【4月10日から開催、全7回】Academic Insights「アメリカン・ダイナミズムの精神史」──政治学/哲学/宗教学/思想史から、激動するアメリカの「深層」を読み解くレクチャーシリーズ
人文・社会科学分野の研究者とともに、いま私たちが生きている時代や社会が直面する課題を読み解くレクチャーシリーズ「Academic Insights」。2025年4月からは約3ヶ月にわたる新シリーズが始まります。
テーマは、「アメリカン・ダイナミズムの精神史」。第2次トランプ政権発足以降、激動するアメリカの現在地とその源流を、政治学、哲学、宗教学、思想史の研究者とともに読み解いていくシリーズです。
■プログラム概要
2025年1月20日、第2次ドナルド・トランプ政権が発足しました。発足初日、パリ条約からの脱退、米国第一の貿易政策、国境への軍隊派遣による移民抑制策など、さまざまな大統領令が発令され、アメリカ社会・政治がダイナミックに変化していくことが示されました。
実験国家とも称されるアメリカは近年、民主・共和両党において主流派のプレゼンスが低下し、左右のポピュリズムが台頭することで、その極の振り子の動きがより大きくなっています。こうしたなか、日々変化する現状理解も重要です。しかし、そもそもアメリカが建国以来どのような変遷でいまに至り、その行動を支える原理・原則、精神性、思想的/宗教的基盤をひも解くことで、より深い現状理解に至れないか──。
本レクチャーシリーズは、そのような課題意識のもとで政治、宗教、哲学、思想史などの多分野の研究者の方々とともに、アメリカのこれからを考えていきます。
これまでもさまざまな研究者や有識者の方々が、アメリカの精神性や観念を捉えようとしてきました。例えば、『ファンタジーランド: 狂気と幻想のアメリカ500年史』の著者カート・アンダーセンは、その精神を次のように分析します。
「アメリカは、夢想家たちによる夢の世界の創造物だ。宗教的な者もいれば、手っ取り早く金持ちになりたがる者もいるが、誰もが異様なまでに驚きを求めている。さまざまな魔法や運命を心に信じる気持ちに加えて、強化された独特の過剰な宗教DNAもまた、アメリカ人独自の気質の源となった。たとえば、神秘的なものを文字どおり受け止めたり、エリートによる迫害にきわめて敏感に反応したりといった気質である。アメリカは、プロテスタントの国として設計・建国された最初の例であるだけでなく、啓蒙主義の国として設計・建国された最初の例でもある。両者は互いに補強し合う関係にあり、結びついて有害になることもあった」
そうした幻想・産業複合体の終着点として、アンダーセンは2016年のドナルド・トランプ大統領の当選に言及します。つまりはトランプ政権誕生の背景には、狂気と幻想を信じ続けた夢想家たちのこれまでの歩みがあったというわけです。
本レクチャーシリーズの各回では、トランプ支持基盤のひとつであるキリスト教福音派(キリスト教保守)から宗教再台頭の時代に迫ったり、アメリカを支えてきた哲学思想「プラグマティズム」や、トランプ以前に脈々と受け継がれてきた保守主義の思想史を考えたりと、アメリカの「いま」を考えるための論点を一つひとつ深ぼっていきます。
みなさんとともに、いま私たちが生きている時代や置かれている状況を考えていけることを楽しみにしております。
■プログラム各回詳細
第1回:民主主義のダイナミズム──米国大統領の「象徴性」と「権限」の限界
2025年4月10日(木)19:30-21:30(オンライン開催)
いま、民主・共和の二大政党間や政党内、それを支持する国民においても「政治的分極化」が進んでいます。こうした分極化は民主主義のダイナミズムや米国大統領制にどのような影響を与えているのでしょうか。第2次トランプ政権の動向から、米国を支えてきた理念やナショナル・アイデンティティの変遷まで、共編著『アメリカの政治 第2版』や共著『混迷のアメリカを読みとく10の論点』、単著『アメリカ大統領とは何か: 最高権力者の本当の姿』などで知られる研究者・西山隆行さんにご解説いただきます。
ゲスト:西山隆行(アメリカ政治/成蹊大学法学部 教授)
第2回:トランプ再選と「宗教」再台頭の時代
2025年4月22日(火)19:30-21:30(オンライン開催)
2016年米大統領選においてトランプの支持基盤のひとつとなったのが、米国の南東部に位置する「バイブル・ベルト(聖書地帯)」に多く住むプロテスタントのキリスト教福音派(キリスト教保守)でした。そして、2024年米大統領選ではキリスト教福音派の票に加え、ヒスパニックのカトリック票が重要な再選理由に。伝統的なキリスト教が衰退するなかで、なぜキリスト教福音派やカトリック票の影響力が増しているのでしょうか。米国政治とキリスト教の関係性について、『アメリカを動かす宗教ナショナリズム』の著者である松本佐保さんにご解説いただきます。
ゲスト:松本佐保(国際政治史、国際関係/日本大学国際関係学部 教授)
第3回:J・D・ヴァンス、イーロン・マスク、そしてピーター・ティールを支える思想的・宗教的基盤
2025年5月6日(火)19:30-21:30(オンライン開催)
副大統領に就任したJ・D・ヴァンスの元上司であり、ヴァンスとドナルド・トランプを引き合わせた”キングメーカー”である伝説の起業家ピーター・ティール。ティールが師事した思想家ルネ・ジラールの模倣理論から、聖書的世界観および終末論まで──第2次トランプ政権におけるキーパーソンを支える思想的・宗教的基盤とはいかなるものでしょうか。キリスト教思想および道徳的価値観の観点から現代社会について研究してきた柳澤田実さんにご解説いただきます。
ゲスト:柳澤田実(哲学、キリスト教思想/関西学院大学神学部 准教授)
第4回:3つのキーワードから読み解くアメリカ思想史
2025年5月20日(火)19:30-21:30(オンライン開催)
アメリカ合衆国の歴史と、それを支えた観念や精神はいかにして育まれてきたのか。『アメリカを作った思想——五〇〇年の歴史』の翻訳者であり、アメリカ思想史を専門とする入江哲朗さんによれば、左右両極を節操なく行ったり来たりしているようにも思われるアメリカ思想も、長期的に見ればそこにパターンを見出せるそうです。そのパターンを、「意識の高さ」「問題解決志向」「行動的な読み換え」の3つをキーワードとしながら、入江さんにご解説いただきます。
ゲスト:入江哲朗(アメリカ思想史/東京外国語大学世界言語社会教育センター 講師)
第5回:テック右派の台頭と、「トランプ以前」を読み解くためのアメリカ保守主義の思想
2025年6月3日(火)19:30-21:30(オンライン開催)
「保守」という呼称に反し、社会改革をめざす思想であった戦後アメリカの保守主義。ドナルド・トランプにつながる保守思想の系譜とアメリカ政治にもたらした影響、そしてイーロン・マスクを筆頭とした「テック右派」たちの動向について、『アメリカ保守主義の思想史』の著者である井上弘貴さんにご解説いただきます。
ゲスト:井上弘貴(アメリカ政治思想史/神戸大学大学院国際文化学研究科 教授)
第6回:自己啓発とプラグマティズムからひもとく、「生き方」としてのアメリカ哲学
2025年6月16日(月)19:30-21:30(オンライン開催)
「根底にあるスピリットは“動き続ける思想”です。そして“基礎を据えない”」。雑誌『スペクテイター〈51号〉自己啓発のひみつ』におけるインタビューにて、齋藤直子さんはアメリカ哲学をこう表現します。哲学者スタンリー・カベルに師事し、“アメリカ哲学の父”とも称されるラルフ・W・エマソンや、ジョン・デューイを研究してきた齋藤さんに、アメリカ哲学から見えてくる、アメリカという国の精神性をご解説いただきます。
ゲスト:齋藤直子(教育学、哲学/京都大学大学院教育学研究科 教授)
第7回:ラウンドテーブル
2025年6月29日(日)15:00-18:00(都内にて開催。一部オンライン配信も実施しますが、参加者を交えた議論を行うパートに関しては中継がない可能性があります。ご了承ください。)
各回でレクチャーを担当いただいた講師の方々とともに、議論をより深めていくラウンドテーブルとなります。都内開催を予定しており、場所の詳細は申し込みいただいた方々に別途お知らせします。
■参考書籍
本レクチャーシリーズへの参加にあたり、下記の書籍に目を通していただくと、レクチャーやディスカッションの内容をより深く理解できます。※前提知識がない方でも参加いただける内容になっております。
▼本レクチャーシリーズにおける前提知識を身につけられるもの
西山隆行、前嶋和弘、渡辺将人、2024年、『混迷のアメリカを読みとく10の論点』慶應義塾大学出版会
会田弘継、2024年、『それでもなぜ、トランプは支持されるのか: アメリカ地殻変動の思想史』東洋経済新報社
アンダーセン、K.、2019、『ファンタジーランド: 狂気と幻想のアメリカ500年史』山田美明、山田文(訳)、東洋経済新報社
デイビッドソン、J.W.、2018、『若い読者のためのアメリカ史』上杉 隼人、下田 明子(訳)、すばる舎
岡山裕、西山隆行(編)、2024年『アメリカの政治 第2版』弘文堂
▼ご登壇いただく研究者の方の著書や翻訳に関われたもの
西山隆行、2024年、『アメリカ大統領とは何か: 最高権力者の本当の姿』平凡社
松本佐保、2021年、『アメリカを動かす宗教ナショナリズム』筑摩書房
ラーマン、T.M.、2024、『リアル・メイキング:いかにして「神」は現実となるのか』柳澤田実(訳)、慶應義塾大学出版会
ラトナー゠ローゼンハーゲン、J.、2021、『アメリカを作った思想 ――五〇〇年の歴史』入江哲朗(訳)、筑摩書房
井上弘貴、2020年、『アメリカ保守主義の思想史』青土社
エディトリアルデパートメント(編)、2023年、『スペクテイター〈51号〉自己啓発のひみつ』幻冬舎
エディトリアルデパートメント(編)、2023年、『スペクテイター〈52号〉文化戦争』幻冬舎
齋藤直子、木村博美、2019年、『「自分を変える」ということ アメリカの偉大なる哲学者エマソンからの伝言』幻冬舎
■参考記事
マジトラのゆくえ【キリスト教で読み解く次期トランプ政権】前編(柳澤 田実) | 学術文庫&選書メチエ
マジトラのゆくえ【キリスト教で読み解く次期トランプ政権】後編(柳澤 田実) | 学術文庫&選書メチエ
【試し読み】『リアル・メイキング』|慶應義塾大学出版会 Keio University Press
松本 佐保:宗教政党としての共和党の勝利と、トランプ政権の今後の政策予測|特集|三田評論ONLINE
アメリカ社会「分断」の根底にある"ふたつの聖書" バイデンとトランプが宣誓に使った聖書は別物
多様性や平等重視に反発 トランプ氏支えた「変革めざす保守」[アメリカ大統領選挙]
【井上弘貴】アメリカ民主主義の危機とは何かー「ディープステート解体」に突き進む第二期トランプ政権 | 表現者クライテリオン
■想定参加者(こんな人にオススメ)
本プログラムは、以下のような方々を対象としております。
第2次トランプ政権誕生の背景にある、アメリカ社会や人々の深層を理解したい方
第2次トランプ政権誕生以降の米国や国際社会の動向について学びたい方
宗教(本講座では主にキリスト教)が米国政治や社会に与える影響について理解したい方
「プラグマティズム」などのアメリカ哲学について学びたい方
■価格
一般参加:全7回で19,980円(税込)
De-Silo Online Membership会員:無料
※De-Silo Online Membershipは、月額3,300円(税込)の会員制コミュニティです。
■申し込み方法
一般購入:
【こちらのリンク】よりチケット購入をお願いします。
De-Silo Online Membership会員:
下記の公式サイトより詳細を確認のうえ、入会をお申し込みください。
https://de-silo.xyz/membership
■登壇者プロフィール
▲第1回登壇予定
西山隆行(政治学者)
成蹊大学法学部政治学科教授。専門はアメリカ政治。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。主要著書に、『アメリカ大統領とは何か:最高権力者の本当の姿』(平凡社新書、2024年)、『混迷のアメリカを読み解く10の論点』(共著、慶應義塾大学出版会、2024年)、『〈犯罪大国アメリカ〉のいま:分断する社会と銃・薬物・移民』(弘文堂、2021年)、『格差と分断のアメリカ』(東京堂出版、2020年)、『アメリカ政治入門』(東京大学出版会、2018年)、『アメリカ政治講義』(ちくま新書、2018年)、『移民大国アメリカ』(ちくま新書、2016年)、『アメリカ型福祉国家と都市政治』(東京大学出版会、2008年)など。
▲第2回登壇予定
松本佐保(国際政治史学者)
神戸生まれ。88年聖心女子大学卒業(歴史学)学士。90年慶應義塾大学大学院文学研究科・修士号。96年英国ウォーリック大学大学院・国際政治史博士号(PhD)。イタリア政府給費留学生として、バチカン使徒文書(機密文書)館で調査、ローマ教皇研究を行う。名古屋市立大学大学院・人間文化研究科・教授を経て、現在、日本大学・国際関係学部・教授。専攻は国際政治、特に宗教と政治の関係に詳しい(欧州と米国、日本、バチカン)。著書に『バチカン近現代史』中公新書2013年や『熱狂する神の国アメリカ』文春新書2016年、『ローマ教皇とバチカン2000年の謎』宝島社2025年など他多数。
▲第3回登壇予定
柳澤田実(哲学者)
1973年米ニューヨーク生まれ。東京大学総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)、南山大学准教授などを経て、関西学院大学神学部准教授。専門は哲学・宗教学。宗教などの文化的背景とマインドセットとの関係を中心に研究している。訳書にターニャ・M・ラーマン著「リアル・メイキング いかにして『神』は現実となるのか」(2024年、慶応義塾大学出版会)、編著書に『ディスポジション──哲学、倫理、生態心理学からアート、建築まで、領域横断的に世界を捉える方法の創出に向けて』(現代企画室、2008)など。
▲第4回登壇予定
入江哲朗(アメリカ思想史研究者)
1988年生まれ。東京外国語大学世界言語社会教育センター講師。専門はアメリカ思想史および表象文化論。映画批評もしばしば執筆。著書に『火星の旅人──パーシヴァル・ローエルと世紀転換期アメリカ思想史』(青土社、2020年、表象文化論学会賞奨励賞受賞)など、訳書にジェニファー・ラトナー゠ローゼンハーゲン『アメリカを作った思想──五〇〇年の歴史』(ちくま学芸文庫、2021年)など。
▲第5回登壇予定
井上弘貴(政治学者)
1973年生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科教授。博士(政治学)。専門は政治理論、公共政策論、アメリカ政治思想史。早稲田大学政治経済学術院助教、テネシー大学歴史学部訪問研究員などを経て、現職。著書に『ジョン・デューイとアメリカの責任』(木鐸社)、『アメリカ保守主義の思想史』(青土社)。現在、第二次トランプ政権下でのニューライトの思想的台頭について新しい著作を準備している。
▲第6回登壇予定
齋藤直子(教育哲学、アメリカ哲学研究者)
京都大学大学院教育学研究科 教授。専門領域は、アメリカ哲学、教育哲学。エマソンやソローの19世紀のアメリカ超越主義をデューイやウィリアム・ジェイムズの20世紀プラグマティズム、および20-21世紀の哲学者スタンリー・カベルの日常言語哲学を主に研究。昨今では、アメリカ哲学との関わりのなかで、デリダやレヴィナスのポスト構造主義の他者論や、ウィトゲンシュタインの言語哲学との関わりについても研究をしている。主要著書は、The Gleam of Light: Moral Perfectionism and Education in Dewey and Emerson (2005)(単著)、『〈内なる光〉と教育:プラグマティズムの再構築』(2009)(単著)、Stanley Cavell and the Education of Grownups (2012, co-edited with Paul Standish), Stanley Cavell and Philosophy as Translation: The Truth is Translated (2017, co-edited with Paul Standish); American Philosophy in Translation (2019, 単著)、『「自分を変える」ということ:アメリカの偉大なる哲学者エマソンからの伝言』(2019、木村晴美との共著)。
■モデレータープロフィール
岡田弘太郎(おかだ・こうたろう)
一般社団法人デサイロ代表理事。一般社団法人B-Side Incubator代表理事。『WIRED』日本版エディター。クリエイティブ集団「PARTY」パートナー。2022年、人文・社会科学分野の研究者を中心とした独立研究所/シンクタンクである一般社団法人デサイロを設立し、産官学の多様なステークホルダーとの連携によるプロジェクト創出や知の拠点づくり、研究者とアーティストの協働によるアートフェスティバルのプロデュースなどを行う。1994年東京生まれ。「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023」選出。
■主催:一般社団法人デサイロ
一般社団法人デサイロは、人文・社会科学分野の研究者と協働するインディペンデントな研究所/シンクタンクです。研究支援、自社レーベル/メディアの運営、コンサルティングサービスの提供、研究と多分野のかけ合わせによるプロジェクト創出などを通じて、「知の創造と流通」を支えていきます。
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