【6/29開催】「防衛テック」の倫理──「国家とイノベーションの関係性」を再定義する【Academic Insights #26】
Academic Insightsについて
デサイロでは2024年8月より、気鋭の研究者の皆様とともに「いま私たちが生きている時代」あるいは「社会がこれから直面する課題」を読み解いていくレクチャーシリーズ「Academic Insights」を、オンラインを中心に継続的に開催してまいりました。
今後は、2026年2月に開業した新拠点「Unknown Unknown」での対面開催を中心としながら、研究者および各領域のエキスパートの皆様とともに議論し、より多様な視点から「いま私たちが生きている時代」あるいは「社会がこれから直面する課題」について深めるシリーズ・場として、様々なテーマを継続的に展開していきます。
イベント概要
「防衛テック」の倫理
──「国家とイノベーションの関係性」を再定義する
パランティア共同創業者アレキサンダー・カープらによる著書『テクノロジカル・リパブリック』が2026年3月に日本でも発売となりました。同著では「シリコンバレーは自らを育てた国家に責務を負っており、消費者向けプロダクトに才能を費やすのではなく、国家や西側世界の防衛のためにその力を捧げるべきだ、という主張が展開されています。
また、パランティアのCTOを務めるシャイアム・サンカールらが2026年3月に刊行した著書『Mobilize(動員)』は、「How to Reboot the American Industrial Base and Stop World War III(アメリカの産業基盤を再起動し、第三次世界大戦を阻止する方法)」というサブタイトルを掲げ、米国における防衛産業の再興の重要性を訴えかけています。
他にも、日本法人が設立されたAI・自律型防衛テックのスタートアップである「アンドゥリル・インダストリーズ」は2026年5月に50億ドルの資金調達を実施し、評価額610億ドルを記録。同社には日本からCoral Capitalが投資を行なったことも話題になりました。
こうした一連の動きを下支えしてきたナラティブが、米国のベンチャーキャピタル「Andreessen Horowitz」が発表した「アメリカン・ダイナミズム」という投資アジェンダです。国家安全保障や宇宙開発、インフラ、製造業など、米国の国益や社会課題の解決に寄与するテクノロジー企業を支援するもので、例えば「The American Dynamism 50」というリストには、「2027年に中華人民共和国が台湾に侵攻する」という未来シナリオが記載され、自律したサプライチェーンの確保から、AIを活用した防衛システムや強靭なエネルギーインフラの構築までを担う次世代スタートアップが、米国の再工業化に貢献するというナラティブが記載されています(一方、こうした米国のベンチャーキャピタルやスタートアップの「言説」への批判的検討も出てきています)。
まさしくいま、米国では「防衛テックの産業化」が急速に進んでおり、日本が置かれた状況も変化しつつあります。
安全保障三文書の改定や防衛生産基盤強化法の制定といった政策の転換に加え、防衛省装備庁は2024年9月に「デュアルユース・スタートアップのエコシステム構築に向けて」と題した資料を発表。その後、防衛省版SBIRやファスト調達の制度化や、スタートアップや投資家向けの「Defense Innovation Meeting」などの定期開催を通じて、防衛テック・エコシステムの創出に取り組んでいます。
また、資金調達面でも大きな動きが生まれています。元駐日米国大使のジョン・ルース氏が設立したジオデシック・キャピタルは、日米安保を強化する技術に投資するファンドを設立し、約360億円を調達してAIや宇宙関連など民生・軍事両用技術の新興企業に投資するほか、Coral Capitalがアンドゥリル・インダストリーズに投資するなど、資金調達の環境も変化を迎えています。こうした流れを受けて、日本国内でも、防衛装備品市場への参入を発表する企業やAIやドローン分野でのスタートアップ設立が続いています。
一方で『テクノロジカル・リパブリック』が指摘するように、2010年代の消費者向け市場と、防衛や安全保障のためのテクノロジーに関わる倫理は大きく異なります。これまで先端テクノロジーを社会に実装する際には、ELSI(倫理的・法的・社会的課題)の観点から議論が積み重ねられてきました。けれども防衛・安全保障の領域、とりわけ殺傷能力を持つ兵器の開発が視野に入るとき、従来の枠組みだけでは捉えきれない論点が立ち現れます。民間と軍事の双方に利用しうる「デュアルユース」技術をどう捉えるのか。AIによる自律的な判断と人間の関与の境界をどこに引き、「責任の空白(responsibility gap)」が生まれることをどのように防ぐのか。戦後一貫して軍事研究と距離を置いてきた日本のアカデミアや技術者は、この問いにどう向き合うのか──。
こうした状況のリアリティに対する応答や新たなる言説を構築していくために、今回のAcademic Insightsでは、本分野に関わる4名の専門家の方をゲストにお招きします。
2026年3月に『軍民両用化する技術――「デュアルユース問題」とは何か?』を刊行し、AIアラインメントや戦争倫理について研究してきた立教大学大学院人工知能科学研究科・特任教授の大庭弘継さん。東京大学FoundXディレクターであり、自由と連帯と安全保障のためのテクノロジーのあり方を提言されてきた馬田隆明さん。個人、企業、国家を横断して認知戦の脅威から認知機能を「守り」「活かし」、学習や意思決定をアップデートするAI技術を開発するHumanity Brain創業者である大嶋泰介さん。『自壊する米中』の著者で、東アジア安全保障、台湾海峡危機管理、防衛産業政策を専門とする国際政治学者の佐々木れなさん(※佐々木さんはオンライン登壇)。
当日は、以下のような観点について議論していく予定です。
日本における防衛産業政策の変遷を踏まえて、防衛テック企業や投資家に求められる「倫理」とはいかなるものか?
「デュアルユース」の観点から、防衛テック・スタートアップの事業をどのように捉えられるのか?
日本においてPMFではなく、PGF(Product-Government Fit)とはどのような状態か?
防衛省版SBIRや、「ファストパス調達」は、防衛テック・スタートアップやVCにどのような影響を与えうるのか
高市政権の「戦略17分野」を踏まえ、国家とイノベーションの関係性をどのように再定義できるのか?
自律型致死兵器システム(LAWS)に対し、日本はどのようなスタンスをとっているのか(とるべきか)?
平時と有事の境目がなくなる「認知戦」における防衛とはいかなるものか?
この非常に重要な局面に際し、イデオロギー的対立に陥らない議論の場を創出できればと考えております。本分野に関わる研究者、政策担当者、起業家、投資家の皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
■開催日時
2026年6月29日(月) 20:00~22:00
■場所
Unknown Unknown
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1丁目19−1 2F
https://maps.app.goo.gl/oT2Xiz6vxj5mikWH7
■アクセス
地下鉄 神保町駅 A7出口より徒歩約4分 (東京メトロ半蔵門線、都営新宿線・三田線)
東京メトロ千代田線 新御茶ノ水駅 B5出口より徒歩約6分
JR御茶ノ水駅 御茶ノ水橋口より徒歩約8分
■定員
30名
■タイムテーブル
20:00-20:10:大庭氏によるイントロダクション
20:10-21:30:ディスカッション/参加者からのQ&A
21:30-22:00:Meetup
■チケット価格
3,500円(税込)
※会場参加のみ。配信はございません
登壇者プロフィール
馬田隆明
東京大学 FoundX ディレクター/公益財団法人 国際文化会館 上席客員研究員 PEP ディレクター。日本マイクロソフトを経て、2016年から東京大学。東京大学では本郷テックガレージの立ち上げと運営を行い、2019年からFoundXディレクターとしてスタートアップの支援とアントレプレナーシップ教育に従事する。スタートアップ向けのスライド、ブログなどで情報提供を行っている。著書に『逆説のスタートアップ思考』『成功する起業家は居場所を選ぶ』『未来を実装する』『解像度を上げる』『仮説行動』。
大庭弘継
1975年生まれ、福岡県出身。立教大学大学院人工知能科学研究科・特任教授。専門は国際政治学、応用哲学・倫理学、知能情報学。京都大学経済学部中退。元海上自衛官(1等海尉)。博士(九州大学、比較社会文化)。南山大学社会倫理研究所講師、京都大学大学院文学研究科研究員などを経て現職。主な共編著・単著に『国際政治のモラル・アポリア――戦争/平和と揺らぐ倫理』(ナカニシヤ出版)、『パンデミックを考える――その危険性と不確実性をめぐる政治・社会・倫理』(南山大学社会倫理研究所)、『資料で読み解く「保護する責任」――関連文書の抄訳と解説』(大阪大学出版会)、『軍事研究を哲学する――科学技術とデュアルユース』(昭和堂)、『軍民両用化する技術――「デュアルユース問題」とは何か?』など。
大嶋泰介
株式会社Humanity Brain 代表取締役CEO。東京大学総合文化研究科博士課程単位取得退学。独立行政法人日本学術振興会特別研究員(DC1)、2017年5月にNature Architectsを創業。メカニカル・メタマテリアルの設計技術の研究に従事する。独立行政法人情報処理推進機構より未踏スーパークリエータ、総務省より異能ベーションプログラム認定、文部科学省よりナイスステップな研究者2022認定。
佐々木れな
国際政治学者。専門は東アジア安全保障、台湾海峡危機管理、防衛産業政策。米国、中国、日本、台湾を中心に、各国の研究者や外交関係者との交流を通じて、現場と理論を架橋する研究に取り組んでいる。早稲田大学卒業後、2016年から2021年にかけて外資系戦略コンサルティングファームStrategy&に在籍し、防衛省、防衛装備庁、防衛関連企業等との複数のプロジェクトに携わる。2023年、ジョージタウン大学外交政策大学院で修士号を取得。現在、国際関係論・国際政治学の分野で知られるジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院(SAIS)博士課程に在籍。
※オンライン登壇
■モデレーター
岡田弘太郎
一般社団法人デサイロ代表理事。1994年東京生まれ。慶應義塾大学でサービスデザインを専攻後、『WIRED』日本版エディターを経て、2022年に人文・社会科学分野の研究者を中心としたアカデミックインキュベーター/シンクタンクである一般社団法人デサイロを設立。知のネットワーク/エコシステム創出を通じて、激変する2020年代に求められる新たなる社会制度や、企業のイノベーション創出を支援する。一般社団法人B-Side Incubator代表理事やクリエイティブ集団「PARTY」パートナーなどを兼任。「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023」選出。
Unknown Unknownについて
「Unknown Unknown」は、一般社団法人デサイロが2026年2月7日に開業した知と文化のインキュベーション拠点です。イベントスペース、ギャラリー、バー、ライブラリーからなる100㎡弱の複合施設であり、「2020年代」という時代の向かう先について考え、次なるイノベーション創出や社会制度の起点となる「知と文化の創造」を目指しています。
https://desilo.substack.com/p/uu-release-0210
一般社団法人デサイロについて
一般社団法人デサイロは、人文・社会科学分野の研究者と協働し、イノベーション創出や新たなる社会制度の提案を行うアカデミックインキュベーター/シンクタンクです。
企業・大学の研究/実装プロジェクトの立ち上げや運営支援、「人と社会への深い理解」に根ざした未来洞察やコンサルティングサービスの提供、知の拠点や共創の場づくり、自社レーベル/メディアの運営、アートフェスティバルのプロデュースなど、研究と多分野のかけ合わせによるプロジェクト創出を通じて、「知の創造と流通」を支えていきます。
公式サイト:https://de-silo.xyz/
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