AIと人文・社会科学の知は、音楽制作のあり方をいかに変えるのか?──Qosmo/Neutone・徳井直生×音楽研究者・加藤夢生【Podcast】
ライブ演奏、レコード、CD、iPod、サブスクリプションサービス……音楽の楽しみ方は時代の技術とともに変遷してきました。こうしたテクノロジーの変化は、音楽を「聴く側」だけでなく、音楽家や演奏家、音楽産業の従事者など「作る側」にも影響を及ぼします。
さらに近年、生成AIなどの急速な発展に応じて、研究者/音楽家/音楽産業従事者/技術者はそれぞれのやり方で、これからの「技術と音楽」の関係性がいかに変わっていくか?という課題に向き合わざるを得ない状況になりつつあります。
そうした状況に対し、「AIと音楽家が織りなす『ライブ性』──人間と機械の創造的な関係性の模索」というテーマを掲げ、音楽研究者の立場で介入を試みているのが、デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム採択者のひとりである、ロンドン大学ゴールドスミス校音楽学部博士課程在籍中の加藤夢生さんです。
参考:音楽家とAIの創造的な関係とは?「ライブ性」から探る、音楽と技術、人間の次なる関係性──音楽研究者・加藤夢生
今回は特別企画として、アーティスト/研究者の徳井直生さんをPodcastにご招待。AIの研究と技術開発をベースに新しい音楽表現を開拓する徳井さんは、株式会社Qosmo/Neutone代表取締役としても活動。音楽を取り巻く研究知の社会実装にいち早く取り組んできた先駆者だと言えます。
本企画では、人文・社会科学的な視点から芸術領域における人間と技術の今日的関係性を模索する加藤さんと、工学やビジネスから研究と実践の往還に取り組んできた徳井さんが対談。文系・理系を超えて、「研究知はいかに音楽制作のための技術開発のあり方を変えるか?」についてディスカッションしていただきました。
【今回のPodcastのハイライト】
徳井さん・加藤さんのバックグラウンド
徳井さん:人工知能研究から音楽の道へ。研究や技術開発と作品制作の往還
加藤さん:人文・社会科学から音楽家とAIの関係に迫るアプローチ
研究と社会実装の接点:
研究過程で 定量的な評価基準(工学)と芸術表現(音楽)の折り合いをいかにつけてきたのか?
AI研究を軸に、起業家として音楽制作と技術開発を接続させてきた背景
「バグ」を創造性の源として捉える
文系・理系の垣根を越える「共通言語」の発見:
アーティストが「誤用」できるAIツールをつくる
従来の理系的なメディアアートから、「いまこの時代に何が求められているのか?」を人文的に捉えた創作へ
(収録日:2024年8月29日)
【徳井さんのご活動について】
徳井さんが代表を務めるNeutone社では、AIを用いた新しい音楽の形を模索しています。2024年4月に公開した製品「Neutone Morpho」では、AIを用いて即興で音を変化させる「リアルタイム・トーン・モーフィング」という技術を実装。入力された音声を、全く異なる楽器の音などに変換することができます(参考)。
■プロフィール
徳井直生(とくい・なお)
アーティスト/研究者。AIを用いた人間の創造性の拡張を研究と作品制作の両面から模索。アーティスト、デザイナー、AI研究者/エンジニアなどから構成されるコレクティブ、Qosmo(コズモ)を率いて作品制作や技術開発に取り組むほか、23年7月設立のNeutone(ニュートーン)では、AIを用いた新しい「楽器」の開発を手がける。2021年1月には、これまでの活動をまとめた『創るためのAI — 機械と創造性のはてしない物語』(BNN)を出版し、21年度の大川出版賞を受賞。博士(工学)。 https://naotokui.net/
加藤夢生(かとう・むい)
7歳からクラシック・ピアノを始め、その後、音楽史や音楽理論を学ぶ。中学ではHTMLやプログラミングを独習し、ウェブサイトやソフトウェアを作成、後者のいくつかは雑誌で紹介された。高校からジャズを独学。2016年、東京音楽大学ピアノ科卒業。副専攻の民族音楽学では日本のジャズ史に関する卒論を提出。翌2017年、東京芸術大学大学院音楽研究科音楽文化学専攻に進学し、植村幸生(主査)研究室にて民族音楽学、毛利嘉孝(副査)研究室で文化研究・メディア論を学び、日本のジャズ・フェスティバル研究で2019年修士号取得。
同2019年、同大学国際芸術創造研究科博士課程に進学し、毛利教授に師事(単位取得満期退学)。同年9月、ロンドン大学ゴールドスミス校音楽学部修士課程に留学、ポピュラー音楽学の泰斗、キース・ニーガス教授に師事。音楽学科目の他、他科のメディア論関連の授業を履修。Covid-19の影響で増えたライブストリーミング演奏への関心から、現代ジャズ音楽家のオンライン・プラットフォームの活用とそのライブ性に関する修士論文で2020年9月、2つ目の修士号(Master of Arts with Distinction) を取得。2021年9月同大学音楽学部博士課程に進学、在学中(PhD Candidate)。
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