【2024年12月刊】韓国においてビジネス化する性暴力、ピーター・シンガー新訳、中国フェミニズム……デサイロが注目したい人文・社会科学の新刊10冊
「いま私たちはどんな時代を生きているのか」──人文・社会科学領域の研究者とともにこの問いを探り、研究のなかで立ち現れるアイデアや概念の社会化を目指すアカデミックインキュベーター「デサイロ(De-Silo)」。
2024年12月に刊行の人文・社会科学領域の新刊書の中から、デサイロとして注目したい10冊をピックアップしました。
気になるタイトルがあれば、読書リストにぜひ加えてみてください。
1.革命と親密性 毛沢東時代の「日常政治」
概要(版元ウェブサイトより引用)
家族、同僚、隣人 近しい関係からみた革命
中華人民共和国が成立した1949年から毛沢東が死去した1976年までの「毛沢東時代」において、「普通の人々」の、夫婦、親子、職場の同僚・友人、村落内の人々との関係はどのように変容し人々はそこになにを感じていたのか。娯楽や飲食を通して構築される親密な関係は革命の展開とどのように結びついていたのか。日記、手紙、口述資料などを用いて考察する。
著者
鄭浩瀾 (テイコウラン) (著/文 | 編集)
慶應義塾大学総合政策学部准教授。慶應義塾大学政策・メディア研究科博士課程修了、博士(政策・メディア)。専門分野:中国近現代史、中国地域研究。『中国農村社会と革命』(慶應義塾大学出版会、2009年、第26回大平正芳記念賞受賞作)、『毛沢東時代の政治運動と民衆の日常』(共編著、慶應義塾大学出版会、2021年)ほか。
発売日
2024/12/06
版元
東方書店
2.労働環境の不協和音を生きる―労働と生活のジェンダー分析
概要(版元ウェブサイトより引用)
生きるために働いているはずが、
労働によって日々の生活やいのちが脅かされる実情がある。
耳を澄ませて不協和音を聴けば、不協和音が我々に問いかけてくる。
社会学、文学、社会福祉学、歴史学、経済学といった多角的なアプローチから社会政策に迫る試み。コロナ禍が顕在化させた「労働環境の不協和音」を、社会政策の両輪である「労働」および「生活」という切り口から描き出す。
コロナ禍という未曾有の事態は「労働環境の不協和音」を響かせた。社会政策の初学者とともに〈生きるために働く〉ことをジェンダー視点から理解し再構築したい。歴史縦断的、領域横断的なアプローチが労働と生活を切り結ぶ、社会政策とは何かを考えるきっかけとなる一冊。
著者
堀川祐里 編著
五十嵐舞 著
鈴木力 著
新川綾子 著
清水友理子 著
跡部千慧 著
岡桃子 著
大島岳 著
久保優翔 著
発売日
2024/12/10
版元
晃洋書房
3.日常的な相互行為の数理社会学―噓と秘密とゲーム理論
概要(版元ウェブサイトより引用)
人狼ゲームからみえてくる、私たちの会話のかたち
意味の社会学と数理社会学を接続し、嘘や秘密が入り混じる場面をゲーム理論で分析。日常の相互行為を新たな視点から解き明かす。
著者
小田中悠(著/文)
1989年生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了、博士(社会学)現在、京都先端科学大学人文学部講師
主要業績:『パンデミックとグローバル社会――もうひとつの社会への扉』(分担執筆、晃洋書房、2022年)、『数理社会学事典』(編集委員・分担執筆、丸善出版、2022年)
発売日
2024/12/10
版元
晃洋書房
4.ビジネス化する性暴力: 性暴力の法市場化に抵抗する政治の再構成
概要(版元ウェブサイトより引用)
「虚偽告訴」「名誉毀損」「脅迫」「侮辱」「損害賠償」……。性暴力加害者は、性犯罪専門法律事務所からどのように減刑/無罪を購入するのか。韓国フェミニズム研究者による渾身のレポート。
著者
キム ボファ(著/文)
男性中心的な司法手続きと言説のなかで、女性に対する暴力がどのような構造のなかで、どのように交差して現れるのかを分析し、その意味と効果を研究している。性暴力被害者の支援と研究活動をするなかで、加害者たちは納得できない減刑と無罪を獲得する反面、被害者たちは逆告訴を被ることが頻繁にあることを確認した。このような現象に問題意識を持ち、性暴力の法的解決がどのように市場化され、性犯罪専門法律事務所がどのようなやり方で加害者の減刑事由をつくるのか、加害者はどのように法市場の合理的消費者になったのか、被害者は被害を認められるためにどのように自ら苦痛と感情を管理するのかなどを調査・分析した。この研究を整理した博士学位論文「性暴力事件解決の「法市場化」批判と「性暴力の政治」の再構成に関する研究」は多くのメディアの注目をあつめ、性暴力加害者を支援する「法市場化」問題を世の中に知らしめた。本書はその博士学位論文を修正・補完したものだ。
女性主義研究活動家。ジェンダー暴力研究所と韓国性暴力相談所付設研究所ウルリムで活動し、梨花女子大学女性学科で修士・博士学位を取得した。著書に『フェミニズム教室』(共著)、『自ら津波になった女たち』(共著)、『誰が女性を殺すのか』(共著)、『それにもかかわらずフェミニズム』(共著)などがある。
影本 剛(訳)
朝鮮文学研究・大学非常勤講師。著書に『近代朝鮮文学と民衆──三・一運動、プロレタリア、移民、動員』(春風社、二〇二四年)。日本語への訳書に高秉權『黙々──聞かれなかった声とともに歩く哲学』(明石書店、二〇二三年)、金賢京『人、場所、歓待──平等な社会のための3つの概念』(青土社、二〇二〇年)、李珍景『不穏なるものたちの存在論──人間ですらないもの、卑しいもの、取るに足らないものたちの価値と意味』(インパクト出版会、二〇一五年)、共訳書にクォンキム・ヒョンヨン編『被害と加害のフェミニズム──#MeToo以降を展望する』(解放出版社、二〇二三年)がある。
発売日
2024/12/13
版元
解放出版社
5.立ち退かされるのは誰か?:ジェントリフィケーションと脅かされるコミュニティ
概要(版元ウェブサイトより引用)
<ジェントリフィケーション>がもたらす問題とは?
再開発による「立ち退き」、グローバルな不動産投資と家賃高騰……。
<ジェントリフィケーション>という言葉を生みだしたのは、1960年代の社会学者ルース・グラスだった。
彼女が都市ロンドンで<発見>した現象は、現代の都市問題を予見していた……。
地域コミュニティが脅かされつつある現代都市の課題との共通点をさぐる注目の書。
著者
山本薫子 (著/文)
東京都立大学都市環境科学研究科准教授。博士(社会学)。専門は都市社会学。
主要著作:
『横浜・寿町と外国人―グローバル化する大都市インナーエリア 』(福村出版、2008年)、『原発避難者の声を聞く―復興政策の何が問題か 』(共著、岩波ブックレット、2015年)、『社会にひらく 社会調査入門。(共著、ミネルヴァ書房、2023年)など。
発売日
2024/12/17
版元
慶應義塾大学出版会
6.新・動物の解放
概要(版元ウェブサイトより引用)
動物の権利運動の理論的基盤
不滅の名著、30余年ぶりの全面改訂版を完全新訳。最新のデータと議論にもとづき本文の3分の2を書き換え、さらに気候変動や新型ウイルスなど新たなトピックを盛り込んで、21世紀の緊急課題に応える。序論=ユヴァル・ノア・ハラリ(『サピエンス全史』)。
著者
ピーター・シンガー(著/文)
1946年生まれ。オーストラリア出身の哲学者。プリンストン大学教授。専門は応用倫理学。動物の解放や極度の貧困状態にある人々への支援を提唱する代表的な論者の一人。著書に『なぜヴィーガンか?──倫理的に食べる』(児玉聡・林和雄訳、晶文社、2023年)、『飢えと豊かさと道徳』(児玉聡監訳、勁草書房、2018年)、『あなたが救える命──世界の貧困を終わらせるために今すぐできること』(児玉聡・石川涼子訳、勁草書房、2014年)、『実践の倫理 新版』(山内友三郎・塚崎智監訳、昭和堂、1999年)など。『ザ・ニューヨーカー』誌によって「最も影響力のある現代の哲学者」と呼ばれ、『タイム』誌では「世界の最も影響力のある100人」の一人に選ばれた。
井上太一 (翻訳)
翻訳家・執筆家。動物倫理やビーガニズムを専門領域とし、フェミニズム関連の文献翻訳にも携わる。著書に『動物倫理の最前線』(人文書院、2022年)、『今日からはじめるビーガン生活』(亜紀書房、2023年)、『動物たちの収容所群島』(あけび書房、2023年)、訳書にディネシュ・J・ワディウェル『現代思想からの動物論』(人文書院、2019年)、サラット・コリング『抵抗する動物たち』(青土社、2023年)、キャスリン・バリー『セクシュアリティの性売買』(人文書院、2024年)など。趣味は料理研究と語学(おもにユーラシア諸語)。
発売日
2024/12/20
版元
晶文社
7.日本政治学史-丸山眞男からジェンダー論、実験政治学まで
概要(版元ウェブサイトより引用)
「科学としての政治学」は、どのような道み程をたどったのか――。
本書は、戦後に学会を創り、行動論やマルクス主義の成果を摂取した政治学が、先進国化する日本でいかに変貌してきたのかを描く。
丸山眞男、升味準之輔、京極純一、レヴァイアサン・グループ、佐藤誠三郎、佐々木毅などの業績に光を当て、さらにジェンダー研究、実験政治学といった新たに生まれた潮流も追う。
欧米とは異なる軌跡を照らし、その見取り図を示す。
著者
酒井大輔 (著/文)
1984年愛知県生まれ.名古屋大学法学部卒業.同大学院法学研究科修士課程修了.現在は国家公務員.専門は日本政治学史.
共編著『日本政治研究事始め──大嶽秀夫オーラル・ヒストリー』(ナカニシヤ出版,2021年)
論文「戦後政治学の諸潮流」(『政治思想研究』21号,2021年.政治思想学会研究奨励賞)、 「日本政治学史の二つの転換」(『年報政治学』2017‐Ⅱ号)ほか
発売日
2024/12/23
版元
中央公論新社
8.国家とは何か 吉本隆明セレクション
概要(版元ウェブサイトより引用)
『共同幻想論』を読み解くための講演を、先崎彰容が編む。充実の解説も収録
国家とは何か。吉本が主著『共同幻想論』で投げかけた問いを読み解くヒントは、講演や短編にあった。国家の原点を家族に求めた「個体・家族・共同性としての人間」「幻想としての国家」、共同幻想を日本歴史の中に具体化した「わが歴史論」「異族の論理」など8編を収める。現代の読者のために、1968年当時の思想状況や時代背景を克明に再現し、今日的な読みの可能性も示した、編者による解説「AI時代の吉本隆明」も収録。
著者
吉本 隆明 (著/文)
1924年生まれ。東京工業大学電気化学科卒。詩人、文芸評論家、思想家。52年に詩集『固有時との対話』を発行。その後、文芸評論活動を開始し、思想家として戦後日本の思想界に大きな影響を与えた。2012年3月没。
先崎 彰容(編集 | 解説)
1975年、東京都生まれ。東京大学文学部倫理学科卒業。東北大学大学院文学研究科日本思想史専攻博士課程単位取得修了。フランス社会科学高等研究院に留学。文学博士。現在、日本大学危機管理学部教授。専攻は近代日本思想史・日本倫理思想史。
発売日
2024/12/24
版元
KADOKAWA
9.AI時代の労働の自律性と資本の統制
概要(版元ウェブサイトより引用)
なぜ、出世すると「手を動かす人」から「管理する人」に変わるのか?
AIに管理される社会で、真の主体性を手放さない方法とは?
資本の影響下で、「どう管理されるか」ばかりを考えてしまう私たちが、「どう自由に生きるか」を考えるにはどうすればよいのか──。 ブレイヴァマンを柱に、科学的マネジメント法で知られるテイラーやマルクスを参照。AI関連の最新情勢も踏まえ、気鋭の研究者が資本と労働者の「知」をめぐる攻防を描き出す。
*
現代で「自由に」働いていると思っている人も、実は労働時間や給与など、決定的な部分に関わることは難しく、そもそもそんなことまで自分で決められると考えられていないことも多い。労働者が職場で決めているのは、実際には資本が「自分で選んだ感」を演出するために用意した選択肢にすぎないのだ。 そのような資本と労働者の在り方を理論的に明かした上で、豊富な調査を掲載。技術者として一定の裁量が認められている(とされる)ITエンジニア1000人にアンケート、さらにインタビューを行うことで、より詳細に実態を捉える。 マネジメント、AI、IT系の労働環境に関心がある読者必読!ビジネス書が決して踏み込まない深さで労働者と管理者の関係を読み解く、いわば「真のマネジメント本」。
著者
三家本里実(著/文)
1988年生まれ。福島大学経済経営学類准教授。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。単著論文に「労働過程論における自律性概念の再解釈──ブレイヴァマンの労働過程分析を通して」(『季刊経済理論』第53巻第4号)など。
発売日
2024/12/25
版元
堀之内出版
10.フェミニスト・ファイブ 中国フェミニズムのはじまり
概要(版元ウェブサイトより引用)
「闘争することが日常だった。もし闘争をやめたら、私が私でなくなってしまう。」
2015年国際女性デー、中国で痴漢反対のステッカーを配布しようとし、逮捕された5人の女性がいた。
まったく無名だった彼女たちは、逮捕・拘束されたことにより世界的な注目を集める。「女権五姉妹(フェミニスト・ファイブ)」の誕生である。
家父長制的権威主義国家としての中国は、性暴力をゆるし、女性たちを「産む機械」に貶め、その自由を奪ってきた。
なぜ独裁者(習近平)は、武器を持たない彼女たちを恐れたのか?
逮捕、拘留、脅迫、検閲、暴力。政府による抑圧が強まるなか、フェミニストはどのように声をあげ、行動したのか。その声はやがて、政治的表明を避けていた女性たちをも動かしてゆき……。
独裁者も恐れたフェミニストたちの姿を追う。
著者
レタ・ホング・フィンチャー (著)
アメリカのジャーナリスト、フェミニスト、作家。現在、コロンビア大学ウェザーヘッド東アジア研究所の研究員。ハーバード大学卒業、スタンフォード大学修士、清華大学でPh.D. 取得。中国についての報道に寄与したとして、シグマ・デルタ・カイ賞を受賞している。『ニューヨーク・タイムズ』『ワシントン・ポスト』『ガーディアン』など各紙に寄稿。本書Betraying Big Brother: The Feminist Awakening in China は、アメリカの雑誌『ヴァニティ・フェア』『ニューズウィーク』などでベストブックの一冊(2018 年)として選ばれた。
宮﨑真紀 (翻訳)
スペイン語圏文学・英米文学翻訳者。東京外国語大学外国語学部スペイン語学科卒。最近の訳書に、グウェン・アズヘッド、アイリーン・ホーン『そして、「悪魔」が語りだす 司法精神科医が出会った狂気と共感の物語』(海と月社)、トーマス・フィッシャー『いのちの選別はどうして起こるのか―ER 緊急救命室から見たアメリカ』(亜紀書房)、メアリー・ビアード『舌を抜かれる女たち』(晶文社)、サマンタ・シュウェブリン『救出の距離』(国書刊行会)、ラウラ・フェルナンデス『ミセス・ポッターとクリスマスの町』(早川書房)など。
阿古智子 (解説)
1971 年大阪府生まれ。東京大学総合文化研究科教授。現代中国の政治・社会変動、人権問題、知識人や市民社会の動向を研究している。主な著書・共著書に『香港 あなたはどこへ向かうのか』(出版舎ジグ)、『超大国・中国のゆくえ5 勃興する「民」』(東京大学出版会)、『貧者を喰らう国―中国格差社会からの警告』(新潮社)など。
発売日
2024/12/31
版元
左右社
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