【作品の詳細】シェア / 理想の身体 / 世界を変えた20歳以下の100人
「ダイエット」はもはや流行語の域を超えて一般名詞となり、美容脱毛や美容整形も特別なことではなくなりつつある昨今。美容にとどまらず、毛髪再生医療や医療痩身といったアプローチも普及の一途をたどっている。一人ひとりが自身の「理想」に向けて、身体を改変・加工し続ける先には、どのような未来が広がっているのだろうか?そんな問いを背景に、リスク概念と身体の関わりを多面的に調査し続けてきた磯野は「21世紀の理想の身体」をテーマに設定し、その研究内容をもとに二つの短編を制作した。
「HRR」:2085年脱毛は人権になった
「もう出すことはやめた」:HRRのその後。人類はさらなる美しさを求めて走り続ける
この2編とその背景にある研究テーマを解釈し、3名の著名小説家が新作となる短編を生み出した。
松田青子が描き下ろした「シェア」では、「地上最後のセックスを経験したことのある女」だという一人の女性の内面に深く入り込み、その女性の語りを通して物語が展開されていく。誰かへのシェアを拠り所とし、身体を中心に「薄く、透明になること」を追い求めた人類の行く末が、多層的に表現されている。
李琴峰による短編「理想の身体」では、1人称の世界観をベースに「身体男性」「身体女性」という想像上の概念が物語の軸に据えられている。「無機物になること」を理想とし、さまざまな要素を自分から「消去」しようとしていく主人公が、物語の最後にたどり着いた「消すべきもの」とは──。
山内マリコによる短編「世界を変えた20歳以下の100人」では、「HRR」の登場人物である「ユミ」と「アキラ」に焦点が当てられている。脱毛の概念を一新する薬剤の普及を担うNPO団体「Hairless Hope」はなぜ生まれたのか。ライブ配信をきっかけに、二人の若者が自宅の"パーソナル"な空間を突き破り、やがて世界を大きく変えていく様子が鮮明に描かれる。
DE-SILO EXPERIMENT 2024
【4/13~14開催】小説から音楽、映像、メディアアートまで。研究者とアーティストのコラボレーションにより、研究知を起点に「生の実感とリアリティ」を探る2daysイベント
小説家・松田青子/李 琴峰/山内マリコと人類学者・磯野真穂による、来場者自らが「理想の身体」を考えるワークショップとトークセッションが実施される。参加希望の方は、下記ウェブサイトから「Workshop Ticket」の購入を。