「私たち性 we-ness」を、原風景から立ち上げていく──映像作家・Pennakcy【DE-SILO EXPERIMENT 2024アーティスト紹介】
4名の研究者と11組のアーティストがコラボレーションして新作を制作し、「生の実感とリアリティ」に迫っていく2daysイベント「DE-SILO EXPERIMENT 2024」。同イベントにて制作/出演するアーティストを紹介する本シリーズで今回取り上げるのは、Balming TigerやPhoenix、新しい学校のリーダーズなどの著名ミュージシャンのMVを手がけてきた映像作家のPennackyだ。
DE-SILO EXPERIMENT 2024
【4/13~14開催】小説から音楽、映像、メディアアートまで。研究者とアーティストのコラボレーションにより、研究知を起点に「生の実感とリアリティ」を探る2daysイベント。
映像作家のPennackyは4/14に出演し、トラックメイカー/ラッパーの荘子itとともにパフォーマンスを実施。また、研究者の柳澤田実も交えたトークセッションに登壇する。参加希望の方は、下記ウェブサイトから4/14(DAY2)「Performance Ticket」の購入を。
https://de-silo.xyz/experiment-2024
Balming Tiger、あいみょん、星野源、Phoenix、新しい学校のリーダーズ、JUMADIBA……気鋭の新人からメジャーシーンで活躍するミュージシャンまで幅広いアーティストのMV(Music Video)を手がけてきたPennacky。DE-SILO EXPERIMENT 2024では、哲学者・柳澤田実の「we-ness 私たち性の不在とその希求」という研究テーマに応答し、映像作品の制作とイベント当日のパフォーマンス/トークセッションに出演する。
1996年生まれの彼の作家性は、一言では形容しにくい。いくつかキーワードを挙げるとするならば、「特撮」「DIY感・手づくり感」だろう。
幼少期からの「特撮好き」は、ジオラマやミニチュアを生かした演出が特徴的な、あいみょん「青春と青春と青春」や、ATARASHII GAKKO!「Tokyo Calling」などの作品に反映されている(ちなみに、「青春と青春と青春」でミニチュアのNゲージの車窓から見える景色を描いたのは、Nゲージにカメラをとりつけて撮影するというカメラワークが登場する庵野秀明「ラブ&ポップ」のオマージュだという)。
また、Omega Sapienや同氏が所属するコレクティブであり、「オルタナティブK-POPバンド」を標榜するBalming Tigerとの協働も、Pennackyの代表的な仕事のひとつだ。
「Balming Tigerとはツボが似ていて、僕の妄想やアイデアに全て共感してくれます。そのため歯止めが効かず、良い意味でエスカレートしていきます」と以前のインタビューで語っているように、手がけたMVの「Armadillo」「Moving Forward」などではカメラワークや演出が特徴的だ。
ほかにも、BTSのRMもフューチャリングで参加したBalming Tigerの「SEXY NUKIM (feat. RM of BTS)」では「汗と解放」がテーマだったと、Director IDのインタビューで語っている。
「SEXY NUKIM」が「アジア人のセクシーさの再構築」を目指した楽曲であるように、Balming Tigerの楽曲やMVは、アジア人に対するイメージやときとしてステレオタイプの刷新につながるような表現となっている。SXSW、フジロックフェスティバル、タイラー・ザ・クリエイターが主催するCamp Flog Gnaw Carnival 2023への出演など、破竹の勢いで成長するBalming Tigerのそうした活動を、映像というクリエイティブから支え、新たなるイメージをつくり出しているのがPennackyなわけだ。
ここでは、Pennackyの代表的な作品を以下にいくつか掲載しておこう。
Balming Tiger - Moving Forward
あいみょん – 青春と青春と青春
South Penguin - gadja feat. Dos Monos
Phoenix - After Midnight
ATARASHII GAKKO! - Tokyo Calling
JUMADIBA - UP
「私たち性」を、風景から考える
そんなPennackyは、このたび哲学者の柳澤田実の「we-ness 私たち性の不在とその希求」という研究テーマに応答し、映像作品の制作とイベント当日はパフォーマンスとトークセッションに出演する。
ユニークなのは、その制作プロセスだ。Pennackyと柳澤は約1年間にわたり議論を重ね、まるで研究者とアーティストの共同研究のようなプロセスで、「we-ness」というテーマに迫っていった。とある打ち合わせの際に「ほかの仕事をしているときも、この1年間はwe-nessというテーマが頭から離れなかった」とPennackyは語っていたが、そうした一年間の思索の集大成が、今回のDE-SILO EXPERIMENT 2024では披露される。
その映像とパフォーマンスのテーマは「風景」となる。「私たち」を考えるうえで、なぜ「風景」が重要になるのか。その答えは、ぜひ会場で目撃してほしい。
また、パフォーマンスについてはDos Monosのメンバーであり、トラックメイカー/ラッパーの荘子itをゲストに迎えて展開される。「ミュージックビデオをつくるうえで全体の構成を考えるというよりは、音の鳴っている瞬間にどんな絵がハマってくるかを考えています」と、Pennackyが以前のインタビューで語っていたように、Pennackyの映像作品と荘子itによる“音の鳴り”がどのように交差し、パフォーマンスとして立ち上がるのかをお楽しみに。
Pennackyによるパフォーマンス&トークセッションに参加したい方は、下記のウェブサイトから4/14(DAY2)の「Performance Ticket」を選択し、購入してほしい。
【DE-SILO EXPERIMENT 2024のチケット購入はこちら】
Pennacky
1996年生まれ。日本大学芸術学部映画学科撮影コースで映像制作を学び、卒業後東京を拠点に活動。きのこ帝国、OKAMOTO’sやYogge New Wavesなどのバンドや、あいみょん、星野源、V6など著名な国内アーティストに加え、Balming Tigerをはじめ韓国やシンガポールなどを拠点とする海外アーティストのMV制作を担当。また、本名の田中賢一郎名義でショートフィルムなども発表し、活動の幅を広げている。台湾の音楽アワード「第34屆金曲獎」では、台湾のバンド「落日飛車(Sunset Rollercoaster)」のMV『Little Balcony』でBest Music Awardを受賞。