AnthropicやDeepMindの哲学者は何をしているのか?【デサイロ月報 2026年6月】
「慶應システミックイノベーション・センター」始動から、「防衛テックの倫理」イベントまで、一般社団法人デサイロにおける2026年6月の活動報告と、7月の活動についてお知らせします。
■コラム
ポッドキャスト番組「2020s」で6月に公開したエピソードのひとつに「Anthropicの哲学者は何をしているのか?」というテーマがあります。哲学者の下西風澄さんをゲストに迎え、テック企業と哲学(者)の関係性について縦横無尽に話していただいた回ですが、そのときに紹介したのはAnthropicに在籍するアマンダ・アスケルさんという哲学者でした。
(2020s配信時に掲載しているスライド資料より抜粋)
先日、Google傘下のDeepMindに在籍する哲学者イアソン・ガブリエルさんへのインタビューが『The Guardian』に掲載されました。同じタイミングで、『The Economist』にも、「なぜ大手AI研究所が、これほど多くの哲学者を雇っているのか」というテーマの記事が掲載されています。『The Guardian』の記事によれば、ガブリエルさんは、「AGI & Society Lead」という肩書で、哲学者と社会科学者のチームを率い、「AGIが経済、政治領域、人間関係にどう影響するか」を調査しているとのこと。
デサイロを立ち上げた2022年、哲学や倫理、経済学の知見と最先端テクノロジーがこのように交わり、これほどまでにその交点の重要性が高まることが想像できていませんでした。しかし、バーニー・サンダース米上院議員による「AI企業の株式国有化」に関する議論が象徴するように、AIと人間・企業・国家の関係性を、分野横断的に知見を組み合わせて考えていくことが重要になっています。ポッドキャスト番組「2020s」も含め、デサイロとしては「人文・社会科学の知と先端テクノロジーの関係性」を深めていきますので本ニュースレターやポッドキャストをぜひフォローいただければと思います。(一般社団法人デサイロ代表理事・岡田弘太郎)
■6月の活動
「防衛テック」の倫理──「国家とイノベーションの関係性」を再定義する【Academic Insights #26】開催
日本において防衛政策の転換が急速に進むなか、防衛省とスタートアップの連携に向けた動きが活性化しています。そうした状況のなかで、防衛分野に関わる企業に求められる責任や倫理とは何か、そこで生じる新しい論点について、本分野に関わる4名の専門家の方をゲストとしてお招きし、議論を深めました。
ポッドキャスト番組「2020s -twenty-twenties-」
2020年代を形づくる思想やアイデアとは何か?
テックから哲学、カルチャーまでを横断し、「思想がリアルポリティクスを動かす時代」に迫っていくポッドキャスト番組。6月は「Anthropicの哲学者」から「防衛テックの倫理とナラティブ」まで、4つのエピソードを公開しました。
ご関心を持っていただいた方は、ぜひSpotifyやApple Podcastでのフォローもお願いします。
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声遊楽クロスダイアローグ 第11回の開催
声をめぐる問いについて、人文社会系・理工系の研究者、声で人々に働きかける表現者、声による価値提供を目指す企業人が交じり合って対話を行い、「声」を題材に「未来の人間らしさ」「心の豊かさ」について多様な観点から問い続けていく「声遊楽クロスダイアローグ」。
今回のテーマは「『人間の声』の文化はいかにして育まれてきたか?――落語からアニメ、2.5次元まで」です。異なる専門性や立場を持つ3名の対話から、「人間の声の技術と文化」を立体的に捉え直しました。
▶▶▶YouTubeでのアーカイブのご視聴はこちら
慶應システミックイノベーション・センターによるコンソーシアム第1回が開催
デザイン思考×システム思考の方法論「システミックデザイン」を活用し、企業のイノベーション創出を支援する「慶應システミックイノベーション・センター」が発足し、「気候変動 × 都市」をテーマとしたコンソーシアムが始まりました。企業横断でチームを組成し、都市を舞台に気候変動課題にアプローチする新たなる介入策を考えていきます。デサイロはセンターの立ち上げ及び運営支援を行なっています。
“人と社会を探索する”企業内研究所/インハウスリサーチャーのためのコミュニティイベント「In-House Researcher’s Meetup Vol.02」開催
一般社団法人デサイロが主催する、人と社会を探索する企業内研究所/インハウスリサーチャーのためのコミュニティ「In-house Researcher’s Hub」。
第2回目のイベント開催となる「In-House Researcher’s Meetup Vol.02」では、不動産デベロッパー、家具メーカー、広告会社などの様々な企業内研究所の方々にプレゼンテーションいただき、お越しいただいたインハウスリサーチャーの皆さんとの交流の場を設けました。
▼コミュニティの詳細はこちら
https://desilo.substack.com/p/irh-meetup-01-0217
メディア掲載・イベント出演情報
「AI時代のビジネスパーソンに「人文知」が求められる理由」というテーマでの雑誌インタビューや、各種イベントやPodcastへの出演など、さまざまな場でデサイロの活動についてお話する機会をいただきました。
アカデミスト『【人文知で社会は変わるのか?①】 変わろうとする社会に、応答できる知を私たちは持っているか』への登壇
【人文知で社会は変わるのか?①】 変わろうとする社会に、応答できる知を私たちは持っているか
アカデミスト特別企画「人文知で社会は変わるのか?」の第1回のゲストに、デサイロ代表の岡田弘太郎が登壇しました。人文・社会科学の知見を社会実装する活動の内容から、「人文知で社会は変わるのか?」という根本的な問いまで、お話しました。
Loftwork Conference 2026 『Re:Creation』への登壇
Loftwork Conference 2026 『Re:Creation』のTalk Session Day3-A「10年後の地域らしさを問い直す」に、代表の岡田が登壇しました。
100 BOOK TALKERSへの登壇
本の話題を通じてお互いをより深く知り、 新たな交流や共創の機会を見出すきっかけを作り出すイベント「100 BOOK TALKERS」にデサイロ代表の岡田弘太郎が登壇。2020年代を読み解くための重要書3冊をご紹介しました。
「テクノロジカル・リパブリック 国家、軍事力、テクノロジーの未来」 アレクサンダー・C・カープ(著) ニコラス・W・ザミスカ(著) 村井章子(翻訳)
日経BP 日本経済新聞出版「ノスタルジアは世界を滅ぼすのか: ある危険な感情の歴史」 アグネス・アーノルド=フォースター(著) 月谷真紀(翻訳) 東洋経済新報社
「〈迂回する経済〉の都市論: 都市の主役の逆転から生まれるパブリックライフ」 吉江俊(著) 学芸出版社
ポッドキャスト「Takram Cast」への登壇
東京・ロンドン・ニューヨークを拠点に様々なプロジェクトに取り組むデザイン・イノベーション・ファームTakramが運営するPodcast「Takram Cast」にデサイロ代表・岡田弘太郎が出演しました。デサイロの知と文化のインキュベーション拠点Unknown Unknownや、「2020s」で考えているテーマについて話しました。
ポッドキャスト「立ち止まれる社会プロジェクト」に出演
D-LAB、Butterfly Lab、inquireが共同で運営するPodcast「立ち止まれる社会プロジェクト」にデサイロ代表の岡田弘太郎が登壇しました。
本エピソードでは、4月15日にUnknown Unknown(神保町)で開催した公開イベントの余韻から、話は「深く考え合うとはどういうことか」へと広がっていきます。何かを考える時、それはその人の本当の言葉なのか、どこかで借りてきた言葉なのか。すぐに答えの出ない問いに、立ち止まって考えました。
合わせてイベントレポートについても掲載されました。
「立ち止まれる社会」は実現できる?──デサイロ岡田さんと文化的変容のためにサイロを超える協働のかたちを探る
『THE21 2026年7月号[総力特集:人生100年時代のキャリア戦略]』でのインタビュー掲載
THE21 2026年7月号[総力特集:人生100年時代のキャリア戦略]
『THE21 2026年7月号[総力特集:人生100年時代のキャリア戦略]』にて、デサイロ代表・岡田弘太郎がインタビューを受けました。「AI時代のビジネスパーソンに「人文知」が求められる理由」というテーマについてお話しています。
弦本ビル代表の弦本卓也さんがNewsPicksで行なっている連載「場所とコミュニティが描く未来」にてインタビューを掲載いただきました。「Unknown Unknown」を開設した背景や、現代において知が混ざる場所の重要性についてお話しています。
■7月の活動
声遊楽クロスダイアローグ#12開催
声をめぐる問いについて、人文社会系・理工系の研究者、声で人々に働きかける表現者、声による価値提供を目指す企業人が交じり合って対話を行い、「声」を題材に「未来の人間らしさ」「心の豊かさ」について多様な観点から問い続けていく「声遊楽クロスダイアローグ」。
今回のテーマは「「機械の声」はいかにして「文化」となってきたか?――音声工学技術を問い直す」です。
技術・キャラクター・プラットフォームやファンダムを含む「生態系(エコシステム)」など、さまざまな観点から、人と機械のあいだに育まれてきた声の文化を深掘りします。ぜひ皆さまご参加ください。
イベント日時
2026/7/27(月) 18:00〜19:30
場所
オンライン(YouTube配信) ※YouTube配信は全編無料
▶▶▶YouTubeでのアーカイブのご視聴はこちら
「ひじりばし博覧会2026」への登壇
東京文化資源会議主催による「ひじりばし博覧会2026」が7月20日(月)に開催されます。デサイロ代表・岡田弘太郎が本イベントの座談会「神保町新発見 ― もっともっと面白い街へ」に登壇します。神保町をより面白い街にするために、今後どのように貢献できそうかについて、お話させていただきます。
イベント日時
2026年7月20日(月)10時〜19時00分
場所
御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京都千代田区神田駿河台4-6)
入場料無料(*プログラムによって、事前予約が必要なものがあります)
当日、出入り自由(一部企画は事前予約制あり)
▶▶▶イベント詳細はこちらをご覧ください。
■今月の1冊
『資本主義にとって倫理とは何か』(著・ジョセフ・ヒース )
<内容(版元紹介より)>
なぜ人々は資本主義=市場経済について倫理的に不快に感じ、批判するのか。そこには人間の集団行為に関する複雑な文脈が存在する。市場経済をめぐる正当性の議論と、市場競争のなかで重要な役割を果たす企業行動の是非について繊細に解きほぐす、ヒースが長年議論してきた「ビジネス倫理」についての壮大なヴィジョンが展開される。
<一言コメント>
6月のAcademic Insightsでは、「防衛テックの倫理」をテーマとして扱いました。「Unknown Unknown」のオープン以降に開催しているAcademic Insightsの特徴のひとつに、その分野に関わる様々なステークホルダーが集うという点があります。今回であれば、本分野のスタートアップやベンチャーキャピタルの方、哲学や倫理、ガバナンスに関する研究者の方が集まり、活発な議論が行なわれました。
議論のなかで中心的なトピックとして立ち上がったのが、「主権国家」についてでした。例えば、ロシアによるウクライナ侵攻において、2026年2月には、ウクライナの要請を受けてロシア軍によるスターリンクの利用を遮断したように、一企業が戦場のあり方や国家間の関係性に大きな影響を与えうる状況を私たちは生きています。主権国家とテクノロジー企業の関係性を考えることは、「防衛テック」のこれからを考えることに直結する論点のひとつでした。日本においても、ソブリンAIや国産クラウドの議論が活発化するなかで、安全保障や防衛と結びつくテクノロジー企業のガバナンスは非常に重要なテーマになると感じています。そして冒頭で触れたように、そうしたテクノロジー企業が経済学者や哲学者を雇っているのも非常に興味深い事象です。
議論のなかで、東京大学 FoundXのディレクターである馬田隆明さんが言及したのが、哲学者ジョセフ・ヒースによる著書『資本主義にとって倫理とは何か』でした。本著では、経済主体が市場において道徳に反することも「何もしてはいけない」でもなく、法律に反しない限り「何でもあり」でもなく、中道の立場とは何か?を、正戦論などのアナロジーを用いて考えていく一冊。「防衛テックの倫理」を考える上でのひとつの参照点になりうるもので、ELSI(Ethical, Legal and Social Issues)のみならず、こうしたビジネス倫理や企業統治に関する蓄積を踏まえて考えていく重要性に気づかされた一冊でした。
Information
一般社団法人デサイロは、人文・社会科学分野の研究者と協働し、イノベーション創出や新たなる社会制度の提案を行うアカデミックインキュベーター/シンクタンクです。
企業・大学の研究/実装プロジェクトの立ち上げや運営支援、「人と社会への深い理解」に根ざした未来洞察やコンサルティングサービスの提供、知の拠点や共創の場づくり、自社レーベル/メディアの運営、アートフェスティバルのプロデュースなど、研究と多分野のかけ合わせによるプロジェクト創出を通じて、「知の創造と流通」を支えていきます。
■ポッドキャスト番組「2020s」
哲学者・柳澤田実とデサイロ代表の岡田弘太郎が、「2020年代を形づくる思想やアイデア」を考えるPodcast番組。月2回更新されますので、ぜひチャンネルをフォローください。
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