【2024年7月刊】アーレント新刊、バトラー入門、サブカル雑誌から見る「若者の政治関心」……デサイロが注目したい人文・社会科学の新刊10冊
「いま私たちはどんな時代を生きているのか」──人文・社会科学領域の研究者とともにこの問いを探り、研究のなかで立ち現れるアイデアや概念の社会化を目指すアカデミックインキュベーター「デサイロ(De-Silo)」。
2024年7月に刊行の人文・社会科学領域の新刊書の中から、デサイロとして注目したい10冊をピックアップしました。
気になるタイトルがあれば、読書リストにぜひ加えてみてください。
1.バトラー入門
概要(版元ウェブサイトより引用)
クィア理論って何? ドラァグ論ってどこから来たの? パフォーマティブってつまりどういうこと? 『ジェンダー・トラブル』がはじめてわかる!
著者
藤高 和輝(著)
1986年、大阪市出身。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。同科助教を経て、現在、京都産業大学文化学部准教授。専門は現代思想、フェミニズム、クイア理論、トランスジェンダー研究。著書に『ジュディス・バトラー――生と哲学を賭けた闘い』(以文社)『〈トラブル〉としてのフェミニズム──「とり乱させない抑圧」に抗して』(青土社)『ノット・ライク・ディス――トランスジェンダーと身体の哲学』(以文社)がある。
発売日
2024年7月10日
版元
筑摩書房
2.真理と政治/政治における嘘
概要(版元ウェブサイトより引用)
国際政治であれ日本政治であれ、またそれに対応・反復・拡大・拡散するメディアやSNSの力も大きく影響して、(少なくとも)政治にかかわる出来事や事象をめぐって嘘が事実となり、事実や真実は嘘あるいは無となり…という状況の中でわれわれは今を生きている。
そこで、『エルサレムのアイヒマン』をめぐるバッシングと論争を機縁として書かれた、政治哲学者アーレントの精髄をしめす代表的試論「真理と政治」(1967)および、その4年後に書かれた「政治における嘘――国防総省秘密報告書(ペンタゴン・ペーパーズ)についての省察」(1971)の二篇をあらためて読んでみたい(それぞれ『過去と未来の間』『暴力について』より収録)。
「ポスト・トゥルース」や「フェイク・ニュース」といった新語が話題になり、「ポピュリズム」と呼ばれる政治現象が世界中で台頭し、デモクラシーあるいはリベラリズムが機能不全におちいっているかに見える現在、事態のあり方と意味を考えるためにも。
著者
ハンナ・アーレント(原著)
1906-1975。ドイツのハノーファー近郊に生まれる。ナチ政権成立後(1933)パリに、1941年にアメリカに亡命。バークレー、シカゴ、プリンストン、コロンビア各大学の教授・客員教授、ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチの哲学教授などを歴任した。著書『アウグスティヌスの愛の概念』(1929、みすず書房2002)『全体主義の起原』全3巻(1951、みすず書房1972、1974、2017)『人間の条件』(1958、筑摩書房1994、ドイツ語版『活動的生』1960、みすず書房2015)『ラーエル・ファルンハーゲン』(1959、みすず書房1999、新版2021)『エルサレムのアイヒマン』(1963、みすず書房1969、2017)『革命について』(1963、筑摩書房1995、ドイツ語版『革命論』1965、みすず書房2022)『暗い時代の人々』(1968、筑摩書房2005)『過去と未来の間』(1968、みすず書房1994)『暴力について――共和国の危機』(1969、みすず書房1973、2000)『精神の生活』全2巻(1978、岩波書店1994)他。
引田隆也 (翻訳)
1953年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。政治思想史・政治理論専攻。元東京国際大学教授。著書『政治思想の現在』(共著、早稲田大学出版部、1990)『西洋政治思想史II』(共著、新評論、1995)。訳書 アーレント『過去と未来の間』(共訳、みすず書房、1994)ほか。
山田正行 (翻訳)
1957年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。政治思想史・政治理論専攻。東海大学名誉教授。著書『逆光の政治哲学――不正義から問い返す』(共著、法律文化社、2016)『アーレント読本』(共著、法政大学出版局、2020)。訳書 アーレント『暴力について――共和国の危機』(みすず書房、2000)ほか。
國分功一郎 (解説)
1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。哲学。著書に『スピノザの方法』(みすず書房、2011)『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社、2011、新潮文庫、2022)『中動態の世界──意志と責任の考古学』(医学書院、2017)『スピノザ──読む人の肖像』(岩波新書、2022)ほか。訳書にデリダ『マルクスと息子たち』(岩波書店、2004)、ドゥルーズ『カントの批判哲学』(ちくま学芸文庫、2008)、ガタリ『アンチ・オイディプス草稿』(共訳、みすず書房、2010)ほか。
発売日
2024年7月12日
版元
みすず書房
3.進化論の射程: 生物学の哲学入門
概要(版元ウェブサイトより引用)
進化論とは一体何か? 神が世界や生物を創造したという「創造論」との対決(第2章)から、進化論や生物学的要因で人間の社会行動までも説明しようとする「社会生物学」の試み(第7章)まで、刺激的な話題を満載。さらに「進化」「自然選択」「適応」といった概念を丁寧に解説して、進化論にまつわる数々の誤解を解き、進化論が投げかける哲学的問いと、今後も人類に与えつづけるであろう衝撃を明らかにする、現在欧米で最もホットな哲学分野のひとつ「生物学の哲学」の成果。
著者
エリオット・ソーバー (著/文)
1948年生まれ。1969年、ペンシルベニア大学卒業。1970年、同大学大学院修士課程修了(M.S.Ed.)。ケンブリッジ大学の研究生を経て、1974年、ハーバード大学でPh.D.を取得。同年よりウィスコンシン大学哲学科で教鞭を執り、1984に同大学教授となって現在に至る。その間、スタンフォード大学教授やロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの客員教授、アメリカ科学哲学会会長も務める。生物学の哲学の第一人者。著書は、Simplicity(1975), The Nature of Selection: Evolutionary Theory in Philosophical Focus(1984), Reconstructing the Past: Parsimony, Evolution, and Inference(1988)〔邦訳、『過去を復元する』三中信宏訳、蒼樹書房、1996年〕, Evidence and Evolution: the Logic Behind the Science(2008)ほか多数。
松本 俊吉(翻訳)
1963年生。現在、東海大学総合教育センター教授。専門は科学哲学、特に生物学の哲学。論文にAnalyzing |'Evolutionary Functional Analysis|' in Evolutionary Psychology” (Annals of the Japan Association for Philosophy of Science,16)など。訳書に『進化論の射程――生物学の哲学入門』(共訳。春秋社)など。
網谷 祐一(翻訳)
1972年生まれ。ブリティッシュ・コロンビア大学大学院在籍中。専門は科学哲学、生物学の哲学。論文に「頻度仮説と進化からの論拠」(『科学哲学』41-1)。訳書にジョゼフ・ラウズ『知識と権力――クーン/ハイデガー/フーコー』(共訳、法政大学出版局、2000年)など。
森元 良太(翻訳)
1975年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。現在、慶應義塾大学ほか非常勤講師、日本学術振興会特別研究員。専門は生物学の哲学、確率論の哲学。著書に『進化論はなぜ哲学の問題になるのか』(共著、勁草書房、2010年)、『ダーウィンと進化論の哲学』(共著、勁草書房、2011年)。訳書にソーバー『進化論の射程』(共訳、春秋社、2009年)。
丹治 信春(監修)
1949年生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程(科学史・科学基礎論)単位取得退学。博士(学術)。首都大学東京大学院人文科学研究科教授を経て、現在、日本大学文理学部教授。専門は、科学哲学・言語哲学。著書に『言語と認識のダイナミズム』(勁草書房)など。
発売日
2024年7月18日
版元
春秋社
4.アファーマティブ・アクション-平等への切り札か、逆差別か
概要(版元ウェブサイトより引用)
「積極的差別是正措置」と訳されるアファーマティブ・アクション。入試や雇用・昇進に際して人種やジェンダーを考慮する実験的で論争的な取り組みだ。1960年代、公民権運動後のアメリカで構造的な人種差別を解消する取り組みとして導入されたが、「逆差別」「優遇措置」との批判が高まる。21世紀には多様性の推進策として復権するも、連邦最高裁は2023年に違憲判決を下した――。役目を終えたのか。平等のために何をすべきか。アメリカの試行錯誤の歴史をたどり考える。
著者
南川文里(著/文)
1973年、愛知県生まれ。2001年、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。06年、博士(社会学)取得。日本学術振興会特別研究員、神戸市外国語大学、立命館大学などを経て、現在、同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。専門は、社会学、アメリカ研究(人種エスニシティ論、移民研究、多文化社会論)。著書に『「日系アメリカ人」の歴史社会学』(2007年、彩流社)、『未完の多文化主義』(2021年、東京大学出版会、第38回大平正芳記念賞、第3回アメリカ学会中原伸之賞受賞)、『アメリカ多文化社会論[新版]』(法律文化社、2022年)など。
発売日
2024年7月22日
版元
中央公論新社
5.〈持続〉の力――ベルクソン『時間と自由』の切り開く新地平
概要(版元ウェブサイトより引用)
ベルクソン哲学の現代的射程は計り知れない広がりと深さを秘めている。その土台であり屋台骨となっているベルクソン独自の時間概念〈持続〉。ベルクソンの総ての革新がそこから始まった〈持続〉概念が示される『時間と自由』。その現代的読解の最前線。
著者
平井靖史(編者)
1971年生まれ。慶應義塾大学文学部哲学専攻教授。専門はベルクソン、ライプニッツなど近現代哲学、時間と心の哲学、記憶の形而上学。著書に『世界は時間でできている』(青土社、2022年)、訳書にベルクソン『意識に直接与えられたものについての試論』(共訳、ちくま学芸文庫、2002年)、ベルクソン『時間観念の歴史』(共訳、書肆心水、2019年)、ベルクソン『記憶理論の歴史』(共訳、書肆心水、2023年)がある。
藤田尚志(編者)
1973年生まれ。九州産業大学教授。専門はフランス近現代哲学。著書に『ベルクソン 反時代的哲学』(勁草書房、2022年)、訳書にベルクソン『時間観念の歴史』(共訳、書肆心水、2019年)、ベルクソン『記憶理論の歴史』(共訳、書肆心水、2023年)がある。
発売日
2024年7月23日
版元
書肆心水
6.ニューカマー宗教の現在地: 定着する移民と異教
概要(版元ウェブサイトより引用)
日本に定着し、家族を持った移民たちは、各地に宗教施設をつくり、自らが眠る墓を準備しはじめた。
イスラム教、上座仏教、大乗仏教、ブラジル系福音主義キリスト教、中国系新宗教など、外国生まれの宗教が、地域社会との軋轢を乗り越えて、日本に浸透していくさまを、フィールドワークから活写する。
著者
三木 英 (編)
相愛大学人文学部客員教授。宗教社会学。著書に『宗教と震災──阪神・淡路、東日本のそれから』(森話社、2015年)、『宗教集団の社会学──その類型と変動の理論』(北海道大学出版会、2014年)など。
発売日
2024年7月24日
版元
七月社
7.「ビックリハウス」と政治関心の戦後史――サブカルチャー雑誌がつくった若者共同体
概要(版元ウェブサイトより引用)
「政治に関心がない」とされがちな若者の第一世代。本当に彼らは政治や社会運動に関心がなかったのか? そして、なぜ現在に至るまで非政治的だとみなされてしまったのか? 糸井重里、橋本治、YMOなどが登場した伝説的サブカルチャー雑誌、『ビックリハウス』(1975―1985)から実証的に「若者」たちの心の内を明らかにする。各メディアで活躍する社会学の新鋭が「若者の政治離れ」の源流に迫る渾身の一冊。
著者
富永京子(著/文)
1986年生まれ。立命館大学産業社会学部准教授。シノドス国際社会動向研究所理事。専攻は社会運動論・国際社会学。東京大学大学院人文社会系研究科修士課程・博士課程修了後、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2015年より現職。著書に『社会運動と若者──日常と出来事を往還する政治』(ナカニシヤ出版)、『社会運動のサブカルチャー化――G8 サミット抗議行動の経験分析』(せりか書房)、『みんなの「わがまま」入門』(左右社)。
発売日
2024年7月25日
版元
晶文社
8.なぜガザなのか: パレスチナの分断、孤立化、反開発
概要(版元ウェブサイトより引用)
そこで何が行われてきたのか、私たちは知らなければならない。
五〇年以上にわたる占領。隔離と封鎖のなかで、暴力は常態化し、排除が恒常化し、パレスチナの人たちは生活のすべてを奪われてきた。なぜ、どのようにして、それは行われたのか。歴史的文脈を理解し、いま起こっていること、そしてこれから行われることを知るための最良の書。
著者
サラ・ロイ(著)
1955年アメリカ生まれ。政治経済学。ハーバード大学中東研究所上級研究員。パレスチナ、とくにイスラエルによるガザ地区の占領問題の政治経済学的研究で世界的に知られる。ホロコースト生き残りのユダヤ人を両親にもつ。
岡真理(翻訳)
1960年東京に生まれる。東京外国語大学大学院修士課程修了。エジプト・カイロ大学留学。在モロッコ日本国大使館専門調査員、大阪女子大学人文社会学部講師、京都大学総合人間学部助教授などを経て、2009年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。専門は現代アラブ文学、パレスチナ問題、第三世界フェミニズム思想。著書に『記憶/物語』(岩波書店)、『彼女の「正しい」名前とは何か』、『棗椰子の木陰で』(以上、青土社)、『アラブ、祈りとしての文学』、『ガザに地下鉄が走る日』(以上みすず書房)ほか。訳書にエドワード・サイード『イスラム報道 増補版』(共訳、みすず書房)、サラ・ロイ『ホロコーストからガザへ』(共訳、青土社)、ターハル・ベン=ジェルーン『火によって』(以文社)、アーディラ・ライディ『シャヒード、100の命』(インパクト出版会)、サイード・アブデルワーヒド『ガザ通信』(青土社)ほか。2009年から平和を目指す朗読集団「国境なき朗読者たち」を主宰し、ガザをテーマとする朗読劇の上演活動を続ける。
発売日
2024年7月26日
版元
青土社
9.アニメと場所の社会学: 文化産業における共通文化の可能性
概要(版元ウェブサイトより引用)
アニメ研究が「場所」に注目するのはなぜか?
ファン活動,アニメ産業,それらを支える技術や想像力といった角度から、場所がアニメを作り出し、アニメが場所を作り出す、さまざまな現象を理解し、アニメ文化が共通文化となりうる可能性と限界を考える基本論集
著者
永田 大輔(編集)
明星大学・明治学院大学等非常勤講師。主著:『アニメオタクとビデオの文化社会学――映像視聴経験の系譜』(青弓社,近刊)、「コンテンツ消費におけるオタク文化の独自性の形成過程」(『ソシオロジ』182:21–37.,2015年),「ビデオをめぐるメディア経験の多層性――「コレクション」とオタクのカテゴリー運用をめぐって」(『ソシオロゴス』42: 84-100.,2018年)
松永 伸太朗(編集)
長野大学 企業情報学部 准教授。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了 博士(社会学)。主要業績:(1)『アニメーターの社会学――職業規範と労働問題』(三重大学出版会, 2017年),(2)『アニメーターはどう働いているのか――集まって働くフリーランサーたちの労働社会学』(ナカニシヤ出版, 2020年),(3)『産業変動の労働社会学――アニメーターの経験史』(晃洋書房, 2022年, 永田大輔との共著)
杉山 怜美 (編集)
所属:慶應義塾大学大学院社会学研究科後期博士課程。主要著作:「メディアミックスが支える〈保温〉状態のファン実践――「スレイヤーズ」を事例に」(『メディア研究』104:127–146, 2024年)
発売日
2024年7月30日
版元
ナカニシヤ出版
10.法律婚って変じゃない?-結婚の法と哲学
概要(版元ウェブサイトより引用)
結婚の契約化と家族法の再編はどう展開するのか。同性婚・嫡出推定・ケア・親密圏等、多角的・多様な視点から「結婚を哲学する」。
著者
山田 八千子(編著)
中央大学大学院法務研究科教授・弁護士(武谷直人法律事務所)
安念 潤司 (著)
中央大学法務研究科教授
大島 梨沙(著)
青山学院大学法学部教授
若松 良樹(著)
学習院大学法務研究科教授
田村 哲樹(著)
名古屋大学大学院法学研究科教授
池田 弘乃(著)
山形大学人文社会科学部教授
堀江 有里 (ホリエ ユリ) (著)
公益財団法人世界人権問題研究センター専任研究員
発売日
2024年7月31日
版元
信山社
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