新しい「知の拠点」から、次なる社会を構想する:一般社団法人デサイロ、2025年の展望
2025年、一般社団法人デサイロは「新しい知の拠点づくり」「多様なセクターとのコラボレーションプロジェクトの創出」を軸に、その活動をよりスケールさせていく──。代表理事を務める岡田弘太郎が、2025年の展望をまとめた。
大規模言語モデル(LLM)を活用したAIの急速な進化や、ドナルド・トランプ次期大統領の再選も影響する「国際社会の多極化」など、いまさまざまな変化が起きています。
複雑化する世界のなかで、一般社団法人デサイロでは立ち上げから現在に至るまで、人文・社会科学分野の研究から生まれた知を頼りに、いま私たちが置かれている状況や時代の向かう先を読み解くためのプロジェクトを展開してきました。
関連記事:「アート」や「ビジネス」との交差により、人文・社会科学の知を"社会化"する【一般社団法人デサイロ:2024年活動報告】
昨年の活動については2024年末に振り返り記事を掲載しましたが、25年は次の2つを注力領域として、活動をよりスケールさせていきます。
1.新しい「知の拠点」づくり
これまでデサイロでは、いま私たちが生きている時代を読み解くためのレクチャーシリーズ「Academic Insights」の運営や、人文・社会科学分野の研究者を伴走支援する「デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム」の運営などを通じて、多くの研究者の方々とネットワークが生まれていきました。
オンラインベースでの活動も多いなか、次のフェーズに向かうためには、人々が集い、議論や交流し、次なる知を生み出していくようなリアルな拠点が必要だと感じるようになりました。
そこで、デサイロでは新たに知の拠点となるスペースを開設予定です。いわゆるオフィスというよりも、トークイベントや研究会の開催、YouTubeやPodcastの収録、アート作品を展示するギャラリーなどの形式での活用を予定しています。
参照点としているのは、先人たちの次のような活動です。今西錦司や伊谷純一郎、梅棹忠夫といった研究者が学際的な議論を繰り広げていた1964年創設の「近衛ロンド(京都大学人類学研究会)」、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターで開催されていた「ised(情報社会の倫理と設計についての学際的研究)」、あるいは青木昌彦が主宰した東京財団仮想制度研究所での研究会など、その時代を担う知識人たちが集い、知的文化の磁場が生まれていたような場所です。
関連記事:「自前の思想」が立ち現れていく学際的な場を目指して──2023年、デサイロの展望 - De-Silo
また拠点づくりと連動し、会員制メンバーシップの開設も予定しています。参加特典として、Academic Insightsシリーズへの無料参加やそのほかイベントの参加権などを提供します。Academic Insightsは、2025年から四半期ごとにテーマを設定した連続シリーズとしてリニューアルを予定しており、25年4月から6月のテーマは「アメリカン・ダイナミズムの精神史」。いまアメリカをダイナミックに動かしてきた精神/政治思想/宗教史に迫ります。
会員制メンバーシップについては、特典やサービスを前提としたものではなく、あくまでもデサイロの考える理念や、新しい知の拠点に参加し、ともに盛り上げたいと考えてくれる方向けの会員制度になります。リリースは25年4月を予定しており、また本ニュースレターでお知らせします。
2.多様なセクターとのコラボレーションプロジェクトの創出
2つ目のチャレンジは、企業や大学などの多様なセクターとのコラボレーションプロジェクトの創出です。
昨年から、大学や企業の新規事業開発/研究開発に関連する部署の方々とプロジェクトをご一緒する機会が少しずつ増えてきました。当然ながら、人文・社会科学の知を社会にプレゼンテーションしていくうえで、私たちひとつの団体だけではできることが限られます。そこで企業や大学などの多様なセクターと連携し、プロジェクトを一つひとつ形にしていくことで、人文・社会科学の分野から生まれる理論や概念の社会化と、クライアント企業の課題解決に貢献していく予定です。
2025年4月には、人文・社会科学の知見を生かしたコンサルティングサービスの立ち上げも予定しています。人文・社会科学分野の「研究者ネットワーク」と、多様なフォーマットへの出力が可能な広義の「編集力」をケイパビリティとしながら、クライアント企業の社会的価値の探索や、パーパス/理念の策定や全社への浸透、研究開発ロードマップの策定、新しい事業領域の探索などを通じて、企業課題に貢献するサービスの提供を目指しています。
デサイロとのコラボレーションプロジェクトに関心をもっていただける方は、ウェブサイトのお問い合わせフォームからぜひご連絡をいただければ幸いです。
アカデミックインキュベーターから研究所/シンクタンクへ
当初は、人文・社会科学分野の研究者を支援するアカデミックインキュベーターとして立ち上げたデサイロでしたが、活動が広がるにつれて、この表現が適さなくなってきました。
今後は、人文・社会科学分野の研究者と協働するインディペンデントな研究所/シンクタンクとしての活動を強化していく予定です。研究支援、自社出版レーベルの運営、メンバーシップ、コンサルティングサービスの提供、研究と多分野のかけ合わせによるプロジェクト創出などを通じて、新しい研究エコシステムの形成を目指していきます。
人文・社会科学分野の知の可能性をともに切り拓きたいと考えてくださる方は、活動の輪にぜひ継続的に参加してもらえれば幸いです。
Top Image : Eugenio Mazzone on Unsplash
【De-Siloではサポーター(寄付者)を募集中です】
非営利型一般社団法人として運営しているデサイロでは、サポーター(寄付者)を募集しております。私たちの活動に共鳴し、デサイロおよび研究から生まれる知の可能性をともに切り拓き、豊かにしていく営みを共にしていただける方は、ぜひ申し込みをご検討ください。現在、1万円を寄付いただくごとに、出版レーベル「De-Silo Label BOOKS」の第一弾書籍である 論集『生の実感とリアリティをめぐる四つの探求──「人文・社会科学」と「アート」の交差から立ち現れる景色』(限定1000部) を1冊プレゼント中です。デサイロ第1期の研究プロジェクトに参加した人文・社会科学分野の4名の研究者(磯野真穂、柳澤田実、山田陽子、和田夏実)による論考に加え、3名の小説家(山内マリコ、李琴峰、松田青子)による書き下ろし短篇が収録されています。サポーターの詳細や申し込み方法は、以下のリンクよりご確認ください。