研究科後期博士課程修了。1994年ノースウエスタン大学心理学博士。慶應義塾大学環境情報学部教授。専門は認知科学、言語心理学、発達心理学。著書に、『親子で育てる ことば力と思考力』(筑摩書房)、『言葉をおぼえるしくみ』(共著、ちくま学芸文庫)、『ことばと思考』『英語独習法』(ともに岩波新書)、『言語の本質』(共著、中公新書)などがある。
発売日
2024年4月12日
版元
筑摩書房
7.人新世とツーリズム: 地球とツーリズムの未来を考える
概要(版元ウェブサイトより引用)
人新世とは何か。
今や、自然科学だけではなく社会・人文科学の分野から人新世に関する議論が活発になっている。本書は、「人新世という時代に私たちはいかに生活し、地球システムをいかに維持していくべきか。また、地球を改変する力、営力となったツーリズムは人新世時代にどう向き合うべきか」を問うたものである。
著者
片瀬 葉香 (カタセ ヨウカ) (著/文|編集)
1997年、コーネル大学大学院(MPA)、2000年、コロンビア大学大学院(MPhil)、 2008年、早稲田大学
大学院社会科学研究科(地球社会論専攻)博士後期課程満期退学。
2012年、コロンビア大学地球研究所客員研究員を経て、現在、九州産業大学地域共創学部観光学科准教授。
専門は観光学。主な論文に「人新世におけるツーリズムの再検討」(九州産業大学地域共創学会誌、2022年)など。
横山 秀司 (ヨコヤマ ヒデジ) (著/文)
1981年、明治大学大学院文学研究科(地理学専攻)博士課程単位取得満期退学。博士(地理学)(明治大学)。
元・九州産業大学商学部教授、現・九州産業大学名誉教授。 専門は観光地理学、景観生態学。
主著に『景観生態学』(単著)古今書院、『景観の分析と保護のための地生態学入門』(編著)古今書院、『観光のための環境景観学 真のグリーン・ツーリズムにむけて』(単著)古今書院、『ジオツーリズム論 大地の遺産を訪ねる新しい観光』(編著)古今書院など。
発売日
2024年4月19日
版元
九州大学出版会
8.なぜ生命倫理なのか-生と死をめぐる現代社会の見取図-
概要(版元ウェブサイトより引用)
生殖補助医療技術、妊娠中絶、脳死と臓器移植、安楽死・尊厳死等から環境倫理、優生思想、反出生主義まで、我々の身近にある「いのち」の問題として当事者の声をひろいながら初学者にもわかりやすく説明した生命倫理の入門書。
著者
朝倉輝一 (アサクラ コウイチ) (著/文 | 編集)
1959年生まれ
最終学歴:1993年3月 東洋大学 大学院 文学研究科 哲学専攻博士後期課程満期退学
学位:2002年3月 博士(乙・文)第60号 東洋大学 【論文題目:「討議倫理学の可能性」】
職歴:2016年4月 東洋大学法学部教授 2024年3月定年退官。2024年4月 東洋大学非常勤講師
単著:『討議倫理学の意義と可能性』法政大学出版局(2004年)。
共著:『哲学をしよう!』東洋大学編著、大成出版社、2012年11月。『沖縄で学ぶ福祉老年学』朝倉 輝一・金城一雄・國吉和子・山城寛・西尾敦史・宮本晋一・ 玉木千賀子・村田真弓、学文社、2009年。『21世紀の人間論的課題 医療と人間』朝倉 輝一・霜田求・樫則章・佐藤労・黒瀬勉、ナカニシヤ出版、2007年、2011年。『ケアの生命倫理』朝倉 輝一・平山正実編著、日本評論社 2004年4月
小館貴幸 (コダテ タカユキ) (著/文)
1972年埼玉県生まれ。立正大学大学院文学研究科哲学専攻博士後期課程単位取得満期退学。立正大学人文科学研究所研究員。介護福祉士(主に難病・ターミナルケア)。立正大学、早稲田大学、明治大学、法政大学、湘南医療大学ほか非常勤講師。
著書に、『シリーズ・保育の基礎を学ぶ② 実践に活かす子ども家庭福祉』(共著、ミネルヴァ書房、2021年)、『シリーズ・保育の基礎を学ぶ① 実践に活かす社会福祉』(共著、ミネルヴァ書房、2020年)、『サイエンスとアートとして考える生と死のケア――第21回日本臨床死生学会大会の記録』(共著、エム・シー・ミューズ、2017年)、『ケアの始まる場所――哲学・倫理学・社会学・教育学からの11章』(共著、ナカニシヤ出版、2015年)、『死ぬ意味と生きる意味――難病の現場から見る終末期医療と命のあり方』(共著、上智大学出版、2013年)など。
近藤弘美 (コンドウ ヒロミ) (著/文)
1981年埼玉県生まれ。
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科比較社会文化学専攻単位取得満期退学。東京農工大学、東京薬科大学、清和大学ほか非常勤講師。
「AI、デジタル化社会における生殖補助医療技術の発展と倫理的問題」(『総合人間学16』)
米田祐介 (マイタ ユウスケ) (著/文)
1980年青森県生まれ。
立正大学大学院文学研究科哲学専攻博士後期課程単位取得満期退学
東洋大学・立正大学・東京電機大学・湘南医療大学ほか非常勤講師。
著書に『ケアの始まる場所――哲学・倫理学・社会学・教育学からの11章』(共著、ナカニシヤ出版、2015年)、『歴史知と近代の光景』(共著、社会評論社、2014年)、『日本海沿いの町 直江津往還――文学と近代からみた頸城野』(共著、同、2013年)、『現代文明の哲学的考察』(共著、同、2010年)、『マルクスの構想力――疎外論の射程』(共著、同、2010年)など。
発売日
2024年4月22日
版元
大学教育出版
9.新版 日本の動物政策
概要(版元ウェブサイトより引用)
動物への配慮ある社会を実現するために
人と動物の関係をめぐる様々な政策、法律、制度とその運用についてトータルに解説する決定版。動物を愛する全ての人々のための一冊。最新の動向をふまえた改訂新版。
著者
打越 綾子 (ウチコシ アヤコ) (著/文)
成城大学法学部教授。東京大学法学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科博士号取得。『人と動物の関係を考える』(編著)、『動物問題と社会福祉政策』(単著)(いずれもナカニシヤ出版)。
発売日
2024年4月27日
版元
ナカニシヤ出版
10.デジタル・デモクラシー: ビッグ・テックを包囲するグローバル市民社会
概要(版元ウェブサイトより引用)
巨大IT企業vs.民主主義――市民たちの闘い
ビッグ・テックが独占するデジタル技術によって、人々の監視や搾取が世界的に広がり、抗議の声が各地にわきおこっている。公正で倫理的なテクノロジーを求める、デジタル時代の民主主義の姿を生き生きと描き出す。
著者
内田 聖子 (ウチダ ショウコ) (著)
NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)共同代表。自由貿易協定やデジタル政策のウォッチ、政府や国際機関への提言活動などを行なう。共著に『コロナ危機と未来の選択――パンデミック・格差・気候危機への市民社会の提言』(コモンズ、2021年)、編著に『日本の水道をどうする!?――民営化か公共の再生か』(同、2019年)。
発売日
2024年4月30日
版元
地平社
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また先日開催した「DE-SILO EXPERIMENT 2024」にて、アーティストたちとの協働プロセスの中で、研究テーマを深めていった4名の研究者による最終成果をまとめた書籍を限定1,000部で出版します。一般販売はせず、サポート(寄付)への返礼としてみなさまのお手元にお届けするものとなっており、詳細やご予約は下記リンクをご確認ください。
https://de-silo.notion.site/De-Silo-c1433663965045c0ac638cdee5ebe442